ジャーナリストの佐々木俊尚、岩田明子が2月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。イランのライシ大統領と中国・習近平国家主席との会談について解説した。
イラン大統領が中国・習近平国家主席と会談
イランのライシ大統領は2月14日、中国を公式訪問し、習近平国家主席と北京で会談した。中国外務省の発表によると、両国の「全面的な戦略パートナー関係」を強化することで一致した。
「リベラルな西側諸国」対「強権国家連合軍」というブロックになりつつある
飯田)イランのライシ大統領は反米保守強硬派だと言われています。
佐々木)国際秩序というものが一応、90年代の冷戦終結以降、世界の中心という感じだったのですが、ここへきて中国とロシアが接近し、そこにイランが近付き、インドも近寄っている。気が付くと、ウクライナを支援している西側諸国が意外にも多数派ではないことがわかってきました。
飯田)世界全体で見ると。
佐々木)もちろんNATOを中心としたヨーロッパや日本、アメリカは西側なのだけれど、アフリカや中東などに目を向けると、さほど西側に同調しているわけでもなく、中国やロシアに気を使っている。
飯田)アフリカや中東は。
佐々木)逆に言えば、中国とロシアはそういう国に対して石油や天然ガスを輸出し、経済協力することによって囲いこみに走っている状況です。一見すると「リベラルな西側諸国」対「強権国家連合軍」というようなブロックになりつつあるのが嫌な感じですね。
いまこそ日本の出番 ~「グローバルサウス」の国々を日本が取り込まなければならない
飯田)そのなかで、日本の立ち位置は難しいですよね。
岩田)重要な局面になってきていると思います。ロシアによるウクライナ侵攻で国際社会の分断が進み、中露の覇権主義勢力が、G7を中心とする西側諸国の勢力よりも国の数では勝りつつある。
飯田)意外にも。
岩田)いわゆる「グローバルサウス」と呼ばれる国々を、日本が取り込んでいかなければならないわけです。
飯田)発展途上国などを。
岩田)日本はこれまでASEAN諸国やアフリカなどに日本らしい支援を行い、友好的な国が多かったのですけれども、中国が上書きするような形で経済支援を進めていて、オセロの盤面のように次々とひっくり返されている状況になっています。
イランと対話できる日本 ~覇権主義国家と自由主義国家との橋渡しを日本がするべき
岩田)ここは日本の出番ではないでしょうか。以前のロウハニ大統領の時代、当時は安倍政権でしたけれども、安倍元総理がアメリカとイランの対立を仲介するという仲介外交を行いました。
飯田)そうですね。
岩田)私もあのときイランへ同行しました。ロウハニさんからライシさんに交代し、イランの体制は変わったものの、日本はイランとは伝統的な友好国であり、対話できる関係です。いまこそ覇権主義国家と自由主義国家との橋渡しを行うべきだと思います。
飯田)日本が橋渡しを。
岩田)それを岸田総理がG7の議長国としてやっていけるのかどうかも、非常に厳しく問われていくと思います。
歴史的な訪問だった安倍元総理のイラン訪問 ~存在感を示した日本
飯田)当時のテヘラン訪問は、イランでイスラム革命が起きて以来の歴史的な訪問でした。
岩田)私もイランに入ったのは初めてだったのですけれど、飛行機を降りたらすぐに、いま問題になっているヒジャブを被って中継しました。日本がこういう国でアメリカとの仲介を行うのは貴重な体験でした。あのときは外務省も、日本がここまで存在感を示すことができるのかと沸いていました。
飯田)一方はトランプさんがいて、というところでしたものね。
岩田)トランプ元大統領から直接頼まれたのです。
飯田)そうだったのですね。
地政学的にも重要な位置にあるイラン ~「一帯一路」構想の中継地点
佐々木)イランは地政学的に重要な場所で、中東とユーラシアの中継地点のような場所です。中国から見ると「一帯一路」構想の海のシルクロード、陸のシルクロードのちょうど真ん中に位置しており、中央アジア諸国からアフリカにつながる中継地点にあるところなので、中国にとっても重要な国なのでしょうね。
ウクライナ戦争を終結させるにはプーチン政権が崩壊するしかない ~次期独裁者は「ワグネル」創設者のプリゴジン氏という予想記事も
佐々木)ウクライナ侵攻がどういう展開になるかによって、強権国家連合軍がどう変わっていくかが気になります。先日、「フォーリン・アフェアーズ・リポート」というアメリカの外交問題専門誌を読んでいたら、今後のロシアがどうなるかという記事が出ていました。
飯田)今後のロシアはどうなるか。
佐々木)このままいくと、ロシアが停戦に応じることはあり得ないだろうから、ウクライナ戦争を終わらせるには、ロシアがプーチン政権を崩壊させるしかないだろうと。
飯田)なるほど。
佐々木)もし仮に崩壊した場合でも、民主主義政権が復活することは考えられません。
飯田)ロシア国内に。
佐々木)ですから分裂して大騒ぎになるか、もしくは強権国家の独裁者の後継が出てくるのではないか、というような記事が出ていました。「ワグネル」という組織があるではないですか。
飯田)民間軍事会社。
佐々木)ワグネルの創設者はプリゴジン氏ですが、「彼が次の独裁者になるのではないか」というような予想が書いてありました。
飯田)ワグネルの創設者が。
佐々木)そうなると、ますます恐ろしい状況になる。岩田さんがおっしゃったように、日本がイランとの結びつきを強め、そこにくさびを打ち込むなど、いろいろなことを考えない限り、単に分断が深まっていくだけというのはよくない状況ですよね。
中国の偵察気球への「必要な措置」を「どこまですることができるのか」を詰めて議論する必要がある
飯田)対中国を考えても、飛んでくる気球を「撃ち落とせるかどうか」というような話にもなっています。
岩田)数日前の時点だと、日本政府としては「目撃情報しかない」ということで、アメリカから情報提供を受けている状況でした。
飯田)気球の情報について。
岩田)防衛大臣が2月14日、「領空侵犯した場合は必要な措置を講じることができる」と言いましたけれど、「どこまで必要な措置が取れるのか」というところまで詰めて議論しなければいけません。次々に気球が飛んでくる事態も予想されます。
佐々木)あれほど高高度なものは、日本の自衛隊では撃ち落とせないですよね。
岩田)目撃された場所が自衛隊基地のあるところばかりなのも気になります。
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