中国紙「日本は虎の手先になるな」の言葉がすべて 林外相の中国訪問
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経済アナリストのジョセフ・クラフトが4月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。林外務大臣の中国訪問について解説した。
林外務大臣の中国訪問について、中国メディアが関係改善のサインと分析
中国共産党機関紙、人民日報系の「環球時報」は4月3日、林外務大臣の中国訪問について「日本が対中関係の改善を望むサインを送っている」との分析を報じた。中国側も李強首相や秦剛国務委員兼外相らがそれぞれ会談に応じ「最高級のもてなしで迎え、誠意を見せた」と指摘した。
飯田)社説では、「中日関係がどの程度緩和されるかはまだわからない」と言及しています。中国側はこのような受け止め方をしているということですか?
中国紙「日本は虎の手先になってはいけない」 ~経済面では日本を取り入れたい中国
クラフト)これは中国政府のプロパガンダですが、(中国メディアの)「日本は虎の手先になってはいけない」という言葉がすべてを表していると思います。
飯田)日本は虎の手先になってはいけない。
クラフト)アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルの記者がロシアで逮捕されるなど、ロシアと中国で人質外交的な動きが見られます。日本も岸田首相のウクライナ訪問、そして23品目での半導体の輸出規制を発表しましたが、それに反応したかのような動きはよろしくありません。
飯田)そうですね。
クラフト)一方、中国も経済を睨んであまりタカ派な姿勢は取れないため、今回、人質を取った代わりに最高のおもてなしとして、最高級の高官が林外相と会った。これは中国の「気をつけてくれよ。あまり関係を悪くするなよ」というメッセージではないかと思います。
自民党・二階氏訪中のタイミングで引き渡しか ~中国で拘束される日本人男性
飯田)拘束されている日本人男性はアステラス製薬の幹部の方だという話ですが、早期解放の要求が訪問前には報道されていました。この辺りはどうなのでしょうか?
クラフト)日本側がどこまで深刻に捉えているのか、中国側は見極めようとしているのではないでしょうか。「司法の場で決める」というのは、「日本側の今後の姿勢を見て我々は決めますよ」と言っているのです。1つの脅しのようなものです。
飯田)脅しのようなもの。
クラフト)自民党の二階俊博さんが6月の中国訪問を検討していると報道されていますが、日本が過度にアメリカと結託して中国を牽制しなければ、その辺りのタイミングで引き渡すことも考えられるのかなと思います。
中国との事業を見直すタイミングにある日本企業 ~政治的リスクが増える中国での事業
飯田)ただ、アステラス製薬の方だけでなく、日本人は10人以上が拘束されているという話ですよね?
クラフト)日本企業、特に中国にいる邦人は、今後の中国との事業を見直すいいタイミングだと思います。中国で事業をするということは、このような政治的リスクに絡まれる可能性が高い。どのような形で自分たちを守らなければいけないのか、あるいは減らしていくべきなのか、いろいろな課題があります。
飯田)なるほど。
クラフト)いままでの中国にある日本企業は、キャリアが生産や販売の方が中国現地の社長になっていました。要するに事業ですよね。今後は人事や法務の経験がある人がトップになって、リスクを管理していくような体制に変わる可能性があります。
中国でビジネスを行う場合、中国にデータを見られても大丈夫なように中国国内で個別に分類する必要がある ~コストが掛かりインフレ圧力が高まる
飯田)先日、ラーム・エマニュエル駐日米国大使が東大で講演し、取材にも応じていましたが、これから先は事業を行う際、「生産コストなどの話ではなく、政治的コストの部分を金額化して織り込まなくてはならない」という話をしていました。まさにそのような時代がやってくるのですね?
クラフト)その通りです。中国がサイバー法を制定して、日本企業が持っている中国にあるデータサーバーにいつでもアクセスできるとなれば、アクセスしたときにアメリカのデータが入っていたら、今度はアメリカから制裁を受けかねない。
飯田)そこにアメリカのデータが入っていれば。
クラフト)従って、中国でビジネスを行うときは、「セグリゲーション」と言いますが、中国国内で個別に分類する。アメリカのデータは外に持ち出して、中国に見られても大丈夫なように、サプライチェーンも中国で完結させる必要があります。
飯田)サプライチェーンも。
クラフト)昔のグローバリゼーションは一極集中でコストを下げるという動きですが、近年はセグリゲーションで分類するという動きになっています。そうするとコストが掛かり、インフレ圧力が高まる構図になるのではないかと思います。
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