受験生を“みんな“で応援!『おうえんしナイト』
全国の受験生を応援するために、受験や教育と縁が深い、お笑い芸人・ランパンプスと一緒に様々な情報をWebコンテンツとして発信していく企画です。
受験生を応援するため全国各地を飛び回る『おうえんしナイト』!
今回、お伺いする大学は東京都八王子市にある「多摩美術大学」になります。美大ならではの特徴や、就職先、多摩美術大学ならではの教育方針など、ランパンプスがインタビューしてまいります!
――それでは早速ですが、大学内に入って広報部の阿部かおりさんにお話しを聞きに行きましょう。
小林:まずは多摩美術大学の創立の歴史を教えていただけますか?
阿部:1935年に「多摩帝国美術学校」として創立した、来年で90周年を迎える大学です。当時、日本画、西洋画、彫刻、図案といった専攻を設けていました。図案とは、今でいうデザインのことです。初代学長は、三越のデザイナーをしていた「杉浦非水(すぎうらひすい)」という方で、学生時代日本画家を目指して学び、洋画や欧風図案にも触れたことで、のちに日本の図案、デザイン分野を開拓することにつながった方です。
小林:芸術を商業の方面に向けた方なんですね。
阿部:グラフィックデザイナーの草分け的な存在としてイメージされる方も多いと思います。
寺内:先駆者だ!
小林:多摩美術大学に名前を変更されたのはいつ頃なんですか?
阿部:戦後ですね。前身の帝国美術学校の後、1935年に「多摩帝国美術学校」を創設、その後、1953年に多摩美術大学が設置されました。
小林:ずっと八王子にあるんですか?
阿部:多摩帝国美術学校が世田谷区の上野毛にできたんですけど、今もそこが法人本部になっていて1971年に八王子キャンパスに移転開始して以来、上野毛・八王子の2キャンパス体制です。上野毛で入試をしていた頃は、駅から大学まで受験生が途切れなかったこともあったと聞いています。
小林:学生さんは多いんですか?
阿部:美術の単科大学なんですけど、それでも4000人以上はキャンパスの中にいます。
小林:単科大学っていうのはそれしかないってことですか?
阿部:学部は美術学部の1学部のみですが、学科は全部で15の学科・専攻・コースの領域に分かれています。上野毛キャンパスには統合デザイン学科と、演劇舞踊デザイン学科があって、それ以外の学科・専攻・コースの学生は八王子キャンパスで学びます。
寺内:油画、彫刻、工芸、グラフィックデザイン、いろんな学科がありますね。
阿部:学びの領域は、徐々に増えたり、再編されたりしていきました。最近、名前を変えたのは「建築・環境デザイン学科」という学科で、昨年度までは「環境デザイン学科」という名前だったんです。美術大学ですけれども、従来から建築を学ぶことができました。横浜ベイブリッジは、多摩美の卒業生の大野美代子さんという女性の橋梁デザイナーの方の作品です。
寺内:橋のデザイナーさんがいるんだ!
阿部:卒業生たちがどんなお仕事をしているかを大学案内に載せているのでご覧になってください。
小林:えっ! これらを卒業生たちが作ったんですか? これ見て! Jリーグのロゴマーク!
寺内:JALもだ!
小林:ユニクロも! セブンアンドホールディングスも!
寺内:世の中にあるもの全部が多摩美から生まれてる(笑)。え? ちょっと待って! 非常口のマークを考えた人もいんの? すげえ楽しい!
阿部:ちなみに美大ってどんなイメージですか?
寺内:変わり者。
小林:ベレー帽。
寺内:つまり「変わり者のベレー帽」ですね(笑)。
阿部:そういう人もキャンパスにはいますが、それだけではない側面も見てほしいと思っています。
小林:美大って教養を学んだりもするんですか?
