双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦が12月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。韓国の元徴用工問題をめぐる裁判について解説した。
韓国の元徴用工訴訟、最高裁が日本企業への支払いを命じる
戦時中に強制労働させられたと主張する韓国の元徴用工らが日本製鉄と三菱重工業に損害賠償を求めた裁判で、韓国の最高裁は日本企業の上告を棄却し、原告1人当たり約1100万~1600万円を支払うよう命じた。この問題をめぐる訴訟で最高裁判決が言い渡されるのは約5年ぶり。2018年に別の原告による訴訟で両社に賠償を命じた確定判決は、日韓関係悪化の原因となっている。
飯田)日本の主張は「日韓請求権協定違反ではないか」という方針で一貫しています。
司法にリベラル派を送り込み、政権を攻撃するための判決
吉崎)韓国の政治は私もよくわからないのですが、つくづく「アメリカに似ているな」と思います。保守とリベラルではっきり分かれてしまっている。お互いにお互いのことが嫌いなので、司法がリベラル派の牙城になっており、今回のことも政権攻撃のために行われているのです。そう考えるとわかりやすい。
飯田)政権攻撃のために。
吉崎)尹政権側は「困ったな、またかよ」という感じですよね。韓国は2024年4月に議会の総選挙があります。尹大統領、保守側はまだ少数与党だから、「ここで勝てばやっと自分のやりたいことができる、法律を通せる」という形になるのです。おそらくここが天王山のようになると思います。
飯田)2024年4月に向けて、各々の陣営が打てる手をたくさん打ってくる。
吉崎)任期の長い司法を先に取るというのは、盧武鉉大統領の時代から始まったことですが、これもまたアメリカと構造がそっくりなのです。アメリカもトランプ前大統領が保守派の判事を積極的に送り込んだので、最高裁が少し保守寄りになっています。そういうことを韓国もやっているのだと思います。
国同士で決めた条約は守らなければならない
飯田)日本としては請求権協定で既に終わっている話であり、いまさらお金を出すことはできないという方針です。
吉崎)国と国との関係において、条約は何があっても守らなくてはいけません。おそらくリベラル派からすれば、「1965年の協定は朴正煕大統領(当時)が決めたことであり、そんなもの我々は知らない」という感じだと思います。しかし、日本人は「悪法も法なり」で決まったことは守らなくてはいけないという考え方があるため、国民性的なギャップもあるのでしょう。
政権攻撃を目的とする判決で、日本が標的ではない
飯田)尹政権は「韓国政府傘下の財団が、被告の日本企業に代わって賠償金相当額を支払う」という解決策を既に発表していますが、それも攻撃の的になっています。
吉崎)これは方便ですよね。政治的に丸く収めるという術なのですが、韓国のリベラル派はそもそも政権攻撃を行うのが目的なので、日本が標的ではないと思います。だから韓国人のインバウンドはとても多いですよね。国民が反日なわけではないと思います。政治の対立の関係で巻き添えを食らっている感じです。
飯田)我々は冷静に「内政は韓国内でお願いします」と示す。
吉崎)「国と国との関係は条約に沿っていきましょうよ」ということです。
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