習近平氏がG20サミットに「出席しない」ことをアメリカは6月の時点で把握していた

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経済アナリストのジョセフ・クラフトが9月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。習近平氏が欠席することになったG20サミットについて解説した。

習近平氏がG20サミットに「出席しない」ことをアメリカは6月の時点で把握していた

中国の習近平国家主席(ロシア・モスクワ)=2022年12月30日 EPA=時事 写真提供:時事通信

G20サミットに中国の李強首相が出席、習近平氏は欠席へ

中国外務省は9月4日の記者会見で、9月9日からインドで開催される20ヵ国・地域(G20)首脳会議に李強首相が出席すると発表した。これまでG20サミットに出席してきた習近平国家主席は欠席することになった。

飯田)これまでG20サミットには国家主席が出ていたのですが、今回は欠席となりました。それに対して質問が飛んだところ、外務省報道官は「中国は一貫してG20の活動を非常に重視し、積極的に参加してきた。李首相が出席することでG20は団結と協力を強化するだろう」と答えています。

6月の時点で習近平氏がG20に出席しないことを把握していたアメリカ ~米中首脳会談はAPECで行われる予定

クラフト)6月に米国務省の幹部と話したのですが、その時点で既に習近平氏が出席しない可能性は高かったと思います。

飯田)そうなのですか?

クラフト)米中は6月の時点で、11月にサンフランシスコで開かれるアジア太平洋経済協力(APEC)の首脳会議で、バイデン大統領と習近平国家主席の首脳会談を行う交渉を進めていました。そのときに、おそらく中国側から参加しない可能性を示唆されていたのだと思います。

飯田)6月の時点で。

クラフト)バイデン大統領は、表向きは「失望している」と言っているものの、アメリカ側としては想定内だったと思います。アメリカにとっても、アメリカで首脳会談を行う方が都合がいいのです。

飯田)アメリカとしても。

G20では主役になれない習近平氏 ~APECならば主役になれる

クラフト)中国側も、G20に出ると習近平国家主席は「ワン・オブ・ゼム」になってしまい、主役になりにくいです。今回はインドが中心となっていますので。

飯田)今回の議長国はインドですね。

クラフト)そういった意味でも、APECの方が出席する国の数が少ないですし、米中会談ができればより習近平氏が主役になりやすいので、中国側もそちらを選んだのではないでしょうか。

飯田)目立つことができず、G20の方がメリットが少ないということですね。

中国が一方的に新たな領土・領海を表記した新しい地図を発表 ~この行為にアジア諸国から猛反発を受けていることも考慮しての欠席か

クラフト)もう1つあるとしたら、因果関係はわかりませんが、8月28日に中国が一方的に新たな領土・領海を表記した新しい地図を発表しました。これによりインドやフィリピン、マレーシアなどのアジア諸国から猛反発を受けています。

飯田)そうですね。

クラフト)地図を出したことと、G20に出席しないことが関係するかはわかりませんが、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議やG20を前にしたタイミングで、このような行為をするのは理解しがたいですね。「オウンゴール」的なマズイ対応だったのではないかと思います。

飯田)ある意味、中国の領土的な目標を最大限に拡張した形になっており、南シナ海の「九段線」と呼ばれるものを「十段線」に伸ばしています。台湾の東側、ちょうど日台の間に線が引かれている。また、インドと係争しているところも「全部中国のものだ」としてしまっています。

企業誘致をしようとする一方で反スパイ法を改正するなど矛盾した動きが多い中国 ~統括して判断する部分がない

クラフト)中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカの新興5ヵ国(BRICS)首脳会議が先日開かれました。そこではBRICS会合を広げる、あるいはグローバルサウスを取り込もうという中国の戦略がありましたが、それと相反するマイナスな動きなので、どうしてこのようなことをするのか……。企業誘致をしようとする一方で、反スパイ法を改正するなど、最近の中国はバラバラな動きを見せています。

飯田)そうですね。

クラフト)中国は縦割り行政で、それぞれが習近平氏に忖度し、よかれと思って動いているのですが、全体で見るとかなり矛盾しています。経済と安全保障がバラバラに動いているような印象を受けます。

飯田)全体を統括するようなものがないのかも知れませんね。

中国がアジア諸国から猛反発を受けるなか、ASEAN関連会合やG20に出席する岸田総理 ~西側がASEAN諸国やグローバルサウスを取り込むチャンス

クラフト)これはG7、特に日本とアメリカにとっては好都合です。このような中国の動きがあるなか、岸田総理がASEAN関連首脳会議やG20サミットに参加するので、グローバルサウスやASEAN諸国をより西側に取り込みやすくなっています。バイデン大統領は9月10日にベトナムを訪問する予定ですし。

飯田)G20サミット出席後、そのままベトナムを訪問するようですね。

クラフト)G7諸国にとってはチャンスですので、活かしていただきたいと思います。

ASEAN関連首脳会議に関しては岸田総理に任せて、G20首脳会議でインドと組む考えのバイデン大統領

飯田)バイデン大統領は、ASEAN関連首脳会議はスキップすることになりました。代理で副大統領が出席しますが、もったいない気がしますね。

クラフト)行ければ確かにいいのですが、議会が始まりますし、予算の話なども影響しているのではないかと思います。

飯田)スケジュールの問題。

クラフト)アメリカ側からすると、基本的にASEANやアジアに関しては、日本のリーダーシップに期待している部分が大きいのだと思います。そこは岸田総理に任せ、バイデン大統領はG20首脳会議でインドと組むという考えがあるのでしょう。

飯田)岸田総理がASEANで何を発言するのか、注目度が高まりますね。

クラフト)近年、日本の外交におけるリーダーシップが高まっており、評価されています。広島で行われたG7サミットを受け、ASEAN関連首脳会議、G20首脳会議 、9月末にある国連総会などを、岸田総理が外交のリーダーシップを発揮する次のチャンスとして、ぜひ有効に使って欲しいと思います。

処理水に関しても、中国の対応が不当であることを海外にアピールしていく絶好の場 ~日本は「法の支配」を主張してASEANの結束を固め、中国を訴えるべき

飯田)岸田総理も出席するASEAN関連首脳会議は9月5日から始まりますが、南シナ海の紛争防止に向けた行動規範についても議論されるようです。そこへ向けて、中国の「新しい地図」が出てきたとなると、岸田総理も当然ながら何か言わなければなりませんよね。

クラフト)そういう議論を後押しするような中国の「オウンゴール」は理解できませんが、起きた以上はこれを逆手に取り、チャンスとして扱う。ASEAN諸国と一体になり、日本は「法の支配」を主張してASEANの結束を固め、「中国はこのような国なのだ」と訴えるべきです。

飯田)一方的に新たな領土を示すような国。

クラフト)処理水に関しても、中国の対応が不当であることを海外にアピールする絶好の場でもありますので、大いに外交手腕を発揮して欲しいですね。

飯田)岸田総理が常々言ってきた「法の支配」が際立ちますね。

クラフト)そこまでお膳立てしてくれた中国に「ありがとう」と言いたいくらいですね。

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