国民民主党がTikTokを禁止 政府も規制を検討するべき
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青山学院大学客員教授でキヤノングローバル戦略研究所主任研究員の峯村健司が3月17日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。TikTokの規制について解説した。
国民民主党がTikTokを禁止 ~アメリカでは全土での使用禁止も検討されている
国民民主党は3月8日、所属国会議員と秘書、党職員が使用するスマートフォンなどの業務用端末で、中国系動画投稿アプリ「TikTok」の使用を禁止した。
飯田)アメリカやEU、イギリスなどはある程度規制しています。
峯村)このようなアプリに関して、日本は5周~6周くらい遅れています。日本の政界で、こういう形で本格的な規制に動いたのは初めてです。国民民主党の措置は評価できると思います。アメリカはTikTokに関してドラスティックに規制を打ち出しています。現在、議会に出されている法案の1つですが、政府職員や軍だけではなく、アメリカ全土で使用禁止する法案も審議されています。
飯田)アメリカ全土で。
峯村)そのくらい懸念が高まっているのです。アメリカだけが動いているのであれば、米中対立が原因かなとも思いますが、この流れはEUでも進んでいます。
国民民主党がTikTokを規制した理由
峯村)先日、この動きを受けて国民民主党の玉木代表に「なぜ規制したのですか?」と聞きました。いくつか理由があるのですが、プライバシーポリシーという個人情報の保護方針があり、ダウンロードするときに「同意するかどうか」を必ず聞かれます。「同意する」というボタンをクリックすると同意したことになるのですが、そのなかにキーストロークパターンを抜き取ることがあると書いてあるのです。
飯田)キーストロークパターン。
峯村)どんなキーを押しているかという情報を取ることがあると書いてあった。これは他のアプリにはないものです。
飯田)つまり、TikTokを使っているときだけではなく、スマホを使っているときに「この人は何を調べているか」がわかるのですか?
峯村)そういうことです。どのキーボードを押したのか、例えば暗証番号なども、知ろうと思えばわかってしまうわけです。
飯田)確かに。
峯村)中国政府の悪口を書いていれば、すべて抜けてしまいます。深刻な個人情報の問題といえます。もう1つは、私が朝日新聞にいたときに同僚との調査報道で、TikTokが端末の情報を送信していた可能性があることを記事にしました。その記事も今回の措置の参考にしていただいたそうです。「危ないものは使わない」というのが安全保障の基本ですので、重要な措置だと思います。
TikTokをデータセンター含めて管理下に置きたいアメリカ ~親会社に株式売却を求めるという報道も
飯田)アメリカ政府がTikTokを運用しているバイトダンスに、株式売却を求めているという報道もあります。
峯村)プレッシャーを掛けてアメリカの管理下に置きたい思惑があるのは否定しません。アメリカの多くの若い人たちが使っていますので、TikTok自体の禁止は難しいと思います。アメリカとしては中国の管理ではなく、データセンターも含めてアメリカの中で完結させたいのでしょう。そのために圧力を掛けて、株を譲渡させる方向に動いていると見ています。
中国ではTikTokは使われていない ~外国では使わせて中国国内では使わせない
飯田)中国だとTikTokという名前ではなく、「抖音」と言うそうですが、中国国内では使われているのでしょうか?
峯村)TikTokそのものではなく、また違うアプリです。要は、外国には使わせて、中国では使わせないのはどういうことかという話ですよね。
飯田)なるほど。
日本政府のなかでのTikTok使用禁止はあくまで「原則として」
峯村)先日の松野博一官房長官の会見で、「TikTokは日本政府のなかでも制限している」と言っていましたよね。
飯田)そうですね。
峯村)その根拠となる「政府機関におけるサイバーセキュリティ対策のための統一基準」を入手して調べましたが、いまいち内容がわからない。
飯田)わからない。
峯村)そもそも基準の中にはTikTokという言葉がまず出ていません。「一般的なアプリには気を付けましょう」とあるだけです。「機密を扱う端末には原則として使ってはいけない」としか書かれていません。
飯田)そうなのですね。
峯村)官房長官の会見を見ると、TikTokを使わせていないのかと思ったのですが、そうではなく、あくまで「原則として」としか言っていないのです。
国民民主党の提言をもとに政府もTikTok禁止を検討するべき
峯村)アメリカやEUの基準よりも、かなり緩いことがわかりました。そう考えると、国民民主党の提言を受け、政府も禁止を検討しなければ、アメリカやEUと情報共有できなくなる事態にもなりかねません。
飯田)法規制もほとんどないですよね。
峯村)危機感はあまりにも薄いと言わざるを得ません。
飯田)安全保障面の考え方が非常に弱いですね。
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