写真提供:産経新聞社
大相撲の稀勢の里、また、優勝を逸して、残念ですが横綱昇進も逃しました。
心配したとおりになりました。松鳳山戦の取りこぼしが実に大きかった。
競ってくると日馬富士の根性のほうが上ということでしょうか。
しかし、名古屋場所を12勝3敗の準優勝で「勝ち星を拾った相撲があった。いい相撲もあった。いい経験をした。」と総括。
愛知県体育館を後にした際、青空を見上げて笑みを浮かべるなど、これまでとは違った反応を見せたとのこと。仏頂面が代名詞だったこの人に今場所は笑顔が増えたことがニュースになったのはとてもいいことかもしれません。
皮肉なことに、名古屋場所で優勝を飾ったのは、入門時からともに切磋琢磨して、白鵬とは対照的に、稀勢の里へ密かにエールを送ってきた日馬富士。
「私論」と前置きして、「大関までは努力でなれる。でも、横綱は運命が加わらないと…。」
2場所連続優勝か、それに準ずる成績が必要という横綱昇進の内規がある。何とも曖昧な表現ですが、以前から協会内部では異論を唱える幹部もいたのです。
過去を見ると、
1958年、年間6場所制が施行されてから、30代の力士が幕内優勝を飾った例は、4人。91年初場所・霧島が31歳、00年春場所・貴闘力の32歳、12年夏場所・旭天鵬が37歳、今年初場所・琴奨菊の31歳です。
30歳の稀勢の里は、ここ場所13勝、13勝、12勝と、優勝をしていなくても、横綱にしたらいい、と思っているファンもきっといるはずでしょう。
元横綱・佐田の山の、出羽海理事長が、「12勝でも立派。横綱なら胸を張れる成績だ。そういうこと」。内規のハードルを下げることも示唆していた。以来、現在でも、そうした考えをもつ親方衆は結構います。
そうはいっても、横綱へ昇進するには、現在でいえば、まず二所ノ関審判部長が、臨時理事会招集を八角理事長へ伝え、オッケーが出て議論する。
その上で昇進が適当とされれば、今度は横綱審議委員会へ答申して、そこで最終決定となる手順です。
とはいえ、2代目貴乃花は、横審でノーということに。
審判部長、理事長、横審という3者の足並みがそろわなければなりません。
9月11日に初日を迎える秋場所で、5度目の綱獲りとなる稀勢の里は、優勝が絶対条件でしょう。
30歳といえば、そろそろ現役引退も考える年齢ですが、「まだ伸びると思う。巡業に出て、しっかり体をつくり秋場所へ臨みます」と語っています。笑顔は気持ちまでも前向きにする。笑門来福ということでしょう。
一方、稀勢の里には春巡業で、貴乃花巡業部長が、すり足、しこを徹底指導した。他の部屋の親方から教わるのは相撲界でいうところのご法度ですが、「皆さんが注目している歴史ですから」。貴乃花親方は、サラリと言ってのけました。そして、「もっと伸びる」と稀勢の里が確信するのは、一昨年の初場所で痛めた右足親指がようやく完治。いわゆる「土を噛む」という力士にとって、大事な個所が思い通りに動くようになったからです。
足元が固まり、今度こそ。精進あるのみです。
(原文)青木政司
7月25日(月) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」