FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!①
フィリピン戒厳令から1ヶ月超 イスラム国がミンダナオ島を拠点化
6:29~ニュースやじうま総研!ズバリ言わせて!:コメンテーター佐藤優(作家、元外務省主任分析官)
ドゥルテ氏「ISはフィリピンに居座ろうとする」フィリピン南部のミンダナオ島では、イスラム国系の過激派組織であるISに忠誠を誓う武装集団と、政府軍の間で戦闘が続いています。5月23日にミンダナオ島で始まった戦闘では市民27人、武装勢力側299人、国軍側兵士ら71人が死亡している。
高嶋)フィリピンがおかしなことになっていて、戒厳令を敷いたのが、1ヶ月前。
佐藤)そうです。それでいま、イスラム国系の過激派との政府軍と戦闘が起きていますからね。
高嶋)知らない間に、「ドゥテルテ氏対IS」なんて。こんなことになっているのですか。「ミンダナオ島、戦闘長期化」だとか。
佐藤)そうなのですよ。私もこのニュースが出始めて、6月24日の朝日新聞の特集記事で、びっくりしました。なぜかというと、ドゥテルテが去年の11月14日、こんなことを言っています。「中東に行ったテロリストたちがさまよいはじめ、家に戻ってきたらどうなるか。私たちは備えておかなければならない。人権問題、という言葉が通じる相手ではない」と。去年の12月22日では「中東に足場を無くしたら、すぐにIS(過激派組織イスラム国)は、イスラム教徒の多い、インドネシア、マレーシア、ブルネイ、そしてフィリピンに王国を造って、居座ろうとするだろう」、それから今年の3月19日には「テロ組織も麻薬を資金源にしようとしている。ISは過激派組織アブ・サヤフ幹部の、イスニロン・ハピロン容疑者を支部リーダーと認めた。巻き込まれるときまで待つことなく、覚醒剤を絶たなければならない」……こんなことを言っているのです。ドゥテルテは全部分かっていた。
ミンダナオ島は病気でたとえると「ステージ3~4」の深刻な状態佐藤)それで、19日から、インドネシア、フィリピン、マレーシアの3国が、ミンダナオ島の北の方で共同警備を始めたのです。というのは、「入ってこないと同時に、出て行かない」、つまり、ミンダナオ島は拠点化してしまったのです。だから、病気で言うと、転移を、火事で言うなら延焼を抑えると。こういう段階まで来ていて。これはステージ3から4の間くらいに来ている、こういう深刻な状況だというのが明らかになっているのです。
高嶋)麻薬関係の悪人を刑務所に入れて、人間が二重、三重に重なったりしていて。みんなが麻薬や密売をやるものだから。若いのが全部監獄に入れられて、ISがどんどん入ってきてしまった、みたいな。そういう図式でしょうか?
佐藤)まさにそうです。ドゥテルテが大統領になる前、ミンダナオの最大都市のダバオで市長をやっていたころには、入りそうになったらすぐに殺していたのですよ。初動で感染を予防していた。それが、今度は大統領になってしまったので、ダバオも地方都市に過ぎないので、そこまで関心が回らない。しかし、ドゥテルテ自身は「マズいぞ、これは、起きているぞ」と言っているのだけど、1ヶ月くらい前にはもう手遅れの状態になっていた、ということなのですね。
高嶋)ということは、「モスル奪還を本格的に始めていて、ISはもうダメかもしれない」という話もありますが、だけどそんなことは先刻承知の上で、ISけっこう前から手を打っていた、と。
ISにとって麻薬もあるミンダナオは居心地がよい佐藤)「とりあえず、どこかに逃げられないか? このままでは殺されてしまう。大使館に逃げてみよう。そうだ、ミンダナオに逃げてみるか……ミンダナオは居心地が良いな。しかも覚醒剤と麻薬で商売をすれば、シノギになるから金も入ってくる。法を破るのが我々の仕事だ」、こんな感じの連中でしょう? そうしたら、覚醒剤や麻薬の売人たちも、「いい仲間ができたな。これで俺たちのマーケットも中東まで広がって、世界規模だな」みたいな、こんな感じになってしまっている。
高嶋)ドゥテルテさんも麻薬撲滅をしている間は国民に反抗の声で迎えられていましたが、こういうのが入ってきてしまうと、どう手当していいのか分からないですね。
日本にも危機が迫っている。もはや他人事ではない現状佐藤)これは、ドゥテルテさんのやり方では、皆殺しでしょうね。これから、ミンダナオでは深刻なことが起こると思います。すごい戦闘が起きると同時に、たとえば空爆などが本格化して、「国際人権基準ではどうだろう?」となる。フィリピンは民主主義国ですから、国論が割れる可能性がありますね。
高嶋)日本への影響はどうですか?
佐藤)すぐそこまで来ている、とすると、1億2,700万人いる中には、「イスラム国、いいじゃないか」とか、あるいは最近の若い人には、パンクの一種みたいな感じで、「イスラム国って、カッコいいんじゃない?」というようなところから遊び半分で加入して、途中から足抜けできなくなる、と。昔の学生運動の過激な運動と同じで、ロックの延長線上くらいの感覚でデモに行っている内に、過激派の変なところに足を踏み入れてしまい、内ゲバに関与したら、もう一生抜けられない、46年間逃げ続けなければいけない、みたいなことになるわけです。だからそういったことが起きるのでは、という手前まで日本は来ています。
高嶋)もはや対岸の火事ではなく、隣が燃えているような感じですね。