日露の専門家が唱える「ロシア崩壊」の可能性

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地政学・戦略学者の奥山真司が8月8日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ロシア崩壊の可能性について解説した。

日露の専門家が唱える「ロシア崩壊」の可能性

2022年2月7日、モスクワでの記者会見に臨むロシアのプーチン大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

サウジアラビアでウクライナ和平に向けた会議が開催

飯田)サウジアラビアでウクライナ和平に向けた会議が開催されました。ロシアによるウクライナ侵略、その後も含めてということになるのでしょうか?

ロシア崩壊の可能性

奥山)ウクライナ関連についてはいろいろな動きがありますが、戦略を考える人間として、考えなければならないシナリオが1つあります。ロシア崩壊の可能性についてです。

飯田)ロシア崩壊。

奥山)表向き「ロシアは強い」と言われています。ウクライナの反攻も受けとめていて、ドンバス北部の方では、逆にロシアが攻め込んでいるという状況もあります。

「ロシア連邦は崩壊に向かっている」と言う専門家が少なくない

奥山)ワグネルの乱がありましたが、実態としては、ロシアの基盤が揺れているのではないかと。ワグネルの乱でプーチン政権の弱さが垣間見えてきた。もしかすると、「逆にロシアは崩壊に向かっているのではないか」と言う人がかなりいるのです。

飯田)ロシアは崩壊に向かっているのではないかと。

奥山)青山学院大学の名誉教授である菊池先生も同じようなことを言っています。ロシアはいま、連邦状態ではないですか。

飯田)ロシア連邦が正式名称ですね。

奥山)ロシア連邦のなかには、独自の民族もいて、国としての機能も議会もあり、首長さんもいるという状況の国が21あります。ロシア側は「23だ」と言っているのですが、ウクライナ側に違法でつくった……。

飯田)ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国という名前の。

奥山)そうです。勝手につくった国があります。その前に存在したものとしては、だいたい21ぐらいある。チェチェン共和国の話などはよく聞きますが、我々が知らないところもあります。ブリヤート共和国やカレリア共和国など。

帝国は大きな戦争が起こると崩壊する

奥山)「ロシアは帝国ではないか」と言っている人がいます。ロシアは帝国として、モスクワ周辺に大きく強いところがあり、そこが他を従えているという状況ではないですか。

飯田)なるほど。

奥山)そういう国は歴史的に、「戦争を起こすと崩壊する」というパターンが多く見られるのです。イギリスもそうでした。大英帝国も第二次世界大戦のときに、国が分かれていってしまった。第二次世界大戦のような大きな戦争があると、システムが揺さぶられて、他の国が独立できてしまう。

飯田)独立運動が起こったインドなど。

奥山)そうです。

かつてのソビエト連邦から出ていったウクライナを取り戻そうと仕掛けたロシア ~帝国は戦争すると崩壊する

奥山)基本的には戦争なのですが、ロシア人の歴史家であるアレクサンドル・エトキントさんが、やはり崩壊すると言っているのです。帝国というものはこれまで、ロシアを除いてすべて崩壊しているそうです。

飯田)すべて崩壊している。

奥山)もれなく崩壊していると。ロシアも実は1991年に1回崩壊しています。

飯田)ソビエト連邦。

奥山)バルト三国などが独立しました。ウクライナもその1つです。ロシアはいま、自分のところから逃げたウクライナを取り戻そうとして仕掛けているということも言えます。

飯田)逃げたウクライナを取り戻そうと。

奥山)ロシアは帝国を維持しているだけでもよかったのですが、プーチン大統領が先を急いで、無理やり帝国を取り戻そうと戦争を仕掛けた。しかし、帝国はそもそも、戦争してしまうと崩壊するのです。まさにその方向に向かっているのではないかと思います。

ロシアが崩壊し、中国が沿海州を取り戻したとき、日本はどう動けばいいのか

奥山)我々はここで、日本周辺で何が起こるのかを考えなくてはいけません。中国は沿海州の辺り、清の時代に獲られたと思っている地域があります。そのロシアの領土を中国が取り返しにいく可能性がある。

飯田)中国はウラジオストクについてもロシア名ではなく、かつての清朝時代の名前で呼び出していますね。

奥山)シベリアなどでは、人口比で言うとロシア人が1人いるところに中国人が10人というような、圧倒的な人口差があります。ここを取り返しにいく場合、中国側にとっては有利な状況です。そのとき、日本はどう動くのか。

飯田)日本海に向けた出口ができてしまう。

奥山)そういうことです。

飯田)いまロシアと北朝鮮は直接、国境を接しています。だから中国は海側の出口がありません。

奥山)そうですよね。そこを中国が獲るとどうなるか。いろいろと「危ないことが起こる可能性がある」ということを、我々はシナリオとして想定していかなくてはいけないのです。

飯田)津軽海峡はそのままでいいのかなど。

奥山)そうです。過激な人は、それを取り返しにいけとか、樺太まで取れなどと言う人もいますが。

飯田)ロシアとの間はそれこそ、樺太・千島交換条約しか領土的なものはないだろうと。

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