習近平氏がブリンケン氏と向き合わず、「皇帝」のような位置に座った「意図」

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ジャーナリストの佐々木俊尚が6月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。イギリスで開催されるG7外相会合について解説した。

習近平氏がブリンケン氏と向き合わず、「皇帝」のような位置に座った「意図」

インドネシアのバリ島で、握手する中国の習近平国家主席(左)とバイデン米大統領 2022年11月14日 (ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

イギリスでG7外相会合開催へ

政府は林外務大臣も出席するイギリスでの国際会議に合わせ、6月21日(現地時間)に主要7ヵ国(G7)外相会合を開くと発表した。アメリカのブリンケン国務長官の中国訪問を踏まえ、最新の情勢を共有した上で今後の対応を協議するとみられる。

飯田)イギリスで開かれるのは、ウクライナの復興に関する国際会議です。

佐々木)どういう内容になるのか注目されるところです。(日本が議長国として行う)外相会合は、4月の軽井沢に続いて3回目となります。

飯田)日本での開催に続いて。

佐々木)イギリスはEUから離脱して、少し孤立した感じがあったけれど、最近は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の方に寄っており、日英同盟の復活という感じになってきています。

日米英が近付き、欧州と中国とアメリカが中途半端な距離を置く ~19世紀の「ランドパワーとシーパワー」の構図に近付いている

佐々木)日本・米国とイギリスが近付き、欧州は欧州で、中国とアメリカの間で中途半端な距離を置いているような感じがある。昔の地政学で言われていたような「陸の国と海の国の対立」が、また明確に出てきている気がします。徐々に19世紀の状況に近付いていますよね。

飯田)本当ですね。19世紀に古典地政学のマハン氏が提唱した、「海洋国家と大陸国家」という。

佐々木)「ランドパワーとシーパワー」と言われますね。

ブリンケン氏と向き合って会談しなかった習近平氏 ~ビル・ゲイツ氏とは対等な位置で会談

佐々木)中国の習近平国家主席に、アメリカのブリンケン国務長官が会いに行ったではないですか。あの構図も不思議でしたよね。通常ならば向き合って座るはずなのに、なぜか習近平氏が真ん中に座っていて。

飯田)習近平氏が議長のような形で座り、左側にブリンケン氏とアメリカ代表団、右側に中国の人たちが座りました。

佐々木)皇帝に謁見に行ったような感じでした。18世紀にイギリスが中国の清朝廷に行ったではないですか。会いに行って、「お前たちに興味はないから帰れ」と言われて帰された。それがアヘン戦争の発端になったわけですが。

飯田)そこからアヘン戦争が起こる。

佐々木)そのシーンを思い浮かべてしまいました。習近平氏も「清王朝復活」というような勢いで、堂々とした存在感を示しつつある。これもまさに19世紀回帰的ですね。

飯田)直前の16日にビル・ゲイツ氏が習近平氏に会ったときは、横に並んでいました。

佐々木)対等に座っていた。

「政冷経熱」の関係になりつつある米中 ~中国と経済面でどう付き合うか、政治面でどう付き合うか

飯田)あの座り方にもメッセージがあったのでしょうか。相当な塩対応というような。

佐々木)ビル・ゲイツ氏やイーロン・マスク氏とは対等に付き合うけれど、アメリカ政府に対しては「俺の方が上だ」と。

飯田)習近平さんの方が上だと。

佐々木)ある意味、経済を盾に取っていると言えば盾に取っているわけです。アメリカ経済、特にテック系の大企業にとって、中国の工場はなくてはならない存在です。当然、緊密に仕事をしなければいけないという発想だけれど、国同士の関係は完全に冷え切っている。政冷経熱ですね。

飯田)政治は冷たくとも経済は熱い。

佐々木)昔の日本と中国の関係がそうでしたが、いまや米中間で同じようなことになっている。

飯田)アメリカと中国で。

佐々木)構図としては、全体が流動的になりつつあります。中国と経済面、政治面でそれぞれどう付き合うのか。

現在の複雑な国際情勢を日本が「どう理解するか」が問われている

佐々木)政治面でもアメリカとの距離感や、ヨーロッパとの距離感、日本との距離感はそれぞれ違います。全体像がわかりにくいのは間違いありません。

飯田)弱いところを突いてくる傾向があり、外相会合の直前、中国の李強氏はドイツとフランスには行くけれども、イギリスには行きません。

佐々木)日本にとっては複雑怪奇な世界情勢という感じです。わかりにくいところを単純化せず、我々がどう理解するかが逆に問われているのではないでしょうか。

飯田)いまの国際情勢を私たちがどう理解するのか。

佐々木)冷戦時代や21世紀のころはわかりやすかった。アメリカとソ連が強烈に対抗していて、どちらの核の傘に入るのかを選ぶしかありませんでした。アメリカの傘に入ればとりあえず安泰で、「ベトナム戦争反対」と叫んでいれば何となくOKだった。

飯田)冷戦時代は。

佐々木)しかし、いまはどこにつけばいいのか。アメリカ一辺倒でも「無理だ」と最近わかってきました。だから日本でも防衛費を増やし、いろいろ対応しているわけです。

飯田)そうですね。

佐々木)そういう状況のなかで、どのように進んでいくのか。国民も含めて考えなければならない時期にきていると思います。

飯田)海のつながりが大事なのか、自由貿易が大事なのか……自ずと「どこと組めば最も国益が大きくなるか」というようなことが見えてきます。

佐々木)そうですね。

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