ロシアを刺激しすぎることを懸念するアメリカとEU  ウクライナへ航空機を供給するか否かの「本格的な議論」はこれから

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が2月10日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナ・ゼレンスキー大統領のEU首脳会議への出席について解説した。

ロシアを刺激しすぎることを懸念するアメリカとEU  ウクライナへ航空機を供給するか否かの「本格的な議論」はこれから

ワシントンの米議会で、ウクライナ国旗を前に演説する同国のゼレンスキー大統領(中央)(アメリカ・ワシントン)=2022年12月22日 写真提供:時事通信

ウクライナのゼレンスキー大統領がEU訪問、首脳会議に出席

ウクライナのゼレンスキー大統領は2月9日、 欧州連合(EU)本部があるブリュッセルを訪問し、EU首脳会議に出席した。ゼレンスキー氏は記者会見で「多くの指導者から航空機を含む武器や支援を提供する用意があると聞いている」と述べた。

飯田)この間イギリスに行ったと思ったら、フランス、そしてブリュッセルと。

宮家)これからロシアの大規模な再攻勢が始まるわけです。

ロシアの再攻勢の前に航空機を手に入れたいゼレンスキー大統領

宮家)必要なものとしては、戦車と航空機が足りない。戦車の方は何とか確保してこれから訓練を行い、時間はある程度かかるかも知れませんが、入ってくると思います。問題は航空優勢です。

飯田)航空優勢。

宮家)現在はロシアに航空優勢がありませんから、戦車で充分なのです。しかし今後、本格的にロシアの攻勢を食い止めるためには航空機がいる。航空機を出すということは、アメリカ、もしくは北大西洋条約機構(NATO)の関係者からすれば、ロシアを刺激しすぎる可能性があります。「ロシアを刺激したらどうなるか」というトラウマが常にあるわけです。

ロシアを刺激しすぎることに二の足を踏むアメリカとEU

宮家)そのトラウマのなかで、徐々に「この辺りならいいか」、「この辺ならまだいいか」と、少しずつ最新鋭の武器を出してきたのがいまの状況です。これまでは「戦車までならいいか」となっていたわけですよ。

飯田)戦車までならば。

宮家)これが航空機となると、飛び道具ですし破壊力もあるので、二の足を踏んでしまう。そこでゼレンスキーさんはロシアの再攻勢が始まる前、いまの絶好の機会を捉えてヨーロッパにアピールしているのだと思います。

飯田)このタイミングで。

宮家)情報戦としては極めて効果的だと思いますが、果たして彼が思うような形で戦闘機が入ってくるかどうか。彼のアピールだけでは充分ではないと思います。

航空機に関する議論はこれから本格的に始まる

飯田)2022年12月、ゼレンスキー氏が電撃的にアメリカを訪問し、上下両院会議のなかで「タンク」という言葉を使って、これが欲しいのだとアピールしました。今回はイギリス議会で最初に「プレーン」という言葉を使った。ここから動くのでしょうか?

宮家)長い目でみたら動きます。問題は、これからはロシアとの駆け引きだと思いますので、結果はロシアがどう対応するかにもよるわけです。

飯田)ロシアが。

宮家)ロシアからすると、航空機が入ってしまえば勝てなくなる可能性がある。彼らはまだ勝つつもりでいると思うのですが、勝てなくなるとなったときに、彼らがどういう判断をするのか。プーチン大統領がどう動くかを各国、読み切れないところがあるのだと思います。

飯田)プーチン大統領がどう動くのか。

宮家)そうでなくとも、「あまりロシアを追い詰めたくない」という気持ちがある国は欧州にたくさんありますから。ロシアに近ければ近いほど「攻撃してしまえ」となりますが、ロシアから遠ければ遠いほど「これで大丈夫かな」と見ているヨーロッパの人たちは多いです。

飯田)ロシアから遠ければ。

宮家)ただ単にロシアの出方だけではなく、EU内のコンセンサス、感触を統一しなくてはいけないのだと思います。その意味ではまだ前哨戦で、本格的な航空機に関する議論はこれから始まるのではないでしょうか。

 

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