経済のために必要なのは「財政出動」であり、増税や社会保険料引き上げではない

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ジャーナリストの須田慎一郎が7月10日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の日本経済の在り方について解説した。

経済のために必要なのは「財政出動」であり、増税や社会保険料引き上げではない

2023年7月7日、挨拶する岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202307/07aseang7.html)

5月の景気動向指数 ~基調判断は改善

飯田)日本経済について、景気動向指数や毎月勤労統計調査などが週末に発表されました。景気動向指数などを見ると、ある程度は堅調になってきているように思います。

須田)これから景気を見ていく上でポイントになるのは、個人消費だと思います。GDPの5割強を個人消費が占めていて、個人消費は景気の牽引役とも言われています。

コロナ明けの旅行や飲食がいまの景気や個人消費を支えている ~「強制貯蓄」を今後も使うかどうかは将来の収入の見通しに連動する

須田)一方ではよく言われているように、コロナ禍において個人、あるいは企業などが本来ならば使うはずのお金が使われず、手元に置かれている。これを「強制貯蓄」と言います。

飯田)強制貯蓄。

須田)日銀の試算によると、強制貯蓄は50兆円を超えているのです。今後はどのような形で出てくるのか。いまは、例えば旅行や飲食などで出てきているのだと思います。これがいまの景気や個人消費を支えているベースなのです。

飯田)旅行や飲食が。

須田)とは言っても、見通しを立てたときに、「将来の先行きが不透明だからお金を使わずに取っておこう」と考えるのか、それとも「コロナが明けたから積極的に消費に向かっていく」のかは、コンスタントに賃金が上がる、またはボーナスが増えるなど、「将来の収入の見通し」に連動していくのだと思います。

少子化対策の財源負担や防衛費増額の増税が個人消費を冷やす可能性も

須田)この春に賃上げが多くの企業で実現されたという点では、プラス1ポイント取ったのかなと思います。ただ、来年(2024年)の春にもつながっていくかと言うと、その辺りは不透明であり、見通しがどうなっていくのか。

飯田)賃上げが来年の春も続くのか。

須田)一方で、骨太の方針が決まりました。少子化対策において3兆5000億円の財源をどこに求めるのかは、「年末までに決める」ということで先送りした。また、防衛費の増額に関する増税もあります。これらを聞いていると将来、負担が増えるのではないかという思惑が少しずつ出てきて、個人消費を冷やす方向になってくるのではないかと思います。

飯田)手元にお金を残しておこうかと考えてしまいますよね。

須田)いまは重大なターニングポイントに差し掛かっていると思います。

いまこそ需要を喚起して、需要が供給を上回るような形で経済成長を促していくべき

飯田)その一方で、「税収が過去最高を更新した」という報道もあります。予想よりも上振れしたそうです。「それならば、お金を使えないものか」と素朴に思ってしまうのですが。

須田)これは「一時的なものだ」という考えが、財務省や自民党内における緊縮財政派の言い分なのでしょう。そうではなく、これから景気をよくして経済規模を拡大すれば、所得税、法人税、消費税も増えていくのだから、増税などはせず、景気拡大で経済を成長させる方向に転換していくべきだと思います。自民党内の積極財政派もそのような主張をしています。この綱引きがあるのですが、やはり財務省辺りは戦略が上手いので、経済界を巻き込み、増税路線を敷きつつあるのかなと思います。

飯田)積極財政派の人たちへの批判として出てくるのが、「景気をよくしていったらインフレが止まらなくなり、ハイパーインフレになってしまう」というようなことを言う人もいます。

須田)ハイパーインフレを心配する前に、とにかく経済をよくしてくれと思います。そこからでも対処できるのですから。アメリカやヨーロッパで起こっている現象は、よい物価上昇なのです。日本の場合はまだ需要が供給を下回る、つまりデフレ基調があるなかで、原材料費やエネルギー価格の高騰によって得られている悪いインフレなのです。

飯田)需要が供給を下回っている。

須田)その前に需要を喚起し、需要が供給を上回るような形で経済成長を促していくべきだと思います。

やるべきことは財政出動であって、増税や社会保険料引き上げではない

飯田)物価が上がっても、それに見合うだけの賃金が上がっていれば、さほど苦しくはなくなる。

須田)おっしゃる通りです。いま、ちょうどいい転換点に差し掛かっているのです。「5月の実質賃金が減った」と鬼の首を取ったように言っていますが、これはいわゆるパートやアルバイトのような、いままで働いていなかった非正規雇用の人たちが人手不足で働き始めた。そのような方々を入れているので一旦、実質賃金が下がったのです。

飯田)最初から賃金を多くもらえるわけではないですからね。

須田)いま下がってきているのは、非正規雇用の方々が増え、いままで働いていなかった人たちが働くようになってきた。いい兆しが出てきているのですから、どんどん継続していくべきではないかと思います。

飯田)ここで引き締め、ストップさせてしまったら……。

須田)どうするのでしょうか。せっかく日銀も金融緩和を続けているなかで、いまやるべきことは財政出動でしょう。増税や社会保険料の引き上げではないですよね。国民負担率が50%を超えてしまったら、使う気がなくなってしまいます。

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