弾道ミサイルを夜に発射した北朝鮮の意図
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元航空自衛官で評論家の潮匡人氏が6月16日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。6月15日に発射された北朝鮮の弾道ミサイルについて解説した。
北朝鮮が15日夜にミサイル2発を発射、石川県沖のEEZ内に落下
北朝鮮は6月15日、少なくとも2発の弾道ミサイルを日本海に向けて発射した。防衛省によると弾道ミサイルは同日午後7時24分ごろと、午後7時36分ごろに発射され、いずれも石川県舳倉島の北西およそ250キロ、日本のEEZ(排他的経済水域)内に落下したとみられる。また、変則軌道で飛んだ可能性がある。
弾道ミサイルとしては低い高度
飯田)今回のミサイルは変則軌道で飛んだという報道も出ていますが、現時点ではどんなものだと考えられますか?
潮)変則軌道であることと、政府の発表によれば、最高高度が約50キロ程度だとされています。弾道ミサイルとしては低い高度です。
飯田)低い高度である。
潮)数字や条件から考えると、「北朝鮮版イスカンデル」と言われる短距離弾道ミサイル、あるいはアメリカ軍が保有する「エイタクムス」と同じような短距離弾道ミサイルなどが、これまで変則的な軌道で飛翔したとみられているものです。
これまでの北朝鮮の弾道ミサイルよりも射程距離が伸びている
潮)防衛省の資料によると、それぞれの射程はイスカンデルの方が約600キロ、短距離弾道ミサイル・エイタクムスに類似しているものが約400キロ程度だと言われています。
飯田)それぞれ約400キロ~600キロ程度。
潮)仮にそうであれば、射程が伸びているということです。あえて言えば、そろそろ北朝鮮が何らかの発表をするのではないでしょうか。それらを踏まえて最終的に判断されると思いますが、最近の事例のなかでは、3月19日に北朝鮮が発射したものに最も似ていると言われています。
飯田)3月19日に発射されたミサイルに。
潮)ただ、公式に断定的な評価は下されていませんので、引き続き分析しなければならないと思います。
飯田)操業中の漁船の近くに落下したという話もありますけれど、変則軌道だと迎撃などは難しくなりますか?
潮)もちろん、通常の弾道ミサイルの軌道を描いて落下してくるものに比べれば、圧倒的に難しいことは間違いありません。
独自の開発能力を高める北朝鮮
弁護士・野村修也)イスカンデルなどに比べて距離が伸びているというのは、新しいタイプが出てきた可能性があるのですか?
潮)今年(2023年)に入ってからも、北朝鮮はいろいろな形で新型ミサイルを次々に撃っています。つい最近も、続けて新型ICBMを撃ちました。昨日(15日)撃ったものに関しても、我々が目にしていない新型のものであった可能性もあります。
野村)その種の技術は国際社会のどこから入手していると思われますか?
潮)例えば旧ソ連、あるいはロシアです。冷戦構造が崩壊・終結したときに、旧ソビエト連邦の技術者がさまざまな国に行きましたが、その1つが北朝鮮でした。
飯田)ソ連の崩壊後に。
潮)また、中国などもさまざまなバックアップをしてきていますが、弾道ミサイルを載せている移動式の発射台があります。大型の車のようなものですが、これについては北朝鮮が独自に開発し、国内で製造したのだろうと言われています。
飯田)独自に開発したもの。
潮)ですので、すべてを海外に頼っているわけではなく、自国の生産力も着実につけていることを忘れてはいけないと思います。
テストの段階ではなく、訓練の段階に入っている
飯田)今回は夜にミサイルを撃っていますが、夜に撃つ意図としては、どんなことが考えられますか?
潮)これまでも北朝鮮が「人工衛星だ」と主張してきた発射については、ほぼ朝に撃たれていました。
飯田)人工衛星だと言われるものは。
潮)それらは基本的に南に向けて撃っています。人工衛星の場合は、北極・南極それぞれの上空を結んだ極軌道と呼ばれるところを周回させることで、地球のいろいろな地点でも、少なくとも1日に1回のペースで観測することができるのです。
飯田)人工衛星の場合は。
潮)弾道ミサイルの場合は、地球の自転を利用してより遠くへ飛ばす形になるので、北朝鮮としては今回のように東側に向けて撃つことになります。その方向、あるいは高度その他からも、どうやら人工衛星ではなさそうだと判断できるわけです。夜中に撃つのは、軍事的にもその方が急襲的に他国を攻撃できるので、それらを鑑みた時間が選ばれている可能性もあります。
飯田)技術的なテストというより、演習の一環だと思った方がいいですか?
潮)仮に新型だとしても、先ほどの私の推計が正しければ、3月19日に撃ったものと同型だということになると思いますので、もはやテストというよりも訓練だと考えるべきです。
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