ガザ戦闘再開 バイデン大統領「2国家共存」は米国内向けの発言でしかない

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ジャーナリストの須田慎一郎が12月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。イスラエル・ハマス紛争について解説した。

パレスチナ自治区ガザ南部ラファで、戦闘再開後のイスラエルの空爆により立ち上る煙。=2023年12月1日 AFP=時事 写真提供:時事通信

パレスチナ自治区ガザ南部ラファで、戦闘再開後のイスラエルの空爆により立ち上る煙。=2023年12月1日 AFP=時事 写真提供:時事通信

イスラエル軍の戦闘再開から2日間で200人が死亡

パレスチナ自治区ガザで戦闘を再開したイスラエル軍は、残る人質の解放とイスラム組織ハマスの壊滅を目指すとして、全域で激しい攻撃を続けている。ガザ地区の保健当局は戦闘再開から2日間で200人が死亡、負傷者は600人近くに上ると発表した。

飯田)イスラエル軍の参謀総長は、ガザ南部で作戦を開始し、地上作戦も開始したと発表しました。「北部と同様の戦いを南部でも行う」と強調しています。

須田)国際世論からの反発もあると思いますが、なぜイスラエルがこのように行動するかについては、イスラエル国内の政治情勢を見なければ理解できないと思います。現状、イスラエルの国会議員数は120人だと言われています。イスラエルは小党乱立の状況にあるので、連立政権を組んで61議席以上を獲らないと過半数が得られず、政権が維持できないのです。

連立政権を維持するために極右政党を呼び込み、ガザ制圧に大きな影響を与えてしまった

須田)中道右派の政党である国家団結党が、長らくイスラエルの連立与党に入っていたのですが、それがネタニヤフ首相と仲違いになり、出ていってしまいました。12議席あったものを穴埋めするため、宗教右派・極右政党を呼び込んでしまったという背景があるのです。

飯田)穴埋めのために。

須田)その政党はパレスチナの存在そのものを認めていません。「ヨルダン川西岸もガザも、すべてイスラエルのものだ」と主張しており、それが今回のガザ制圧に大きな影響を与えているのです。

ネタニヤフ政権後、どのような連立与党の枠組みになるのかが今後に影響する

須田)ところが今回、戦時内閣が発足しました。国家団結党が戦時内閣に入ってきたことを受け、バランスを取る必要があり、一時休戦の運びになった。しかし、宗教右派が反発したので戦闘再開となり、今後はこのバランスのなかで進んでいくと考えると、おそらくネタニヤフ首相の政治生命は短期間で途絶えるのだと思います。そのため、次の連立与党がどんな枠組みになるかによって、今後に大きく影響するでしょう。

飯田)国内世論や政治情勢に、戦況も引っ張られていくのですか?

須田)完全に引きずられていますね。

飯田)海外から圧力を受けたとしても、どこまで国内世論に効くかと考えると、非常に難しいですか?

須田)国内世論を考えると、多くの人質が取られたことに対して、解放を求める世論が強まりましたが、戦時内閣ができて国家団結党が入ってくるまでは「人質はどうでもいい、とにかく制圧する」というところに重点が置かれていました。これが問題だったのです。

バイデン大統領の「2国家共存」は米国内世論向けの発言で最終的な着地点が見えない

飯田)「今後どのようなものをつくるか」は、まだ議論になっていない感じですか?

須田)宗教右派がいるところを考えると、ガザばかり注目されていますが、ヨルダン川西岸ではかなりの数の死傷者がパレスチナ側に出ています。なおかつ、入植地が拡大していくなかで、バイデン大統領が言う最終的な着地点の「2国家共存」は見通せない状況です。あれはバイデン大統領の、米国内の世論に向けた発言でしかありません。「仲介役がいない、最終的な着地点が見えない」ということが最も問題だと思います。

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