「苦労するフランス大統領」を印象付けるマクロン大統領の訪中

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が4月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。4月6日に北京で行われたフランスと中国の首脳会談について解説した。

「苦労するフランス大統領」を印象付けるマクロン大統領の訪中

2023年1月9日、マクロン大統領による出迎えを受ける岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202301/09pari.html)

フランスと中国が首脳会談

中国を訪問したフランスのマクロン大統領は4月6日、北京で習近平国家主席と会談した。マクロン大統領はロシアによるウクライナへの軍事侵略について、「ロシアに理性を取り戻させ、すべての関係者を交渉のテーブルに戻すために、あなたの役割に期待している」と呼びかけた。

飯田)中国の仲介外交にフランスが期待を寄せています。

国内では年金改革反対デモが激化 ~だからこそ中国に行かざるを得ない部分も

宮家)そもそも「マクロンさんにはそんな暇があるのか? いまパリはどうなっているのだ?」と思いますね。フランスは労働組合が強いですから、年金の支給開始年齢を62歳から64歳に引き上げるという年金制度改革に対して、大規模なデモが10日以上も続いているわけです。

飯田)全国的にデモが広がっています。

宮家)国内がこれだけ荒れているのですから、「まずはそっちをやりなさい」と言いたいところですが、実はそういう状況だからこそ、中国に言われたら行かざるを得ない。中国はエアバスを買うなど、経済的にいろいろなベネフィットがあるからです。

飯田)50人くらいの企業経営者が同行しているという話です。

「マクロン大統領が苦労している」ことを印象付ける今回の訪中

宮家)気持ちはわかります。国内が荒れているのもフランス経済がよくないからであり、ここで中国に行き、「大きな商談を決めてアピールして帰りたい」という気持ちはわからないでもない。しかし、それにしてはあまり上手くないなと思います。

飯田)上手いやり方ではない。

宮家)仲介するのはいいですよ。でも、マクロン大統領自身がウクライナとロシアを仲介しようとしたけれど、成果がないではないですか。中国と組んでも、一緒に仲介者になれるわけがない。今回の訪中からは、マクロンさんも苦労しているなという印象を強く受けました。

自国の国益を最大化するため

飯田)こういう動きをすると、ロシアに「西側は足並みが乱れているのではないか」と取られませんか?

宮家)いい意味で、みんな自分の国益を最大化するために動いているのですから、それは当然ですけれどね。

飯田)自国の国益を最大化するために。

宮家)ロシアに近い東欧の国と、そうではないフランスやドイツのような西欧の国は微妙に考え方が違うし、ロシアや中国との関係でも、アメリカとも一味違う。そこにフランスやドイツの存在価値、もしくは国益を最大化するためのさまざまなアイデアが眠っているのではないでしょうか。

飯田)国益のためのアイデアが。

宮家)そういう意味でマクロンさんの動きは、フランスの大統領としては当然なのかも知れません。しかし、本当に中国とロシアがこれから上手く連携して、ウクライナだけではなくインド太平洋地域においてもどこかを侵攻するような状況になったら、「フランスは本当に役割を果たしているのか?」と思います。「ただ単に漁夫の利を得ようとしているのではないか?」とまでは言いたくはありませんので、マクロンさんにはそうならないようにして欲しいですね。

イランとサウジアラビアは口を利くようになっただけで、お互い問題視していることは変わらない

飯田)一方、北京では、イランとサウジアラビアの外相が会談したというニュースも出ていますが。

宮家)いままでの経緯もあって、中国が仲介したことになっているわけです。彼らもお互いにやりたかったことでしょうから、自然な流れだと思います。ただ今回のことは、いままで口を利かなかった人たちが口を利くようになっただけの話ですから。

飯田)イランとサウジアラビアが。

宮家)仲よくなって、「これから一緒に友好国になりましょう」というわけではありません。お互いに敵視とまではいきませんが、相当、問題視しているはずです。北京に行って外相同士が会ったからと言って、サウジアラビアとイランが友好国になるわけではないと思います。

飯田)いままでの言葉を見ていると。

宮家)関係は変わらないと思います。

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