女性・外国人を惹きつける“宿坊” その魅力と積極的ビジネス展開

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春の旅行シーズンを間近に控え、どこへ行こうかと計画を立てている方も多いのではないでしょうか。今回は、そんな方にヒントになるかもしれない話を。

このところ、お寺や神社に泊まれる「宿坊」が、かつてないほど多くの人に利用されるようになってきているのをご存知でしょうか。宿坊とは・・・お寺や神社に併設されている宿泊施設のこと。特徴としては、「朝のお勤め」「座禅」「写経」など、通常の宿ではできない体験ができる。また多くの場合、「精進料理」が食べられて、これが意外においしい。そんな普通の旅とはちょっと違う点が受けているのです。宿泊費も、2食付いて、1万円弱から2万円の間が多い。

 一般社団法人 全国寺社観光協会

TEMPLE & SHRINE TOURISM. | 一般社団法人全国寺社観光協会HPより

では、その「宿坊」とはどこにあるのか? 宿泊が可能なお寺や神社は全国各地に現在、300近く。古くから参詣が盛んな和歌山県の高野山、長野県の善光寺、修験道で知られる山形県の出羽三山、東京都の御岳山(みたけさん)、各宗派が集まる京都。これらの場所には数多くの宿坊があります。それから、比叡山延暦寺や伊勢神宮など、有名な寺社にも併設の宿坊があります。

じゃ、なぜ「宿坊」がウケているのか? お坊さんのバラエティ番組などがあるほど、最近はお寺や神社が身近な存在になっているのは知られるところ。また女性の間で「パワースポット参り」や「御朱印帳」がごく一般的に生活に根差すようになっていますが、お参りも、御朱印集めも、お寺・神社の“外側”で行われるもの。

女性たちの好奇心は、「外側だけじゃなくて、もっと内部にまで入り込んで、いろいろ体験したい」という方向に向き、それが宿泊体験、つまり宿坊の利用となっていっているわけです。

こうした好奇心は外国人も同様です。特に欧米系外国人は・・・「せっかく日本に来るなら、立派な寺や神社の外観だけではなく、内部で、生きている宗教の場を体験したい」。宿坊だったら、お坊さんが宗教と対峙する場が見られる。特に外国人の宿坊人気は、観光の未来を左右しています。

世界遺産の石見銀山、平泉、富岡製糸場の観光客が減少傾向にある中、おなじく世界遺産の高野山だけは、統計を取り始めてから、過去最高の観光客を年々更新。空海が開いたという高野山にはホテルは皆無。泊まる場所は52か所の宿坊しかないのですが、その宿泊客は前年比5割増し、というほど激増しています。この宿坊人気が、高野山の観光客増加を支えているのです。

一般社団法人 全国寺社観光協会

TEMPLE & SHRINE TOURISM. | 一般社団法人全国寺社観光協会HPより

こうした宿坊の観光メリットに気が付いて、宿坊ビジネスなる動きがみられるようになってきています。寺社が多い大阪に本拠地を置く、「全国寺社観光協会」。お寺への関心を高めてもらうチャンスだと、新たに、宿坊型ホテルを去年春オープンさせました。

この宿坊ホテル、名前を「和空下寺町(わくうしたでらまち)」と言いまして、場所は大阪のど真ん中の天王寺(てんのうじ)。ここは、秀吉から家康の時代に、寺を一箇所に寄せた寺町で、80の寺々がずらっと並ぶ、全国でも珍しいところ。東京の谷中がもう少し大規模になったような場所。この一角に、ハウスメーカーの積水ハウスに設計・施工を頼んで、3階建てのピカピカの宿坊を建てました。

部屋は和風で畳敷きなんですが、置いてあるのは和風ベッド。館内着は作務衣! スリッパは下駄型! やはり、こだわっているのは「和」です。この宿坊ホテルでは、近隣のお寺さんが僧侶が出向いてきて、説教をしたり、「写経」や「座禅」の体験もできるようになっています。

特に人気なのは・・・この宿坊ホテルの近くにある、大阪人ならだれでも知っているお寺の愛染堂(あいぜんどう)。“愛染(あいぜん)さん”は縁結びの仏様ということで、ピンクの筆ペンで仏様をなぞる『写仏(しゃぶつ)』の体験がとても人気なんだそうです。

一般社団法人 全国寺社観光協会

TEMPLE & SHRINE TOURISM. | 一般社団法人全国寺社観光協会HPより

大阪のど真ん中にある、ということで、夜の街に出かけたければ遊びに行っても、誰もとがめない。ビジネスマンが出張で利用するというパターンも非常に多い。もちろん、異文化体験で外国人の利用も着実宿坊が新たなインバウンドの形を示したということで、来年春、第2弾として、今度は奈良県の法隆寺の参道に2軒目の宿坊型ホテルのオープンが決定しています。

なぜ奈良か? 寺が多い奈良県は、言うまでもなく全国有数の観光地。ところが、観光客数が多いわりにホテルがとても少ない。よって、日帰り率が高いという汚名で名高く、地元の悩みの種だった。そこで、この宿坊型ホテルでなんとか夜もとどまってもらおう、という奈良の地域たっての願いが実現するのです。

宿坊を活用した観光に目を付けた「全国寺社観光協会」は、ほかにも、こんな宿坊の活用法を展開するのですが、今年、大きな話題になるかもしれません。それは・・・この6月から民泊新法が施行されますが、新たな法律の下で、『申請すれば、民泊OK』という前提を踏まえておいていただいて・・・

実は「寺」という場所は、やたら広い空間がある。ですから、いままで宿坊という宿泊施設をもっていなかったお寺でも、登録すれば、宿として泊まってもらうことができる。そこで今、「テラハク」というサイトを立ち上げて、お寺に格安で泊まってもらう準備が着々と進んでいます。たとえば、都会のど真ん中にあるお寺や、あの観光地のお寺など、これまで泊まれなかったところがスペースを貸す可能性が広がっています。

いま全国にある寺の数は、コンビニより多い7万以上。その寺が宿泊可能になれば、ホテルを増やさなくとも、増え続けるインバウンド対策にもなるのではないかともいわれているのです。

3月6日(火)高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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