阿部:リベラルアーツという、いわゆる一般教養も必修です。技術を学ぶだけでは、社会の中でクリアできないことがたくさんありますし、自分が表現したいことを言語化する力も必要です。ですので、各学科の専門領域を「縦軸」、一般教養を「横軸」と捉えてリベラルアーツにもすごく力を入れてますし、教職の免許取得にも力を入れています。
小林:美術の先生になるんですね。
阿部:情報デザイン学科では「情報」の教員免許も取得できます。あとは、建築・環境デザイン学科では建築士の受験資格が得られますし、博物館や美術館で展示計画や対象の作品や収蔵物の調査研究などを通じて多くの人に知識や関心を広める学芸員の資格ですね。そもそも美大の人たちが何をするかと言うと「表現で新たな価値を社会に出していく」っていうことなんです。
寺内:あら、かっこいい!
阿部:昨今「不確定で先が見えない社会だ」と言われていますし、変化のスピードが早くなっているのは事実ですけど、100年前の人にも100年後の未来って見えてなかったと思うんです。さらに言えば、明日のご飯のおかずだって分かんないし、いつの世も不確定なんです。でも人はいろんなものを欲しがったり、素敵だなと思ったりします。なぜそれを素敵だと思うのかを考えて、表現することができる人を輩出していきたいと思っています。
寺内:感覚派の人が多いと思っていたんですけど、系統立てた考え方で表現を学ぶんですね。
小林:どういった受験方法があるんですか?
阿部:大きく分けると、一般選抜と特別選抜(推薦)に分かれてます。一般選抜の中の一般方式は国語と英語プラス実技ですね。
小林:実技ってどんなことをするんですか?
阿部:専攻によって違うんですが、鉛筆や木炭で描くデッサン、絵の具を使う色彩、彫刻であれば粘土などですね。総合大学と大きく違うところは油画に入りたいと思ったらそのための受験対策をする必要があることですね。
小林:油画の実技課題が出るんだ。過去問がどんなものなのか教えていただけますか?
寺内:「あなたなりの華厳の滝を書きなさい」みたいなことですか(笑)?
阿部:華厳の滝すらも出てこないです。お笑いの方だったら「大喜利じゃん」っていう突っ込みが入りそうな気がします。
小林:え、みんなこうやってんすか?
寺内:フリップにマジック持ってたら、ただの大喜利だから(笑)!
小林:実技ってそういうことじゃないの?
寺内:声の低いナレーションの方は横にいないのよ(笑)。
阿部:答えを言うと、「1+1=1」について自由に描きなさい。などになります。
寺内:えっ! まじ!?
小林:俺だったらでっかく「2」って描いちゃう(笑)。
寺内:「1+1=1」のあなたなりの答えを油絵で描いてくださいってことですよね?
小林:それは大学ではない! 大学は「2」と答えられる人が行くところです!
阿部:問題見るだけでびっくりしますよね(笑)。どのくらいの時間で、問題を解くと思います?
寺内:共通テストでも、長くても、90分とか120分ですよね?
阿部:答えは6時間です。
寺内:「2」に!?
阿部:だから「2」ではなく「1」ですよ! しばらく何も描かないでキャンバスが真っ白な受験生もいます。
寺内:何を描くかで迷いますよね。いや、めっちゃ面白い!
阿部:共通テストのスコアだけで入学することができる選抜方式もあります。美術大学というと、絵が上手な人だけが入れるというイメージがあるかもしれませんが違うんです。
小林:めっちゃそう思ってました。
阿部:「デザインや表現がすごく好き」ということは前提として必要ですが、自分が持っている論理的な思考で、社会の課題を解決してみたい、クリエイティブをしてみたいという時に、受験の時にはまだ実技の入試対策をしていないこともあります。しかし、今のクリエイティブは、Webだったり、サービスやコミュニケーションの設計だったり、絵を描くこと以外のところにも隠れていて、社会から求められているんです。
寺内:確かにプログラミングとかにもクリエイティブは隠れてそうですね。
阿部:世の中にクリエイティブされてないことは1つもなくて、人が作り出すものは全部クリエイティブなんです。例えば、お笑いライブを作るってなった時に「この地域でやるんだったら、このネタがきっと受けるに違いない」と、お客様に合わせて、出し物を考えるのも、情報をデザインするっていうことに繋がっていくんです。
寺内:僕たち情報デザインしてるんだ! かっこよ!
