数量政策学者の高橋洋一が8月9日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。自民党・麻生副総裁の台湾訪問について解説した。
自民・麻生副総裁が台湾訪問 ~早速中国が反応
飯田)自民党の麻生副総裁が台湾を訪問し、蔡英文総統とも会談を行いました。台湾周辺への抑止力、安全を守るためにどうするか。フォーラムで演説もしたそうですが、この訪問をどうご覧になりますか?
高橋)意義深いですね。保守系で安倍さんの跡を誰が継ぐかという話をしていたら、麻生さんがしっかりとやってくれているようです。麻生さんのような人が行くと、他の人が行きやすくなります。来年(2024年)の総統選に対する側方支援の形にも見えます。早速中国が反応しているでしょう?
飯田)そうですね。
高橋)中国が反応しているということは、悪いことではないと思います。
飯田)それだけ気になっている。
高橋)「ウェルカム」などと言われたら困ってしまいますよね。
飯田)来年の1月には総統選が行われます。もう半年を切っているのですね。
高橋)「戦わずして勝つ」というのが中国の戦略ですから、総統選に向けていろいろな工作をしているのです。麻生さんがそれに対応するという意味合いもあります。
民進党、国民党、民衆党の三つ巴か
飯田)民進党の候補にもなっている頼清徳(らい・せいとく)副総統とも会談を行い、日台関係の重要性を確認したそうです。
高橋)現政権の方を応援している感じがしますね。
飯田)国民党と、もう1つの野党である民衆党が加わり、三つ巴だという話も出てきています。
高橋)台湾もいろいろと複雑ですよね。
「いざというときには行くぞ」とはっきりしたメッセージを伝えることで相手が出なくなり、抑止力につながる
飯田)麻生さんは台北市で開催された国際フォーラムで講演も行ったそうです。「いざとなったら台湾防衛のために防衛力を使うという明確な意思を相手に伝えることが抑止力になる」、「戦う覚悟が求められている」という発言もありました。
高橋)抑止力とよく言われるのですが、重要なのは「コミットメントと信頼」です。
飯田)コミットメントと信頼。
高橋)コミットメントがないと、抑止力も意味がないのです。コミットメントは「いざというときには行くぞ」とはっきりしたメッセージを伝えることです。メッセージを伝えるから相手が出なくなる。それで平和になるのです。
飯田)相手が怯み、出なくなる。
高橋)そのために、しっかりと持つべきものを持っていないと、メッセージを伝えても意味がありません。「持つべきものを持っておき、メッセージを伝える」というのが抑止力の肝です。そういうことをはっきりと具体的にやっていますね。
トーマス・シェリング氏「やったらやり返すというメッセージをはっきりと出すことによって平和になる」という抑止力の理論
高橋)抑止力について最初に話したのは、2005年にノーベル経済学賞を獲ったトーマス・シェリング氏です。ノーベル経済学賞ものですから、この話をロジックで破るのは難しい。
飯田)どういう理論だったのですか?
高橋)コミットメントが非常に重要で、「コミットメントによって、はっきりとメッセージを送ることで平和になる」という理論です。
飯田)なるほど。
高橋)そういう意味で抑止力は、「やったらやり返す」というメッセージをはっきりと出すことによって平和になる。この理論を打ち破るのは大変です。もしこれを打ち破れたらノーベル経済学賞が獲れますね。
冷戦時、「来たら即時反撃する」というメッセージで軍事衝突することはなかった
飯田)台湾に関して、アメリカはいわゆる「曖昧戦略」を取っており、守るか守らないか明言しない。特に「現状が維持されるときにおいては」という留保が付いていますが、高橋さんがおっしゃった抑止論で考えると、曖昧戦略は不安定要因にもなってくるのですか?
高橋)曖昧で、相手に「もしかすると来ないのではないか」と思わせてしまうと、やる気になってしまう可能性があります。曖昧でも「すごく行くぞ」という可能性もあるので、幅が広いのですけれどね。喫緊に迫っている場合は「来たらこう行きます」と、コミットメントをはっきりした方が平和になるのです。
飯田)最近はバイデン氏が明確にしたものを「いやいや、変わっていない」と国務省筋の方が打ち消すということが続いていましたが、この辺りもそろそろメッセージを出さなければいけないのですか?
高橋)冷戦時代にあったメッセージは「来たら即時反撃する」でした。これはすごくいいメッセージです。それで戦争にならず平和になったので、ノーベル経済学賞まで獲ったのです。
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