経済アナリストのジョセフ・クラフトが7月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。相次ぐマイナンバーカードのトラブルと政府の対応について解説した。
河野大臣の発言をめぐり、松野官房長官がマイナカードの名称変更を否定
河野デジタル担当大臣がNHKの番組で言及したマイナンバーカードの名称変更について、松野官房長官は7月3日の記者会見でこの発言を否定した。松野長官は「あくまで個人的な見解を述べたものだ。政府として名称変更を検討しているものではない」と述べた。また、マイナカードの自主返納が相次ぐ現状に対して、政府全体でトラブルの総点検と再発防止策を進めると説明した。
飯田)名前以外のところでも、一部のデータが間違っているなど、いろいろと言われています。
全体の0.001%のトラブルで「何を騒いでいるのか」 ~「ノーミス社会」ではイノベーションは進まない
クラフト)アメリカ人として言わせていただくと、トラブルは相次いでいますが、何千万個のマイナカードがあるなかで13万件、あるいは(無関係な別人との口座登録が)約700件など、0.001%くらいの数字です。欧米の感覚からすると、このようなことで大きく騒ぐのはいかがなものかと思うのです。
飯田)欧米の感覚では。
クラフト)もちろん間違いがあってはいけないのですが、日本人の最大のよさが、ときには欠点になってしまう。「ノーミス社会」では、イノベーションが進まなくなってしまうのです。
飯田)ノーミス社会では。
クラフト)アメリカでは当然、間違いは起こるので、「間違いが起きた」という問題よりも「間違いをいかに早く直すか」というところに焦点を当てます。トラブルが起きたことが大きくニュースになると、トラブルを公表しなくなったり、隠そうとするようになるなど、いつまでも制度が積極的に進みません。
将来のメリットは大きい ~トラブルを解消することに焦点を当てるべき
クラフト)アメリカの場合は、マイナンバー制度を戦前につくったので進めやすかったのです。現在の日本のように1億何千万人もいるなかで普及させるのは大変ですし、当然、トラブルは起こります。
飯田)1億人以上いるのだから。
クラフト)それを批判するのではなく、積極的なトラブル解消により焦点を当てていくべきだと、怒られるのを承知の上で申し上げたいと思います。マイナンバーカードの趣旨は非常に重要です。将来、絶対にメリットは出てきます。
飯田)将来的には。
クラフト)アメリカでは必要不可欠なものになっています。制度を導入するまでの過程で多少トラブルが起きるのは、仕方ないことだと思うのです。
飯田)トラブルはあるものだと。
クラフト)その一方で、日本にはアメリカのような雑な社会になって欲しくないですし、「トラブルを起こしてもいいのだ」という安易な気持ちにもなってはいけません。しかし、いまの「過度な批判」というのも問題があるのではないでしょうか。
マイナンバーカードが普及すれば、給付金の支給にも早く対応できる
飯田)カードのなかにいろいろなデータが入っていると思っている方もいますが、カードそのもののなかには、基本的なものしか入っていません。データはすべて各々の省庁のサーバーなどに入っており、「呼び出しキー」として使うのですが、いろいろと誤解されているところがあります。
クラフト)そうなのです。政府としてやるべきことは、名前を変えるとか変えないという議論ではなく、「いかに誤解をなくしていくか」ということです。そのようなPR発信を行わなければいけないのですが、政府も消極的になってしまっています。
飯田)これだけ批判されるとそうなりますよね。
クラフト)逆に社会的には、「トラブルは積極的に公表しろ」と。そして「早く改善しろ」という叱咤激励的な雰囲気になった方が、制度としてはよくなると思います。
飯田)批判するのではなく、叱咤激励する。
クラフト)給付金の支給に関しては、このような制度が確立すると早く対応できるのです。特に低所得層にとっては重要なことです。
コロナ禍での給付金の誤支給もアメリカではほとんどニュースにならなかった
飯田)ある意味、「走りながら直していく」という方法ですね。言われた行政の方も寛容になればいいですし、こちら側も「そういうこともあるよね。直してくれよ」と。
クラフト)アメリカではコロナ禍のとき、間違えて60億円の給付金を1人の人間に払ってしまったのです。
飯田)そんなことがあったのですか?
クラフト)「どう間違えれば60億円も払えるのか」という疑問はありますが、ほとんどニュースにもなりませんでした。「誤って払ってしまったら返してもらえばいい」という感じです。同じような給付金の誤支給はかなりありましたが、ほとんどニュースになっていません。
飯田)そうなのですね。
クラフト)アメリカは雑過ぎますので、「アメリカのようになれ」と言っているわけではありません。「ときに過度な批判はよくない」ということです。もう少し制度を後押しするべきだと思います。
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