小林:いや、デザインなんて言葉使っちゃダメ。俺らは漫才師だから(笑)。
寺内:なに喜んでんの? のほほほって笑ってる(笑)。
小林:卒業後の進路はどうなっているんですか?
阿部:好きを仕事にすることができます。入試方法が学科によって全然違うということにも紐付いてくるんですけど、「やりたいことは何か」というのを受験の時に気付いていないと対策ができないんです。目的に応じて自分が何をすればいいのかを18歳の時に気付いている子たちが入ってくるのが美術大学なんです。
寺内:そこは確かに他の大学とは違いますね。
阿部:実際の進路としては、クリエイティブの業界に就職する人が基本的には7~8割になります。
寺内:就職がそんなに多いんだ。美大生は画家になったり、就職しないイメージがありました。
阿部:もちろん作家さんになる人もいます。ただ、今日、私が着ている洋服も卒業生のブランドなんですけど、アニメーション、ゲーム、建築、映像など、最近は外資系コンサルティングファームへも複数名が就職していますし、どんな業界でもクリエイティブが重視されています。
寺内:パンダちゃんがかわいらしいなと思って気になってました(笑)。
阿部:ありがとうございます(笑)。つまり、美大の卒業生が活躍する社会の容器って、実はいっぱいあるんです。
小林:僕の知り合いのデザイナーさんも、就職してからフリーになった方でしたね。
阿部:ファーストキャリアが企業就職という人が数としては多いですね。ただ、学生時代に起業する人や、演劇舞踊などの学生だと事務所に入ってたり、卒業後、カンパニー(芝居の集団)を自分たちで立ち上げたりするなど、主体性を持っている子が多い印象はあります。
小林:どういう学生に来てほしいですか?
阿部:「好きなこと、やってみたいことを勉強したい人」「大学に入ることを目的化してない人」ですね。今、日本に800弱大学があるんですけど、美芸大は1割程度しかないんです。やりたいことが明確な人たちが集まっているので、苦手を克服するのではなく、やりたいことをやってほしいですね。特に、多摩美では絶対楽しんでほしいし、楽しめるだけの施設と環境は揃えているつもりです。
寺内:コンペみたいのものはあるんですか?
阿部:去年やりました。アートやデザインなどの垣根は全くなく、1つだけテーマを決めて、そのテーマに沿うようなものであれば、平面であろうと映像であろうとゲーム作品だろうと構わないというコンペでした。
小林:誰がどう審査するの!
寺内:めちゃくちゃむずいじゃん! 「THE W」ですらくくりがあるのに(笑)。
阿部:多摩美もお笑い以上になったかな(笑)?
寺内:お笑い以上ですよ。だってゲームと油絵を競わせるということですよね? テーマはなんだったんですか?
阿部:テーマは「Re-〇〇〇」です。
寺内:「リサイクル」とか「リボーン」とか「再なんとか」ってことですね。
小林:李忠成とか?
寺内:その「リ」じゃないのよ(笑)。グランプリはなんだったんですか?
阿部:彫刻学科の学生が作った3DCGの映像作品でした。
寺内:彫刻しないんだ!
阿部:数分のアニメーションだったんですけど、自分で絵も作って、ナレーションも入れて、構成もしてっていう作品でしたね。
小林:今後、その人はどうなってっちゃうんだ?
寺内:本当に面白い学校ですね!
小林:最後に、今、頑張っている受験生にメッセージをいただけますか?
阿部:大人たちは勉強を頑張れって言うと思うんですけど、まずは「頑張っていて、偉いぞ」と自分を褒めてあげてほしいです。不安なこと、分からないこともたくさんあると思いますが、未来の自分は今の自分のことを全部、知っているので、今を大事にしてもらえたら大丈夫です。応援してくれる人たちと一緒に、未来に向かって頑張ってもらえたらと願っています。
小林:クリエイティブなアドバイスですね。
寺内:ちなみに武蔵美と多摩美ってライバル関係にあるんですか?
阿部:もともと一つの学校だったんですよ。
小林:え? ピッコロってこと(笑)?
