外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が5月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国の西安市で開催された「中国・中央アジアサミット」について解説した。
中国・中央アジアサミット
中国は5月18日から、中国と中央アジア5ヵ国の首脳会議「中国・中央アジアサミット」を西安市で開催した。19日まで開催されるこの首脳会議には、カザフスタンやウズベキスタンなど中央アジア5ヵ国の首脳が参加し、中国が掲げる経済圏構想「一帯一路」の協力拡大などを議論する。
飯田)中国と中央アジアの国々とのつながりとしては、「上海協力機構」もありますよね。
宮家)ありますね。それにしても、中央アジアの人たちも可哀そうですよ。先日、モスクワへも戦勝記念日にパレードをやるということで動員されていました。今度は中国か、という感じです。
ロシアと中国に挟まれた中央アジアの国々との関係を拡大したい中国 ~G7広島サミットへの対抗ではない
宮家)あの国々は、もともとソ連の一部だったけれども、独立してロシアと中国に挟まれている。しかし、ロシアの影響力の方が強いですから、中国としては何とか彼らとの関係を拡大したいのです。
飯田)中国としては。
宮家)G7広島サミットに合わせて開催し、攻めているような感じがするけれど、必ずしもそうではないと思います。
ウイグルの人権問題で中央アジアの国々から反発されると困る中国
宮家)なぜかと言うと、中国における最大の問題の1つは、ウイグル問題です。ウイグルは中国以外では「東トルキスタン」とも呼ばれる、あの地域は中央アジアです。イスラムの世界ですしね。
飯田)そうですね。
宮家)そうなると、中国がウイグルで行っていることについて、中央アジアの国々が批判的になったり、何か行動を起こされると困るわけです。脆弱な部分ですから。慎重に中央アジア諸国との関係を維持しようとしているし、相手はタリバンですが、アフガニスタンとの関係も強化しています。
飯田)なるほど。
宮家)そういう意味では、中国は中央アジアに対しても動かなければならない。残念ながら今回、中央アジアの人たちはG7広島サミットに呼ばれていないので、タイミングとしても「ちょうどいいのではないか」となったのかどうかは定かではありませんが、「中国も必死だな」と感じます。それに付き合わされる国々も大変だなと、同情いたします。
一帯一路で関係を維持しようとしている ~どこまで維持できるかは疑問
飯田)このタイミングで開催したため、攻めているのかと思いましたが、むしろ不安な部分なのですね。
宮家)中央アジアは、ウイグル人をあれだけ邪険にしているわけですから、本来、ムスリム(イスラム教徒)からすれば中国は許せない政権なのです。中国はそれを必死になだめて、一帯一路という形で経済協力の関係を維持しようとしている。その努力の一環だと思います。しかし、このような形で動員されて、果たしてうまくいくのでしょうか。彼らが呼ばれて嬉しいのかどうかはわかりません。
飯田)その原資としてのお金がいままで続いたけれども、これからはどうなるのかわからない。
宮家)金の切れ目が縁の切れ目かどうかはわかりませんが、そう簡単に中国がこの地域にお金をつぎ込むわけにもいかないでしょうから、やはり限界があるのではないかと個人的には思います。
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