作家で自由民主党・参議院議員の青山繁晴とキヤノングローバル戦略研究所主任研究員の峯村健司が6月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ブリンケン国務長官の訪中について解説した。
米ブリンケン国務長官が中国を訪問、政府高官と会談へ ~米の狙いは「米中関係を改善しなければならない」
アメリカ政府はブリンケン国務長官が6月18日から2日間中国を訪問し、中国政府高官と会談すると発表した。ブリンケン国務長官が中国を訪問するのは就任後初めてとなる。
飯田)アメリカ本土に気球が飛来し、それを撃ち落とした件などがあり、止まっていたものが動き出すのでしょうか?
峯村)本来のブリンケン氏の訪中が4ヵ月以上遅れた事実が重要です。4ヵ月間で何が起きたかと言うと、南シナ海では、米軍機と中国機のニアミスがありました。その4日後には台湾海峡で中国船がアメリカ艦艇の目の前を横切りました。当時を知る米海軍関係者によると、あのときは本当に衝突寸前だったそうです。
青山)中国は技術的に未熟ですし。
峯村)見てもわかるぐらいの荒い運転をしていたそうです。中国としてはある意味、チキンゲームを行っているわけですね。でもアメリカ側からするとさすがにまずいので、何とか「米中関係を改善しなければならない」というのが本音なのだろうと思います。
政府とバイデン政権は対中改善したい ~議会が許さないのでなかなか進まない
峯村)ただ、何人か来日したアメリカ議会の関係者と会っていますが、簡単にはいかないと口を揃えています。もちろん、バイデン政府としては「対中改善したい」と思っているし、ペンタゴンも含めてどの部門も今の緊張状態をなんとかしたいと考えている。しかし、とにかく「いまは議会が厳しい」と言うのです。
青山)そうですね。
峯村)中国に少しでも甘いことをした瞬間、猛烈に批判されてしまう。
青山)メディアだけではなく、主権者にも。
峯村)そうですね。だから共和党・民主党に関わらず、いずれの米議会関係者も「なかなか進まないだろう」という見方で一致していました。
2023年後半は不景気になる分析が出ているアメリカ ~景気を上げるためには貿易相手である中国とのデカップリングを解消すること
青山)中国との偶発的な軍事衝突を避けるためには、ブリンケンさんのような穏やかな人が、とりあえず相手側の外務大臣である秦剛さんだけでなく、習近平さんに会わなければいけない。それはその通りです。
飯田)トップに会わなければならない。
青山)ただ、大きなバックグラウンドには「デカップリング」があります。要するに別れてしまう・仲違いしてしまう。
飯田)2つを分離させる。
青山)通常は経済で使われる言葉です。非公表のアメリカ政府内部の分析が出てきていますが、経済的な米中のデカップリングによって、アメリカの今年(2023年)後半は不景気になりそうなのです。それが大きいですよね。
峯村)そうだと思います。かなり景気が下がると言われていて、そうなると中国という貿易相手は大きいですから。
いまさら中国と仲よくするのも難しい
峯村)選挙に向けて本当は経済を上げなくてはいけない。となるとポイントは中国なのですが、いまさら中国と仲よくするのも難しい。まさにジレンマのなかにいるのが、いまのバイデン政権です。
米中デカップリングで進みたいのか、軍の暴走をどこまで知っているのか、習近平氏から本音を引き出さなければならない ~会えなければブリンケン氏の今後にも関わる
青山)個性も含めて考えると、ブリンケンさんは習近平さんに意思を確認したいのだと思います。
飯田)意思を確認したい。
青山)本当に米中デカップリングで進みたいのか、それで中国経済はやっていけるのか。また、軍の暴走をどこまで知っているのかを確認する。
飯田)習近平さんは知っているのかどうか。
青山)要は開戦の経験もない中国海軍ですから、適切な距離もわからない。軍艦は動きが俊敏に見えるけれども、私が普段乗るような海洋資源調査船と違って、自動車などと比べると信じられないぐらいヨタヨタとしか動かないのです。
飯田)舵を切ってもピッと動くわけではないですよね。
