清水久嗣のB.LEAGUEレポート!Bリーグのエンターテイナー!その流儀とは?横浜ビー・コルセアーズ川村卓也選手その②

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男子プロバスケットボールリーグ・Bリーグ。
今回お願いした横浜ビー・コルセアーズの川村卓也選手へのインタビューは30分少々。文字に起こすと約5,000字でした。これまで取材した選手に比べ、その量は圧倒的に多いもの。1を尋ねれば、川村選手自身の言葉で10返ってくる。
インタビュー慣れされているとはいえ、ほとんど淀むことなく過ぎていく時間はとても濃密なものでした。

そんなインタビューの最中、「ちょっと、下げる?」と切り出し、突然近くにいたスタッフに声をかけた川村選手。インタビュー周りで流れていたラジオの音量を下げるように指示をしてくれました。コートの外でも視野を広く、的確に気遣いという名のパスを出す瞬間を味わったような気がします。
実は記録用に声の録音をさせていただいていたので、この一言にとても救われました。

横浜ビー・コルセアーズ@680px (2)

川村選手5(w680)

©B-CORSAIRS/T.Osawa

バスケットボールでは “オフザボールの動きが大切”といわれます。ボールがないところで選手がどう動くかが、ボールを持っている時の動きより何倍も大事だと教える人もいるくらいです。

川村選手は選手としてのそれはもちろんのこと、コートにいる時の動きや表情は常に目立ちます。シュートを決めてクールに振る舞ったと思いきや、審判の判定に抗議するようにコートに寝そべり、ベンチで怒りを露わにしつつ選手を鼓舞し、そしてお客さんのブーイングをあおり、試合に負けても、疲れを見せずに試合後はお客さんと笑顔でハイタッチして…ボールがない所の表情・振る舞いは見ていて飽きることがありません。

そんな姿に魅せられた私は、メジャーリーグのイチロー選手やサッカーの本田選手、競馬の武豊騎手のように、独自の言動や立ち振る舞いが川村選手を彩り、形作っているような気がしました。

川村選手6(w680)

©B-CORSAIRS/T.Osawa

今回のインタビューで、どうしても聞きたかったこと。
それは川村選手が“魅せるアクションをかなり意識しているのではないか”ということ。そんな思いを素直にぶつけてみると…
「そうですね。単にバスケットボールの試合を見に来てもらうだけというのは、僕は次にはつながらないと思っています。 “頑張っているなぁ”とお客さんにチームのみんなが大なり小なりきっかけを与えた結果、“また行こうね”に繋がると思うので。僕はエンターテインメントという部分については相当意識をしているし、その日が僕らのゲームを初めて見るんだったらインパクトを残さないと、“ビーコルって気になるよね”ってならないと思うので。名前やビー・コルセアーズやバスケットボールを知ってもらうためにも、エンターテインメントの部分は大切なのかなって強く意識していますね。」

とはいえ、試合に負けることもあれば、イライラすることも、ケガをすることもあるはず。それでも川村選手は「ネガティブなものと(魅せること)は別物だと思っているので。(アクションが)ふと出る時もあるし、意識している時もあるし。子供やブースターさんと少しでも触れ合ったりすれば“楽しい・来てよかった”に繋がると思うので、今は意識しています。」
これぞ“プロフェッショナル”。いや“エンターテイナー”といったほうがいいのかもしれません。

高校を卒業してプロ入りしたのが12年前。当時は「3年間は必死に上の人達のバスケットのレベルについていくだけで精一杯だった」と語る川村選手ですが、その意識を徐々に変えていったのは08年のリンク栃木ブレックスへの移籍がきっかけだったといいます。
「もともと“目立ちたがり屋”っていう性格もあるのかもしれないです。目立ちたいからプロ選手になって、ただ目立つだけじゃなくて『きっかけを与えたい』と思うようになって、それが『エンターテインメントだ』って気が付いて意識するようになって、徐々にキャリアを積んでいくうちに大切だって気づいていきました。本当の意味でプロチームに所属した時、よりエンターテインメントへの意識が強くなったのは確かです。」

正直、ここまで意識していたとは…私の想像を超えました。
さらに「自分のキャラクターをいろんな選手・方々のきっかけにしてもらえたらいいなと思っているし。高卒から初のプロ入りという行動も、そのひとつだったかもしれない。プロ選手であるということは多くの人に見られて、活動しているわけですから。ブーイングを煽る仕草もそうですけど、皆に気づきやきっかけをふと与えられるような立場だったらいいなと常日頃から思っています。」

実際に川村選手をきっかけに、高卒から入団する選手も出てきました。
“プロフェッショナル”にして“エンターテイナー”でありながら“パイオニア”。
プレイもプレーヤーとしての生き方も有言実行。
話を聞けば聞くほど、実況アナウンサーとして川村選手のことを呼んでみたいニックネームはどんどん増えていきます。

川村選手7(w680)

©B-CORSAIRS/T.Osawa

しかし、川村選手の所属する横浜ビー・コルセアーズは現在中地区の最下位。川村選手も55試合中54試合に出場。うち40試合で2ケタ得点をマークするなど平均13.8得点を挙げるも、今年に入り2度の大型連敗がありチームは失速。全体で見ればB1の残留争い圏内に入っている現状です。ここまでを振り返って…
「シーズンを迎えるにあたり、僕の予想図では勝率5割くらいでプレーオフに行けるか、行けないかを行き来しているはずでした。ケガ人も出て、なかなかチームも機能しなくて苦しい時間帯がありました。ただ僕らだけじゃなくて、見ているお客さんもきっと辛かったと思うし、『また負けちゃったよ』と気落ちしている部分も強いのかなって。本当に申し訳ない気持ちで一杯です。」と声を震わせた川村選手。

