中国の影響力を抑える「今後のカギ」 インド北東部への「投資」
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数量政策学者の高橋洋一とキヤノングローバル戦略研究所主任研究員の峯村健司が4月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。グローバルサウスに対するインドと中国、そして西側との関係について解説した。
スリランカの「債務の罠」 ~日本やインド、フランスが協力して西側の正しいやり方で中所得国を救済するいいチャンス
飯田)対中国というところで、グローバルサウス、インドとの関係、そしてスリランカというキーワードがあります。「債務の罠」と呼ばれるようなものがあるのですよね?
高橋)スリランカはコロナの影響によって経済が破綻してしまいました。誰がスリランカにたくさん貸し込んでいるのかと言うと、いちばんは中国です。2番目は日本で、3番目がインド、4番目はフランスだったと思います。
飯田)中国が最も貸し付けている。
高橋)どのようなルールで破綻した者を助けるかというところですが、中国はこれまで国際的な枠組みには参加していなかったのに、いまでは平気で「平等に負担しましょう」と言っています。
飯田)いまになって。
高橋)それは違いますよね。日本やインド、フランスが協力して、西側の民主主義の一般的なやり方で行えばいいのです。いいチャンスですし、そうすればインドも「それはそれでいいでしょう」となります。引き込みやすいのです。
日本政府がインド北東部の開発支援に力 ~「この地域に新たな産業バリューチェーンをつくる」インド・アガルタラでのシンポジウムで鈴木浩・駐印大使が投資を呼びかけ
飯田)日本が主導してスリランカの債務問題解消へ向け、新たな協議体を立ち上げるという報道がありました。「中国も乗るのであればどうぞ」ということですが。
峯村)先日、インドへ行ってきました。政府高官と意見交換しても「債務の罠」はかなり話題になっていました。今回行ったところは首都ニューデリーだけでなく、北東部のミャンマーとバングラデシュの細長いところにある「アガルタラ」という町のシンポジウムにも参加してきました。
バングラデシュ含むインド北東部に日本やインドのプレゼンスが高まると、中国は背後から狙われることに ~日本が中国よりも優勢
峯村)ベンガル湾、バングラデシュも含めた経済圏がどうなっているのかも含めて見てきました。驚いたのは、ここ最近だと投資を含めて、いつも「中国に負けている」という話が多いではないですか。
飯田)そうですね。
峯村)しかし、意外と日本のJICAやJETROなどがマタバリ港など、いい港を押さえているのです。中国のプレゼンスがほとんどなく、ポテンシャルがあると思いました。挨拶した鈴木浩・駐印大使は「この地域に新たな産業バリューチェーンをつくる」と指摘していました。
飯田)そうなのですね。
峯村)バングラデシュから東側のインドまでの回廊がしっかり通って、日本やインドのプレゼンスが高まると、チベットのうしろになるので、中国にとっては背中から狙われているような嫌な感じになるでしょう。
飯田)ちょうど北にまっすぐ向かっていくと、中印の紛争地帯になりますよね。
峯村)逆にあそこを中国に獲られると、中国としては陸路でインド洋の方に出られるようになります。
飯田)かつて大戦時に「援蒋ルート」と呼ばれたところですよね。
峯村)そうですね。私が行ったところも、インパール作戦を行った戦地から遠くないところでした。いまでも戦略的に要衝の地なのです。
飯田)そこが物流の大動脈なのですね。どちらが獲るのかという。
峯村)そこで言うと日本が優勢であることがわかりました。国を挙げて戦略的に開発をしていくべきですね。
債務の形に港を獲る中国 ~西側には国際的なルールがある
飯田)港を獲ることの大事さについて、債務の罠という話がありました。「インフラを整備するからお金を貸しますよ」と貸し込んで、「返せないならその形(かた)に港を獲りますよ」ということを中国は……。
高橋)現実にやってしまいましたよね。「消費者金融的なことをやっている」と、他の国にも言ったらいいのだと思います。「借りると本当に獲られますよ」と。中国は平気で行います。自分たちが債務を整理するのではなく、領土を獲ってしまうのです。日本や西側には「パリクラブ」というものがあり、そのなかで動くので、「悪質なことはしません」と。
飯田)国際的なルールのなかで。
高橋)領土を獲ることはしません、というのが普通ですよね。
バングラデシュのハシナ首相の来日 ~日本とバングラデシュの関係をどうつくるかが重要
飯田)経済的な圧迫に対しては、アメリカもいろいろなペーパーを出して戦略的に行おうとしています。
峯村)アメリカも2018年のトランプ政権のときに、「米国際開発金融公社」を新しくつくり、政府系の金融機関として投資を行っています。バングラデシュはその辺りのことをよくわかっていて、中国の投資はある意味で「ドラッグだ」と言っている幹部の人もいました。その裏返しで日本の投資への期待が高いことがわかりました。
飯田)中国の投資はドラッグであると。
峯村)ベンガル湾にはマタバリ港という、もっとも深い、原子力潜水艦が寄港できる港があるのですが、ここは日本のJICAがしっかりと押さえています。
飯田)JICAが。
峯村)そう考えると、戦略的には上手く動いているなと感じました。もうすぐバングラデシュの首相のハシナさんが来日されます。ハシナ氏は日本との関係を重視している方なので、両国関係を緊密にするチャンスといえます。
安倍元総理の貢献
飯田)価値観の押し付けではなく、「一緒に開発していこう」という姿勢が現地で評判がいいという話を聞きました。
峯村)特にインドの方々は日本に対する思いがあります。歴史的に独立を支援したという側面もありますし、安倍元総理の貢献も改めて実感しました。クアッドの担当者とも会って話を聞きましたが、「安倍元総理がいたからクアッドは壊れずに進んだ。米国やオーストラリアとも橋渡しをしてくれた」と言っていたのが印象的でした。
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