外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が1月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日本の経済界代表団と中国・李強首相の会談について解説した。
日本の経済界代表団が中国の李強首相と会談
日中経済協会と経団連、日本商工会議所などによる代表団は1月25日、訪問先の北京市内で中国の李強首相と会談した。経済交流の拡大に向けて改正反スパイ法への懸念などを伝えたが、李氏は具体的な改善策を示さなかった。
飯田)久しぶりの大規模なミッションですね。
宮家)私が北京にいたのは2000年で、20年以上前ですから、当時と比較してもあまり意味がないかも知れませんが、いくつか思うところがあります。まず、中国の要人との会談はつまらないのです。中国側に挨拶して「ご意見を聞きたい」と日本側が言うと、中国側の偉い人が壊れたCDプレイヤーのように、1度スイッチが入ると止まらなくなってしまう。それがいつものパターンで、歴史問題も含めて一気に20分以上喋るのですよ。
飯田)そんなに喋るのですか。
宮家)「もう終わるか」と思ったら、それでも終わらない。それで時間になってしまい、「ありがとうございました」と日本側が帰っていく。これが昔のパターンでした。
コロナ禍の前後で力関係が変わった日中の経済関係
宮家)ところが今回は21世紀で、しかも経済界代表団ですから、日本側にも言いたいことはたくさんあるわけです。特にこの数年はコロナ禍の前後で、日中の力関係が変わりつつあるのではないかと思います。日本側は相当文句を言っているのだと思います。「反スパイ法の運用を透明化しろ」「ビザを早く免除しろ」「原発処理水の話にも真面目に対応しろ」などの要望を出している。昔もやっていたのかも知れませんが、私は「力関係が変わったな」という気がします。
聴く耳は持つが具体的に改善策を実施することはない
宮家)中国側からすると、必ずしもそうはならないとは思いますが、日本の産業界が怒って「中国から撤退だ」という流れになるのが怖いのです。中国経済にとって、日本企業の役割は極めて大きいですからね。だから日本側の話は聞くのだけれど、具体的な改善策は言わない。言えるわけがありません。
飯田)言えない。
宮家)李強さんは習近平さんのナンバー2だけれど、国務院総理は昔の方が権限があったでしょう。いまは圧倒的に「党」が強いですから。日本側が文句を言うようになったこと自体は素晴らしいと思うし、中国がそれに聴く耳を持つのもいいけれど、具体的に改善策が実施されるかと言うと、なかなかそういう状況にはなりません。でも時代はずいぶん変わりましたね。日中関係がいい方向に動けばいいなと思います。
日本からの要求に対して解決策を出す気はない
飯田)ビジネスをやるにしても、反スパイ法で拘束される可能性もある。
宮家)私でも中国へは行きたくありません。私が捕まるかどうかはわからないけれど、「悪いことをしていないから絶対捕まらない」という保証はないのだから。法の適用が不透明なので、透明化されるまでは行きたくないと思いますね。
飯田)ビザの要望もありましたが、具体的な解決策が出てきたわけではない。
宮家)解決策を出す気はまったくないと思います。中国ではすべてが政治であり、習近平さんが決めていますから。昔であれば「国務院」という国家機関が強かったですからね。共産党ではなく国家の組織として、日本で言う内閣に相当するものがあり、国務院総理はその長です。本来であれば、行政を担う人がそれをやるのだけれど、もはや現在はあまり権限がないですよね。
飯田)意思決定が。
宮家)李克強前首相の時代に弱くなっていたけれど、いまは圧倒的に党が優位でしょう。
飯田)李強さんを「執行役員クラスだ」と言う人もいます。
宮家)それも可哀想ですが、実際には、政治が主導権を握る状況がますます強化されていると思います。
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