いま中国を訪問するロシア首相の「思惑」

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数量政策学者の高橋洋一が5月24日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ロシア首相の中国訪問について解説した。

いま中国を訪問するロシア首相の「思惑」

言葉を交わすロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席(ウズベキスタン・サマルカンド)=2022年9月16日 AFP=時事 写真提供:時事通信

ロシア首相が中国訪問、習近平国家主席らと会談へ

5月23日から2日間の日程で、首相として初めて中国を訪問しているロシアのミシュスチン首相が上海で講演を行い、中国との経済協力関係の強化を求めた。24日は北京で習近平国家主席や李強首相との会談も予定されており、G7広島サミットでウクライナへの支援継続で結束を強めるG7各国に対し、ロシアは中国と連携を強化し対抗したい考えだ。

飯田)昨日(23日)は上海で講演が行われました。

高橋)ますます露中の関係が強くなるのでしょうか。あとはアラブ諸国やアフリカ諸国、東南アジアの国などを入れてまとまっていく考えなのでしょうね。

飯田)ロシアとしては中国からの支援などが……。

高橋)いろいろな制裁を受けていますからね。インドやトルコはいい抜け穴だったのだけれど、そこも従来ほど緩くなくなってきたのかも知れません。だから中国の方に寄ってきたのでしょう。

飯田)インドはG20議長国としてG7に招待され、ウクライナのゼレンスキー大統領とも会っていますものね。

高橋)涙目の2つの国が会っているような感じがします。

ロシア首相が中国を訪問した目的 ~中国へのご機嫌伺い?

飯田)直前に中国は、中央アジア5ヵ国とのサミットも開催しました。

高橋)その5ヵ国は一帯一路の参加国ですが、ロシアが弱いときに、中国が「自分のところに来なさい」と言っているようにも見えました。ここでロシアが中国に行き、「そこを獲るな」と言っているかも知れないし、あるいは「みんなで仲よくやろう」と言っているかも知れない。わからないですね。

飯田)カザフスタンやキルギスなどの5ヵ国ですが、もともとソ連の構成国であり、ロシアの影響力も強かった。

高橋)ロシアの影響力が強かったのに、習近平さんが議長を務め、みんなを集めてしまったでしょう。でも、いまのプーチンさんには引き留めるような力がないので、グループの盟主が中国になってしまったわけです。だからロシアの首相が行って、ご機嫌伺いをしているかも知れないですよね。

飯田)ご機嫌伺い。

高橋)現在の状況を考えれば、中国の方が上になっているかも知れません。そういう意味では、向こう側の覇権争いは興味深いですけれども。

かつての「米ソ」から「G7対中国+α」へ

飯田)最近の国際政治の論文などを見ていると、中国とロシアの関係に関して、ロシアは中国のジュニアパートナーだと。格下の相手国のような書かれ方をしています。

高橋)経済もそうですし、軍事も頼られるようになってしまったら、そうなるでしょう。いまは中国がアメリカに対する挑戦国ですよね。

飯田)この先の国際秩序において、G7を経て状況が変わっていくのかどうか。

高橋)当分アメリカは変わらないのだけれど、自分だけでは動けないからG7を使う。それに対する挑戦国が中国なのでしょう。

飯田)挑戦国が中国。

高橋)NATOも明らかに、体制上の挑戦国として中国を位置付けています。昔のように米ソではなく、「G7対中国+α」なのではないでしょうか。

グローバルサウスの国々で専制主義国家が増えている理由

飯田)2つの陣営に別れていく。いわゆるグローバルサウスの国々は、そこに属さないのですか?

高橋)グローバルサウスの国々は、そのときどきで両方と協力した方が有利ですからね。片方に肩入れはしないと思います。ただ、どちらかと言うと専制主義の方がやりやすいのですよ。民主主義は維持コストが大変だから、グローバルサウスの国はなかなか入りにくいのです。

飯田)特にこれから開発や経済成長したい国に関しては、ということですか?

高橋)専制主義の方が手っ取り早いから、そちらになびきがちなのです。

飯田)昔から言われるような開発独裁などになりがち。

高橋)数的にも、いまは専制国家の方が増えています。

飯田)民主国家の方がむしろ少数派になっているという指摘もありますね。

高橋)数的にはそうでしょうね。

G7で「法の支配に基づく国際秩序を守る」と述べた岸田総理

飯田)G7サミットのなかで岸田さんは、民主主義の概念はあまり前面に出さず、「法の支配に基づく国際秩序を守る」と話していました。

高橋)確かに民主主義は出していませんね。出していませんが、集まった国を見ると、少なくとも民主主義国家ばかりです。G20のなかでも、インド、インドネシア、オーストラリア、韓国、ブラジルなどは一応、民主主義です。民主主義でも少し違う民主主義なのだけれど。それでも一応、専制国家ではないところを集めています。

飯田)招待国のなかでは、統治機構で言えばベトナムだけが違います。

高橋)でも、ベトナムはTPPに入ったときにあきらめていますね。TPPに入ると、いまのような社会主義の一党独裁体制を維持するのは、長期的には無理だと思います。そこは「中国と対抗する」と割り切ったのではないですかね。

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