日本の歌謡史を変えたザ・フォーク・クルセダーズも今年メジャーデビュー50周年!【GO!GO!ドーナツ盤ハンター】

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昨今のアナログ盤ブームで、改めて注目されているのが歌謡曲のレコード(ドーナツ盤)。
デジタル音源より音に厚みがあり、またCDでは味わえないジャケットの大きさも魅力の一つ。
あえて「当時の盤で聴きたい」と中古盤店を巡りレコードを集めている平成世代も増えているようです。
そんなアナタのためにドーナツ盤ハンター・チャッピー加藤が「ぜひ手元に置きたい一枚」をアーティスト別・ジャンル別にご紹介していきます。

今月、ジュリーが今年デビュー50周年という話をしましたが、日本の歌謡史を変えたザ・フォーク・クルセダーズ(以下フォークル)も、今年メジャーデビュー50周年を迎えます。
フォークルは加藤和彦・北山修(=きたやまおさむ)を中心に、1965年、京都で結成された5人組のアマチュアグループでしたが、67年に解散。その際、記念の自主制作盤に収録した『帰って来たヨッパライ』が深夜放送で話題になり、加藤+北山にはしだのりひこを加えた3人により、1年間の期間限定で1967年にメジャーデビュー。『ヨッパライ』が200万枚を超す大ヒットになった話は有名ですので省略しますが、一つ残念なのは『ヨッパライ』と『悲しくてやりきれない』…あと何があったっけ?という人が増えて来たことです。半世紀も経つと仕方ないのかもしれませんが、他にも名曲がたくさんあるのに、悲しくてやりきれません。
伝統的なフォークソングからノベルティソングまで、幅広いレパートリーを持っていたフォークル。その豊かな音楽性、先進性、ユーモア精神などは、半世紀経った今も決して古くなっていません。活動期間はごくわずかでしたが、彼らのシングルを中古盤店でよく見掛けるのは、それだけ大勢の人に聴かれていた証拠。今回は、ぜひ当時の盤で持っておきたいフォークルの名曲をご紹介していきましょう。

【ビギナー向け】・・・『青年は荒野をめざす』(1968)

青年は荒野をめざす

加藤・北山・はしだの「メジャー版フォークル」は、1968年10月に大阪で行われたさよならコンサートを最後に、約束通り1年で解散。その余韻醒めやらぬ12月にリリースされたのがこの曲で、彼らのラストシングルでもあります。
五木寛之が前年に『平凡パンチ』で連載していた同タイトルの人気小説をモチーフに、五木自身が詞を書き、加藤和彦が作曲。青年が異郷へと旅立つ歌ですが、フォークルにとっても新たな門出を飾る曲となりました。
解散後、加藤はサディスティック・ミカバンド、北山は精神科医、はしだはシューベルツ結成と、解散後三者三様の道を歩みましたが、加藤和彦のボーカルは、当時の彼の心情とシンクロしていたからでしょうか、いま聴いても心にグッと沁みるものがあります。
サトウハチローが書いた『悲しくてやりきれない』、寺山修司が書いた『戦争は知らない』とともに持っておきたい“文学系シングル”で、500~1,000円ぐらいで入手可能です。

【上級者向け】・・・『花のかおりに』(1968)

花のかおりに

フォークルの曲で何がいちばん好きかと問われれば、私は迷いなくこの曲を挙げます。北山作品には、『あの素晴しい愛をもう一度』しかり、『戦争を知らない子供たち』しかり、「花」が重要なキーワードとして出て来るのですが、この曲はまさに花そのものがテーマ。
花の香りに囲まれ、唇を重ねて愛する人と別れる娘。暗い嵐(=戦争)が過ぎ去るのを待っていたが、祈りむなしく、花はしおれて枯れてしまった。愛した人はもういない…。
歌詞だけ読むと悲しい歌ですが、そう聞こえないのは、心に沁みる柔らかなメロディもさることながら、この歌のキーワードである「白い花」が、人間の純粋さであったり、「決して踏みにじれないもの」を象徴しているからじゃないかと思います。花は散ってしまうけれど、再び咲く生命力もまた花の美しさである…聴いていて、そんなことを感じずにはいられません。
北山・加藤コンビがベッツィ&クリスに書き下ろした『白い色は恋人の色』と対をなす傑作で、聴いたことがない方はぜひレコードを入手して聴いてみてください。こちらも500~1,000円程度です。

【その他、押さえておきたい一枚】

『水虫の唄』(「ザ・ズートルビー」名義/1968)

水虫の唄

フォークルが変名で出したノベルティソング。グループ名は山田君のいたグループとは無関係。ニッポン放送・カメ&アンコーコンビもカヴァー。

『コブのない駱駝』(1968)

コブのない駱駝

『悲しくてやりきれない』のB面曲。ダジャレも交えつつ「コブのない駱駝=馬」「立って歩く豚=人間」という風刺の効いた北山の詞が秀逸。

※ きたやまおさむ氏は現在、精神科医の仕事と区別するため、アーティストとしての活動はひらがな名義で行っていますが、フォークル時代の話は当時と同じ漢字表記で統一しました。

今週2/25(土)の『八木亜希子 LOVE & MELODY』(FM93AM1242ニッポン放送 土朝8:30~10:50放送)で、きたやまおさむ氏本人が『あの素晴しい愛をもう一度』『花嫁』の創作秘話を語ってくれます。本稿と関連する話も伺いましたので、お楽しみに!

【チャッピー加藤】1967年生まれ。構成作家。
幼少時に『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴いて以来、歌謡曲にどっぷりハマる。
ドーナツ盤をコツコツ買い集めているうちに、気付けば約5,000枚を収集。
ラジオ番組構成、コラム、DJ等を通じ、昭和歌謡の魅力を伝えるべく活動中。

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