青山)米海軍は「極限状況のときも同じだということをわかっていない」と最近の経験からも考えていて、ブリンケンさんにもそれがどれぐらい危ないのかを伝えているのです。
飯田)危ないということを。
青山)独裁国家なので、習近平さんに会うためには秦剛外務大臣に会うステップを踏まなければなりません。逆に言えば、ブリンケンさんが行っても習近平さんに会えなかったり、儀礼的な会談に終わってしまうかも知れない。通訳しか挟まないような、事実上の1対1(バイ)ができなかったら失敗です。ブリンケンさんの今後にも関わってきてしまう。だからご本人は必死ですよ。
飯田)何としてでも会う。
青山)習近平さんに会わなければいけないし、会うだけではダメで、本音を引き出さないといけないのです。
峯村)そうですね。
青山)しかも、向こうは英語を話さないから通訳を介さなければならない。つまり会談時間は半分で、話している時間の倍の成果を引き出さなければいけません。
中国も経済が立ち行かず、会談は可能だという予測も ~中国に強硬なブリンケン氏
青山)でも、アメリカのインテリジェンスは可能だろうと見ています。習近平さんも経済が立ち行かないので、いまは困り切っていますから。
飯田)「地方だけで債務が1100兆円」という報道もあります。
青山)もっと多いと思います。そうしたら、いまがチャンスです。
峯村)政権内でブリンケンさんよりも力を持っているといわれる米中央情報局(CIA)のバーンズさんが、極秘で訪中していたのです。その辺りも全部交渉した上での今回のブリンケン氏の訪問なので、青山さんがおっしゃったようにディープな会談を行い、「どうする気だ?」という最後通牒的なものが内々に中国側に行われる可能性もあると思います。私はブリンケンさんに2度インタビューで会ったことがありますが、かなり中国にはハードライナーですね。
飯田)強硬姿勢を取る。
峯村)特に人権や独裁体制に対しては極めて厳しかった。中国側のカウンターパートの王毅さんらはブリンケン氏と話すときは戦々恐々としているそうです。
飯田)確かにブリンケン氏・サリバン氏のラインが、バイデン政権が発足した当初にアラスカで、メディアの前で大立ち回りをしていました。
将来の大統領候補でもあるブリンケン氏
青山)サリバン補佐官もいいのですよ。
峯村)いいですね。
飯田)安全保障・外交ラインが。
青山)日本国民なので勝手なことを言いますが、次期大統領はブリンケンさんでいいのですよ。トランプ氏のファンに怒られそうですが、その1択だと思います。
峯村)勝ちますね。見た目もかっこいいですしね。
飯田)そうですよね。
峯村)サリバン氏にもよく取材していましたけれど、頭がいい人です。
青山)人柄もいいですし。
峯村)私が質問しようと思ったら、大体わかっているのですよ。だから答えが出てくる。
青山)逃げないですしね。
峯村)逃げないですね。
バイデン氏しか民主党をまとめられる人がいない ~「いい人」であるバイデン氏
飯田)バイデンさん自身は「習近平氏と昔から友達なのだ」という発言もありますが、対中国観はどうなのですか?
青山)それほどはっきりした中国観があるとは思いません。バイデンさんがなぜ高齢で大統領を務めているかと言うと、四分五裂の民主党のなかで人当たりがよく、誰からも恨まれていない人がバイデンさんしかいなかったからです。
飯田)いい人なのですか?
青山)「すごく」が付くいい人です。すごくいい人というのは、哲学者にはあまりいないのですよ。
峯村)確かに。
青山)バイデンさんは年齢もあって、手柄がどうのこうのと言う人ではありません。「再選したい」と言うのも、あれだけ「おじいさん」と言われるので面白く思っていない面はあるでしょうが、「自分が外れると民主党が四分五裂になって、もっと酷いことになる」と感じているのは間違いありません。
峯村)そうですね。
青山)だからブリンケンさんにとっては笑いごとではなく、将来の大統領候補になるためにも、習近平氏との会談は成功させなければならない。
峯村)その次はあり得ますね。
青山)今回が分かれ目です。日米中みんな、世界の大きな国が分かれ目に来ているのです。
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