岸田総理の派閥解消は麻生・茂木派に削がれた権力を「獲り返す」ため

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戦略科学者の中川コージが1月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。自民党政治刷新本部で示された「『中間とりまとめ』に向けた論点」について解説した。

自民党役員会に臨む(左から)麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長、高木毅国対委員長=2023年6月12日午後、東京・永田町の党本部 写真提供:産経新聞社

自民党役員会に臨む(左から)麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長、高木毅国対委員長=2023年6月12日午後、東京・永田町の党本部 写真提供:産経新聞社

自民党の政治刷新本部が「『中間とりまとめ』に向けた論点」を提示

自民党は1月22日、派閥の政治資金問題を受けた改革案の骨子を提示した。派閥で政治資金規正法などに違反する行為があった場合、党本部が一定期間の活動休止や解散を要求できる権限を付与する案が入った。いわゆる派閥の解消を訴えたものの、政策集団の名前で存続を容認する内容となった。自民党は1月25日に改革案の中間とりまとめを決定する方針。

飯田)26日に国会が始まるので、その前にとりまとめる方針です。本部立ち上げ前に岸田さんはキレてしまったわけですよね。

中川)意識の高い言葉で言えば、政党ガバナンスを上手くつくっていくというシステム化の話です。でも、全部のちゃぶ台をひっくり返してしまいましたね。

システムが決まっていなくても人心を掴んでいれば権力は発生する

飯田)こういう会議はやるけれども、ということですか?

中川)政治なので、ある意味ではシステムが決まっていなくても、人心を掴んでいれば権力は発生するものです。投票がなくても力が強い中国のような国はあるわけです。権力を持つことにおいて、「人心をどう掌握しているのか」はシステムよりも重要です。

閣僚人事などにおける働きかけや協議の禁止はこれまでの派閥のパワーを削ぐことに

中川)引退したご隠居が会長よりも影響力が強いのは、「親父に訊かないとな」とみんなが言っている状況があるからです。そのために院政が敷かれる。やはり権力の源泉は人心掌握だと思います。そういった意味では、岸田さんは総理・総裁ではあるけれど、権力がなくなっていた。それは岸田総裁自身がいちばん理解していたと思います。そうすると、「こんなものぶち壊す」という考えになりますよね。政治刷新本部では政治資金パーティーを禁止するとともに、閣僚人事などにおける働きかけや協議も禁止する方針です。これで完全にいままでの派閥のパワーは削がれると思います。

飯田)今度は執行部に権力が移っていくと思われていましたが、それすら岸田さんは否定した。

麻生氏・茂木氏への反攻は「支えてくれなかった」から ~権力が削がれたから獲り返しにいった

中川)「システムの問題ではない」と岸田さんはわかっていると思います。これをつくったとしても、人心がどうか、派閥のトップがどうかが重要であって、システムではないのです。そういう政治力学をぶち壊すためには、政治闘争として、歯向かって来る者をなぎ倒すしかない。

飯田)なぎ倒す相手は、いままで支えてきたとされる麻生氏や茂木氏ですよね。

中川)結局、「支えてくれなかったではないか」という思いがあるのでしょうね。

飯田)表向きは支えているように見えたけれど……ということですか?

中川)そちらに権力が移っていたのでしょう。総裁は自分だけれど、おそらく「権力を削がれた」という思いがある。システム論とは別に「誰がどう力関係をつけていたのか」を見るとわかりやすいです。単純に「岸田さんの権力が削がれたので取り返しにいった」という構造です。

破壊した自民党をどう創造していくのか

飯田)岸田さんが総理になったとき、「何をしたいか」と聞かれて「人事をやりたい」と言っていましたが、「その人事すら思うようにできないではないか」ということですか?

中川)人事を落とせば、他の政策も通らなくなります。自民党全体のガバナンスで言うと、ここが流動化したので、今後どうつくり上げていくのか。よく「スクラップ・アンド・ビルド」と言われますが、破壊と創造はセットです。とりあえず破壊はできたけれど、どう創造していくかは未知数になった印象です。若手議員は今後、大変だと思います。

飯田)この先、政策のつくり方も変わってくるのでしょうか? 表向きは部会で揉むようなシステム論があるとは言え、「誰がその原案をつくるのか」という部分は変わるかも知れない。

中川)そうですね。政局と政策について、綺麗な議論では「政策は大事だ」と言われますが、政局が安定してこその政策ですので、安定しなければ何も決まりません。よく「ねじれがあると決まらない」と言われるのと一緒で、根幹になる人事や権限・権力・権威がこれだけ混乱していると、政策はほぼ決まらないですよね。

飯田)霞が関サイドは様子を見るしかないのでしょうか?

中川)それしかないですね。明らかに。

飯田)下手に変なところで肩を持つように見られたら、あとからどうなるかわからないですよね。

外交への影響も

中川)例えば「この政策を進めるなら、この先生はこの分野に明るいから、この話を持って行って」など、霞が関サイドが議員に対してレクに行ったりするわけです。もしくは、議員が全然知らないことであれば「この先生に進めて貰いたい」と開拓するのが、霞が関的な政治の流れをつくる方法だと思います。しかし、現在は権限・権力・権威が流動化してしまい、誰に持って行ってもリスクでしかないという状況だと思うので、霞が関としてもやりにくいでしょうね。

飯田)「そんなに停滞していていいのか?」とも思います。

中川)外交的なことを考えると、2024年は「選挙イヤー」と言われます。台湾総統選は終わりましたが、インドネシアやインド、アメリカ大統領選も控えているなかで、ハラハラする展開ではありますね。

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