経済アナリストのジョセフ・クラフトが10月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。10月17~18日に北京で開催される国際協力サミットフォーラムについて解説した。
「一帯一路」に関する国際協力サミットフォーラム開催へ ~プーチン大統領も出席
中国外務省は10月11日、巨大経済圏構想「一帯一路」に関する国際協力サミットフォーラムを10月17~18日の2日間、北京で開催すると発表した。フォーラムにはロシアのプーチン大統領も出席し、習近平国家主席と会談する予定。
飯田)プーチン大統領は国際刑事裁判所から訴追されていますが、中国へは行けるのですね。
クラフト)中国は加盟していないので問題ありません。プーチン大統領は中国からの支援を引き続き得るため、出席せざるを得ない状況なのだと思います。
一帯一路を提唱してから今年で10年 ~崩れつつある一帯一路をどう仕切り直すのか
クラフト)一帯一路については、イタリアが構想から離脱するなど、定義が少しずつ崩れ始めています。一帯一路に絡んで融資を受けている第三諸国も、過剰な負債を抱えて債務問題を起こすなど、いろいろな問題が起きています。このフォーラムをただの反米フォーラムにするのか、あるいは一帯一路を正当化し、仕切り直しの場としていくのか、中国の出方が注目されます。
飯田)今年(2023年)は、一帯一路の構想が提唱されてから10年の節目なのですね。
クラフト)一時期は盛り上がりましたが、最近は構想自体を疑問視する国が増えてきています。
単なる「プーチン・習近平会談」の場になってしまえば、一帯一路を継続することは難しい
飯田)いわゆるグローバルサウスと呼ばれる国々が参加しているので、中国が今後、それらの国に「どうアプローチするのか」という方向性がわかりますか?
クラフト)最近の中国は、イデオロギーに傾いているところがあります。本来、一帯一路は経済網を設け、そこに参加することによって利益を得るというものだったはずです。
飯田)当初の構想では。
クラフト)最近の中国は経済が低迷しており、そこに期待できません。さらに共産党のイデオロギーにもついていけないため、本来の一帯一路の趣旨自体もぼやけてしまっています。
飯田)なるほど。
クラフト)単なる「プーチン・習近平会談」のような場になってしまうと、一帯一路の継続は難しくなります。
返済能力もないのに貸したため返済されず、中国国内でも問題に
飯田)一帯一路の枠組みがある一方で、AIIBという銀行もつくりました。10年くらい前はその話で盛り上がっていましたが、AIIBも含めて機能しているのでしょうか?
クラフト)機能していますし、AIIBという銀行のモデルを使い、それなりの基準を設けて融資も行われています。問題は中国企業、あるいは中国の地方政府の融資がずさんで、基準がない。不当な高金利で貸したり、返済能力もないのに貸すようなことが起きているのです。返済してもらえないので、中国内部でも問題になっています。
飯田)不良債権化している。
クラフト)借りている方も一帯一路の定義に疑問を持っていますし、貸している方も返してもらえず、債務危機に陥っているのです。本来であれば、今回のフォーラムで一帯一路の存在意義について話し合うべきだと思います。
一帯一路の融資をめぐって西側に再度近付くグローバルサウスの国も
飯田)大量に貸し込んだ上で、担保に取った港などを差し押さえるような方法は「債務の罠」と言われましたが、担保として取ったものも「それほど価値がない」というような状態なのでしょうか?
クラフト)スリランカは破綻してしまい、IMFや西側諸国に救済を求めました。一帯一路の融資をめぐり、また西側にグローバルサウス諸国が近付いている部分があるので、一帯一路が中国の思惑通りに進んでいるとは思えません。
飯田)その辺りはケースバイケース。
クラフト)そうですね。
飯田)スリランカはまさにフランスや日本が「整理しましょう」と、中国に呼び掛けている最中です。
クラフト)日本はODAも出しており、信頼もあります。債務返済問題などで困っている国を、国際機関を通じて手助けする。そういうところでの日本の役割は大きいと思います。
飯田)経済安全保障などという言葉が出て久しいですが、ソフトパワーとしての日本の役割は大きいですか?
クラフト)非常に大きいと思います。日本がリーダーシップを発揮し、一帯一路構想からグローバルサウスを引きつけるチャンスかも知れません。
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