阿部:(笑)。帝国美術学校から生まれ変わるときに別れたんですよ。
小林:そうだったの!?
――それでは学食のイイオ食堂に向かいましょう。本日のメニューは小林さんが「イイオメンツー」で、寺内さんは「カレー」になります。
小林:え? メンツーってなんですか?
阿部:うどんとお蕎麦が両方入っているので「麺ツー」です(笑)。
寺内:2種類の麺ってことだ。なるほど!
阿部:教授が名付け親の、きつねとたぬきの具が一緒に乗っていて、化かし合う「おばけ」というメニューもありますよ。メンツーもおそらく学内の誰かのリクエストメニューだと思います。
小林:教授ってやっぱユニークな方多いですからね(笑)。さて、こっちがうどんで、こっちが蕎麦です。せっかくなので、ダブルでいただきます!
寺内:山菜、ほうれん草、揚げ、卵、めっちゃいろいろ入ってるね。
小林:キノコも入ってて、いや、味は美味いです! でも、これは別々に食べたほうがいい(笑)。蕎麦の香りと、うどんの歯ごたえがどっちもきちゃってるもん。
小林:だけど、蕎麦のあとにうどんが食べられるって思うと楽しいかも。一口ずつ違う味が楽しめるって新しい!
寺内:なるほど、一緒に食べるんじゃなくて交互に食べるのが正解なんだ。それでは私はカレーの大盛りです。
小林:そのラグビーボールみたいのはなんですか?
寺内:「大盛は通常の2倍ですけど食べれますか?」って聞かれて「食べれます」って言ったら、カレーをよそう銀のお玉に2.5倍くらいの飯をよそってました(笑)。さらに、カレーもお玉2杯なみなみだったから、ここまで普通に来れば10秒で来れるのに、2分くらいかかったもん(笑)。まあ、ともかくいただきます!
寺内:うめぇ! 嬉しい! 最高のカレーよ。
寺内:日本国民全員が好きな甘口。しかもジャガイモがでっかい! 野菜がしっかり煮込まれている味がする。カサ増しどころか、底深めにしてるところは昨今のコンビニには見習ってほしい(笑)。
小林:この断面を見て! 沈む前のタイタニック号みたい(笑)。
寺内:普通に食べに行ったご飯屋さんでこれ出されたら笑っちゃうよ(笑)。でも、美味しくてボリュームもすごくて、はい! 「デカ盛リングジャパン」!
小林:そのジェスチャーは良くない!
寺内:ごちそうさまでした!
――クリエイティブな要素がふんだんにあった多摩美術大学でしたがいかがでしたか?
小林:まずは「いつもの逆」って思いました。総合大学だと「こういう方向行きたいんだったらおいで! 一緒に決めよう」みたいなニュアンスが多かったけど「学びたいことを見据えて来てください」だったのが新鮮でしたね。
寺内:あと、武蔵美と多摩美が兄弟だったっていうのが――ゲフっ!
小林:お腹いっぱいなの?
寺内:そうなのよ(笑)。特筆すべきはカレーライスのボリューム!
小林:中型犬ぐらいありましたね(笑)。
寺内:しかも、深皿の下にぎゅうぎゅうに詰めて、店側が少なく見せてきてた。途中、圧縮されすぎてモチみたいになってた(笑)。多摩美生はパワーがつくと思うよ!
寺内:阿部さんが「クリエイティブ」って言葉をたくさん使っていたけど、それが随所に垣間見える大学だったね。めっちゃ楽しかった。
小林:他の学校とは一線を画してたよね。
寺内:めちゃくちゃ画してた! 皆さん、美大に……興味……かなっていう人は――ゲフッ!
小林:お腹いっぱい過ぎだろ(笑)! しゃべってる最中にお腹に血流が行き過ぎて意識が2回飛んでたよ(笑)。
寺内:データが途切れて、音飛びしちゃいました(笑)。クリエイティブなことをしたい方は多摩美に入りましょう!!
次回の『おうえんしナイト』は多摩美術大学の後編としてランパンプスが在学生にインタビューする様子をお届けします。お楽しみに!
<多摩美術大学>
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