二松学舎大学国際政治経済学部・准教授の合六強が9月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。9月13日にボストーチヌイ宇宙基地で行われた露朝首脳会談について解説した。

2023年9月13日、ロシア極東アムール州のボストーチヌイ宇宙基地での首脳会談で握手するプーチン大統領（右）と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記（タス＝共同）　写真提供：共同通信社

ロシア・北朝鮮首脳会談、プーチン大統領は軍事協力と連携強化を表明

ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は9月13日、ロシア極東アムール州のボストーチヌイ宇宙基地で会談した。金正恩総書記は対露関係について「最重視し発展させていく」と述べ、新段階に引き上げると強調。プーチン大統領は北朝鮮との軍事技術協力に「展望がある」として、連携強化に意欲を表明した。

飯田）ロシアと北朝鮮が首脳会談を行うこと自体、国連安保理の決議違反ではないかと思うのですが。

ボストーチヌイ宇宙基地で会談が行われた2つの理由　～厚遇するため、ベラルーシのルカシェンコ大統領をここに招いたプーチン大統領

合六）そうですね。今回、ボストーチヌイ宇宙基地という場所が選ばれたことも、驚きを持って見られていたと思います。東方経済フォーラムが開かれたウラジオストクからもかなり遠いですし、また、近くの主要都市であるハバロフスクからもさらに内陸へ行ったところです。なぜ、ここまで行くのかということですが、実はこの宇宙基地に、去年（2022年）戦争が始まった約1ヵ月後、プーチン大統領はベラルーシのルカシェンコ大統領を招いて会談しているのです。

飯田）そうだったのですか。

合六）ルカシェンコ大統領と金正恩氏、ベラルーシと北朝鮮にどんな共通点があるかと言うと、この戦争が始まって以降、一貫してロシアの行動を明確に支持している2ヵ国なのです。

飯田）そうですね。

合六）国連ではロシアに撤退を求める決議が採択されましたが、それに反対した最初の5ヵ国のうちの2ヵ国でもあります。プーチン大統領からすると、一貫して支持してくれているので、厚遇するための場所選びとして、ここを選んだのではないかという考え方が1つあります。

飯田）厚遇するための場所選びとして。

北朝鮮への人工衛星技術に関して「何らかの合意があったのではないか」と西側に匂わせる狙いも

合六）ここ最近、北朝鮮は人工衛星の打ち上げに失敗していて、喉から手が出るほど技術が欲しいと思うのです。ただ、実際に今回の会談のなかでも協力を申し出て、踏み切ったかどうかはまだわかりません。

飯田）実際に協力を申し出たかどうかは。

合六）しかし、宇宙基地という場所を選ぶことによって、我々に「何かしらの合意があるのではないか」と匂わせる。そのために、この場所が選ばれたのではないでしょうか。

砲弾を北朝鮮が提供する代わりに、ロシアが見返りとして、軍事面での技術支援を行うのではないか

飯田）北朝鮮側も、妹の金与正氏の他、軍需工業部長など、多岐にわたる人間を連れて行っており、ただ仲がいいことをアピールするだけではなく、実質が伴うのではないかという指摘もされています。

合六）ウクライナ戦争で不足している砲弾を、北朝鮮がロシアへ提供する代わりに、ロシアは見返りとして、何らかの軍事面での技術支援を行うのではないかと言われています。真相が表に出ることはないと思うので、どこまで具体的な話が進むのかはよくわかりません。

砲弾とミサイル技術や人工衛星技術を供与することが見合っているのか　～ロシアの砲弾不足の深刻度

合六）さらに砲弾の供与と、ミサイル技術や人工衛星技術の供与が見合っているのかどうか。本来であれば、見合っていないような気がします。

飯田）そうですね。

合六）ただ、このような話が出るのは、ロシアが砲弾不足に悩まされていることの象徴でもあると思うので、注視しなければいけないと思います。

今後、ますます安保理での北朝鮮関連の決議は通しにくくなる　～国連の機能不全

合六）さらに気になるのは、既に去年の国連において、北朝鮮関係の制裁強化案に中国とロシアは反対しています。今回のことで、ますます安保理での北朝鮮関連の決議は通しにくくなると思います。

飯田）北朝鮮関係の決議は。

合六）ラブロフ外相が宣言していますが、常にロシア側は拒否権を発動するでしょう。そういう意味では国連の機能不全、特に安保理の機能不全が深刻になっていく可能性があります。

いかにロシア・北朝鮮・中国を一体化させないかが重要

飯田）金正恩氏不在のなかで、北朝鮮は9月13日に短距離ミサイルを撃ちましたが、どういう意図があるのでしょうか？

合六）おそらく射程としては短いミサイルだと思いますので、不在中でも指揮命令系統が機能するかどうかを試したのではないでしょうか。そういう観点から見れば、不在中にミサイルの試射を行うのは、必ずしも驚くべきことではないと思います。

飯田）北朝鮮のミサイル発射についても、国連として何とかしなくてはならないのですが、機能不全になるとなかなか難しいですね。

合六）本来であれば、ロシア・北朝鮮・中国をいかに一体化させないかが重要です。

アメリカ「北朝鮮がロシアに対して砲弾の提供などをすれば、制裁を強める」　～既に制裁を掛けられていてもミサイル開発を着実に強化している北朝鮮に、どこまでそのような脅しが効くのか

飯田）国連が機能不全だとすると、北朝鮮に対する西側の対応も、個々に制裁を掛ける形になっていくのでしょうか？

合六）そうならざるを得ないと思います。アメリカは今回の首脳会談に先立ち、「北朝鮮がロシアに対して砲弾の提供などをすれば、制裁を強める」と言っていますが、既にロシア・北朝鮮は制裁を掛け続けられており、それでも生き延びているわけです。

飯田）そうですよね。

合六）さらに言うと、ミサイル開発に関しても着実に強化されているところを見ると、「どこまでそのような脅しが効くか」という問題が出てくると思います。