「米中関係」は、対話を継続し、管理しなければならない時代に入った

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が7月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ジャカルタで行われた米ブリンケン国務長官と中国・王毅共産党政治局員の外交トップ会談について解説した。

「米中関係」は、対話を継続し、管理しなければならない時代に入った

インドネシアのバリ島で、握手する中国の習近平国家主席(左)とバイデン米大統領 2022年11月14日 (ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

米中外交トップ会談、今後の対話継続で一致

アメリカのブリンケン国務長官と中国外交トップの王毅共産党政治局員は7月13日、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の外相会議が開かれているジャカルタで会談した。両氏は今後の対話継続で一致した。

飯田)2国間や地域、世界規模の問題について率直かつ建設的な議論が行われたということです。

「対話継続で一致した」は「喧嘩別れはしなかった」ということ ~米中関係を管理しなければならない時代に入った

宮家)「対話継続で一致した」というのは、何も合意しなかったということです。喧嘩別れはしなかった。「率直かつ建設的」というのは「言い合っただけ」ということですね。

飯田)そう翻訳するのですね。

宮家)何か合意があれば、それを発表するわけです。発表するものがないのだから、中国側は中国側で言うことが決まっており、アメリカ側も決まっていて、会談したら、どれも噛み合わなかった。「でも続きはやりましょうね」ということです。

飯田)続きはやりましょうと。

宮家)なぜ続きが必要なのか。以前、米中関係が悪くなったころから「冷戦ではないのだ」という議論がありました。

飯田)冷戦ではないと。

宮家)でも、これが冷戦でなかったら、何が冷戦なのでしょうか。話し合いをすれば仲よくなるという状況ではないのです。「いまは殴り合いの喧嘩はやめよう。せいぜい罵り合いにしておこう」という意味では、両者が対話を続けることが最も大事です。それが信頼醸成であり、冷戦時代の米ソと同じです。

飯田)冷戦時代の米ソと同じ。

宮家)「いい、悪い」ではなく、米中関係を管理しなければならない時代に入ったのだと思います。

ブリンケン氏と王毅氏が話しても結論は出ない

宮家)「米中外交トップ会談」というのも、よく言ったなと思います。要するに「米中外相会談」ではないのです。なぜだかわかりますか?

飯田)外相では権限がないからですか?

宮家)王毅さんはもともと外相だった方です。そのあと外交担当の国務委員になった。国務委員は、副首相級の位置付けとされています。

飯田)偉くなっているのですね。

宮家)偉くなったのです。政治局員は25人しかいません。ようやく政治局の25人のなかに、外交を専門とする人が入った。私が覚えている限りでは数少ない例の1つです。日本の閣僚は何人いますか? 二十数人でしょう?

飯田)19人~20人くらいですね。

宮家)つまり日本の外相のカウンターパート的に考えると、国務委員の外交部長でもないし、国務委員の副首相級でもなく、政治局員の外交担当が本当の外相なのです。

飯田)日本メディアは外交部長のことを外相と呼びますが、本当は……。

宮家)外相なのですけれど、彼らは外交担当が3人いるわけです。それをうまく使い分けている。今回は外相を出そうと思ったけれど、出られなくなってしまった。

飯田)(秦剛国務委員兼外相は)体調不良で欠席しました。

宮家)ただ、王毅さんが政治局員になったとしても、彼に物事を決定する権限はないと思います。共産党の内部に入っているから、前よりは力があると思いますけれど。

飯田)以前よりは。

宮家)ブリンケンさんは、バイデン大統領にいろいろと進言することがあります。そういう意味では、ブリンケンさんの方が自主的な政策決定権限はあるでしょう。ようやく外交トップ、すなわち政治局の外交担当と国務長官が、こういう形で会うことができた。しかし、結論は出ません。

飯田)やはり中国においては、トップの習近平氏の意向だけが大事なのですね。

米中関係をどのようにマネージしていくか

宮家)それは当然なのですけれどね。報道では「次の米中首脳会談への地ならし」などと表現されています。要するに準備はするのでしょう。しかし、昔だったら中国が首脳会談を行うとなれば、文書をつくりましょうと言われましたものです。

飯田)首脳会談をするということで。

宮家)中身があるかどうかは別として、文書を一生懸命つくり、議論していたのだけれど、いまや合意点があまりにも少ないから文書などつくれません。そうすると、昔のような首脳会談への地ならしというイメージよりも、「どうやってマネージしていくか」という方向性になります。中国も決して楽ではないですよ。

米連邦政府のメールアカウントが中国のハッカー集団にサイバー攻撃を受ける

宮家)CNNを見ていたら最近、中国系のハッカーがアメリカ政府の関係者にサイバー攻撃を行い、商務長官が標的になったということです。

飯田)レモンド商務長官ですか。

宮家)「システムを保護してマイクロソフト社に通知した」と報道官が説明しているのですが、この件をブリンケンさんが取り上げて、「これを続けたらどうなるかわかっていますね」と。「結果が伴うことになりますよ」という言い方をしているのです。

飯田)中国側に。

宮家)ですので、決して両者が歩み寄り、これから方向性を1つにしていこうという雰囲気ではなかったと、アメリカでは報じられていました。

飯田)最初に中国側が対話しようとしたのは、レモンド商務長官のような経済系の閣僚ですよね。

宮家)そうです。しかし、半導体等々で中国に対して厳しい態度を取っているでしょう。だから情報を集めたいわけです。もちろん報道でしかないのだけれども、だとしたら引き続き、どっちもどっちだなと思うわけです。

八方塞がりで対話を継続するしかない米中関係

飯田)中国と対話する分野として、経済系の面があり、いまは外交系でブリンケン氏と王毅氏が話している。もう1つ、国防面はまったく止まっていますよね?

宮家)止まっています。彼らはやる気がまったくないですね。

飯田)やる気がまったくないのですか?

宮家)ないと思います。表向き国防部長は制裁されているのだから、中国軍としては、いまアメリカと話しても妥協する気などないと思います。

飯田)中国軍は。

宮家)とにかくアメリカに追いつきたいのです。追いつきたいときは妥協などしません。追い抜いてからは妥協するでしょうけれど。そう考えると、いま軍は動かず、政治的にも止まったままで、経済が動くかなと思ったら経済もダメだった。八方塞がりで、対話を継続するしかないという状況だと思います。

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