「ケガ人も、チームが機能しないのも、何がダメなのかを選手もコーチも全員がもっと理解して改善に向けてやらないと、チームはこれ以上良くならない。経営陣ももっとチーム状況を把握してチームにカツを入れてくれるようなエナジーを出していかないと…チーム内から発していくことで変わっていくと思うし、苦しい中でもやれることやらなきゃいけないことがあると思うので。」と決して言葉を飾らずに現状を分析してくれました。

がけっぷちに立たされているチーム。浮上のために必要なことは?
「期待を裏切らないのが僕らの仕事だと思うし。外で言われている『逆転のビーコル』っていうキャッチフレーズを裏切らないためにも、結果を追い求めて重視していかないといけない時期なんで。白星を取らなきゃいけない状況の中で、もっともっと強い気持ちを持って戦うことが必要だと思っています。」

そんな“気持ち”を川村卓也選手がより前面に出した試合がありました。
4月15日と16日の三遠戦。出場時間は39分59秒、34分58秒。それまでの平均出場時間を10分上回り20点以上をマークしました。
4クォーター計40分で行われるBリーグにおいて、スタミナなどを考慮すれば選手の平均出場時間は25分から29分ほど。特に第1戦は一度も交代することなく、コートに立ち続けたのです。

「アウトサイドにケガ人がいて(オフェンスの)起点がないって言われていて、ジェイソン(#42 ジェイソン・ウォッシュバーン選手)がケガしていてインサイドにも起点がない。だったら僕をアウトサイドの起点にして上手く使ってもらえればもっと形にできる部分があると思っています。そのために僕自身がチーム内からリスペクトを勝ち取らないといけないって意思表示ができた2ゲームでした。残りの試合もしっかり姿勢を見せながら、あとは結果につなげたいです。」

三遠戦こそ連敗したものの、インタビュー後の22日、23日の新潟戦も30分以上コートに立ち続け平均20点をマーク。そしてついに23日、チームは勝利し連敗を10で止めます。
長いトンネルを抜けるブザーが鳴った瞬間、ブースターが涙を流しすその脇でボールを抱きしめ一瞬ホッとした表情を浮かべていた川村卓也選手でした。

川村選手8(w680)

©B-CORSAIRS/T.Osawa

しかし、横浜ビー・コルセアーズはワイルドカード争いの9位。まだ残留プレーオフ争いの圏内におり残り5試合、負けられない状況は変わりません。
大型連休の5月3日(水・祝)には今季ホームの最終戦となる三遠ネオフェニックスとのゲームが行われます。中地区2位の三遠とは今季の対戦成績は2勝5敗です。

この相手について川村選手は「名前は変わりましたけど、僕が最初に属したチーム(川村選手がプロ入りした当時はオーエスジーフェニックス)に変わりありません。チーム関係者や応援してくれていた人にも自分の成長を見せる大切なゲームです。何よりホームで迎える最後の試合。 “終わりよければ全てよし”っていう言葉があるように、皆に良い思いをさせてあげたい、勝ちを一緒に味わってもらいたいって思いが強いです。そこまでの過程も大切ですけど、文体(横浜文化体育館)で迎える最後を良い形で勝ってチーム状況を良くして終わりたいゲームですね。」と古巣への恩返しと勝利を誓っていました。

今回のインタビューを通して川村卓也選手に興味を持っていただけたら幸いです。
しかし、今シーズンは関東地区で見られるのもあとわずか。
最後に川村選手からBリーグを生で見たことのない人へ、これから見に来てくれる人へ、メッセージをいただきました。

「会場に来ていただくきっかけを与えるのは僕らの仕事でもあります。徐々に会場に足を運ぶっていう方も増えているので、バスケットボールがどういう競技なのか知りたい方は是非、国際プールや横浜文化体育館に来てもらいたいです。もちろん勝つ試合を見せられればいいんですけど、勝ち負け以外でもエンターテインメントの部分でチームが色々試行錯誤しながら色んなアクションを起こします。観客と選手も近いですし、色々な楽しみを味わえると思うので…ぜひ細谷将司(#0)を気にかけて見に来てほしいですね(笑)」

最後にかわいい後輩を使ったオチも忘れず、このインタビューで初めて見せてくれた笑顔はチームの兄貴分としての一面でもありました。

川村選手9(w680)

©B-CORSAIRS/T.Osawa

アリーナ2(w680)

泣いても笑っても今季のリーグホーム最終戦。気持ちの入った川村選手をはじめとするビーコルの選手から、何かを感じることは間違いありません。
チームの残留に向け戦う男たちに、熱心なビーコルブースターとともに直接声を届けてみてはいかがでしょうか?

横浜ビー・コルセアーズ vs 三遠ネオフェニックス
開催日:5/3(水・祝)14時~
会場:横浜文化体育館(JR京浜東北線「関内」駅より徒歩5分、横浜市営地下鉄「伊勢佐木長者」駅より徒歩5分)

チケット:https://b-corsairs.com/ticket/
横浜ビー・コルセアーズ:https://b-corsairs.com/
Twitter:https://twitter.com/b_corsairs
Facebook:https://www.facebook.com/YokohamaBcorsairs/

次回は5月の更新予定。川崎ブレイブサンダースのキャプテン・篠山竜青選手にお話を伺います。

前編【清水久嗣のB.LEAGUEレポート!ザ・プロフェッショナルバスケットボールプレイヤー横浜ビー・コルセアーズ川村卓也選手その①】はこちら>

(清水久嗣)

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