台湾総統選出馬の侯友宜氏が初めての外遊先に日本を選んだ「国民党の事情」

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元内閣官房副長官補で同志社大学特別客員教授の兼原信克が8月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。台湾総統選挙について解説した。

台湾総統選出馬の侯友宜氏が初めての外遊先に日本を選んだ「国民党の事情」

来日し「侯友宜 新北市長を囲む会」に臨む台湾最大野党・国民党から総統選に出馬する侯友宜氏=2023年7月31日午後、国会内 写真提供:産経新聞社

台湾総統選挙出馬の侯友宜氏が来日

2024年1月の台湾総統選挙に最大野党・中国国民党から立候補する侯友宜氏が7月31日に来日した。国民党の総統候補の来日は2007年の馬英九氏以来、約16年ぶり。8月2日まで滞在し、日本の国会議員らとの交流などで「対日重視」をアピールする。

飯田)7月23日の党大会で正式に候補として決まり、初めての外遊先が日本でした。総統選挙まであと半年もないくらいですね。

兼原)国民党は人気がないのです。馬英九(バ・エイキュウ)さんの時代に中国に大きく寄ってしまった。中国は経済的に取り込もうとしたのですが、同時に中間線を越えて戦闘機を出してきたので、世論の反発も強いのです。

飯田)国民党への。

人気のない国民党 ~日本への外遊で軌道修正か

兼原)侯友宜(コウ・ユウギ)さんは中国系の血ではなく、台湾生まれの台湾人で国民党に入った人です。こういう人でないと、国民党も国民の人気が取れない。中国にべったりの状態から、日本にも気を遣うように、少し軌道修正を試みているのだと思います。

飯田)軌道修正。

兼原)中国は「蔡英文(サイ・エイブン)氏や頼清徳(ライ・セイトク)氏の民進党だと戦争になる」と。「国民党は可愛いから戦争にはならない」というようなキャンペーンを張っています。

飯田)「民進党政権が続くと危ないぞ」と。

兼原)逆に台湾からすると「何だよ」という感じになるわけです。横で軍事的に恫喝していますから。「国民党の方がよほど危ない」とみんな見ています。そんな状況のなかで国民党も少し軌道修正しているのではないでしょうか。

飯田)軌道修正に煮え切らない人たちが、「鴻海」の会長である郭台銘(テリー・ゴウ)氏をまだ推そうとしていますね。

兼原)本人は出る気があったのですが、国民党の最高幹部会議が終わったら突然外されました。経済的には、台湾にとっても中国は大切なのですが、それ1本で押していると「選挙で負けるのではないか」という感じになったのだと思います。

民進党・民衆党・国民党の票の比率は「4:3:3」 ~日本維新の会に存在が似ている民衆党

飯田)いまのところ他の候補には、第3勢力である民衆党の柯文哲(カ・ブンテツ)さんもいますね。

兼原)民衆党は「維新の会」のような感じです。

飯田)日本維新の会ですか。

兼原)自民党対立憲民主党のなかにスーッと入ってきて、なぜか立憲民主党を抜いてしまったという感じです。票で言うと、民進党が4で、民衆党と国民党がそれぞれ3、「4:3:3」くらいです。侯友宜さんの人気が落ちていったときに、彼の票がどちらに流れていくかですよね。

飯田)民進党に行くか、民衆党の柯文哲さんに行くか。

未知数の民衆党・柯文哲氏

兼原)足すと6になるので、すべての票が流れればひっくり返ってしまいます。民進党はだいぶ経験を積みましたが、柯文哲さんは未知数なので、どういう政党なのかなという感じですね。

飯田)もともとは医師であり、台北市長も務めた方です。

兼原)私はよく存じ上げませんが、先日、日本に来られたようですね。

飯田)そうですね。

兼原)あまり過激なことはしない人のように思いますが、維新と一緒で未知数です。

飯田)特に外交部分では未知数ですよね。

台湾を民主化した李登輝氏

飯田)台湾の方向性としては、アメリカをどう引き込んでいくかですよね。

兼原)イスラエルと同じで、アメリカがいないと守りきれない人たちです。李登輝(リ・トウキ)さんは賢くて、台湾を民主化してしまった。民主化したら、アメリカの共和党の人たちだけでなく、民主党の過激な人たちも「台湾はどうするのだ?」と入ってきたので、そこから台湾は安心できるようになりました。それまでは「台湾ってどこ?」というような人たちがたくさんいました。

飯田)それまでは。

兼原)当時はうまくいったのですが、これからですね。中国は大きいので怖いと思います。中国側も、優しくすると逃げていく。だからと言って、叩くと余計に逃げていくので、「困ったな」という感じだと思います。

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