行ってみチャイナ! 関東各地にニュー中華街誕生 その背景とは?!
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まもなく、中国のお正月=春節ですが・・・(今年は2月15日~2月21日)日本三大中華街と言えば、横浜・神戸・長崎。これらはご存知の通り、江戸幕末に開港された港町である横浜,神戸,長崎に形成された、歴史ある「チャイナタウン」。中国料理店を中心に,中国の民芸品,食品、お菓子,中国茶などの店が軒を連ね、行くとすぐに“中国っぽいね!”という気分になる、エキゾチックな中国世界の観光地です。
では今、新たな中華街=ニュー中華街が出来ているのはご存知でしょうか? まずは、池袋。2000年ごろから、ポツポツと中国料理店が増え始め、2016年現在で70店舗。中国系銀行や、中国食品スーパー,中国書店,ネットカフェ,旅行社などを集中していて、これらを含めると中国系の店や企業が300店とも400店とも言われています。
まずは場所から説明しますと・・・池袋というと、“『西武』だけどあるのは東口”、“『東武』だけどあるのは西口”と誰もが一度は口にしたことがあるようなネタで有名な、東口と西口はご存知でしょう。その東口の横に「北口」というのがありまして、ここを出ると、池袋ニュー中華街が広がっているのです。
とはいえ、横浜の中華街とは全く違う。ここには中華街の入り口を示す門もなければ、関帝廟もない。ニュー中華街の池袋では、中国料理店がズラリと並んでいるのではなく、日本の居酒屋に挟まれながら、あっちにもこっちにも中国料理の看板が点在している、というような感じです。それが100軒近くも!
あるのは料理屋や中国雑貨店ばかりではありません。北口を出たところで、何人かの中国人が立っていて、フリーペーパーの新聞を配っています。なんとこの池袋には、中国系新聞社も出来ているのです。
池袋には中国人経営者が店舗やオフィスを構える雑居ビルが数多くあって、内部は中国一色。中国食品スーパー,中国書店,旅行代理店、不動産仲介店、美容院、保育園、自動車学校、ネットカフェが一緒くたになっている。池袋の中華街は中国人の日常生活を支える街になっているのです。つまり、日本人用の“観光中華街”ではない。
そこで沸き起こる疑問が、なぜ池袋がニュー中華街となったのか? 日本に定着している古くからいる中国人を「老華僑(ろうかきょう)」と呼ぶのですが、中国が開放政策に転換した70年代の改革以降に日本にやってきた世代は「新華僑(しんかきょう)」と言われます。この新華僑は、日本語学校が多くあって家賃も安かった池袋周辺に住み着いた。この暮らしの場であり、情報集積地だった池袋北口で、中国人たちは商売をするようになり、それが拡大していったのです。
池袋が、横浜などの既存の中華街と大きく違う点があります。中国から渡ってきた老華僑は、長い歴史の中で,日本社会と交流しながら3大中華街に『観光地』という形を作り上げた。しかし、ここがポイントなのですが、世界の中華街の形成方法という視点から見ると、大前提として、日本の状況が特殊なのです。
チャイナタウンは世界中にありますが、観光地になっているのはほぼ日本だけ。多くは、現地人ではなく、中国人のため華僑のための情報集積地なのです。中国人のための料理店であり、食料品店であり、企業ビルなのです。池袋のニュー中華街の方が世界の中華街の在り方。観光地を作るために商売をしているのではなく、中国人のために店をやっている。
ですから、中国料理店の味は、横浜中華街と全然違う。中華街はやはり日本人向けで、私たちも慣れ親しんだ味という感じがしますが、池袋の中華は、中国人向け。八角などの香辛料もたっぷりだし、辛い物は辛くて容赦がない。しかも、四川、広東、上海、東北など、数えきれないほどいろんな地域の本場の料理となっている。ちなみに、食べてみるとこれが旨い。この本格派中華にハマって通っている日本人もたくさんいて、店員も、達者でありませんがだいたい日本語が出来ます。昼は近隣の日本人サラリーマンがランチで大にぎわい。夜は、日本人もいますが、日本に住む中国人が圧倒的に多い。
しかし・・・もともと池袋北口一帯には何があったかと言えば、昔ながらの商店街。いまも、地元の商店や日本の居酒屋などもたくさんあって、中国系の店と共存しているような状態です。あとから中国系の店や企業が点在していったわけですから、地元の商店街と軋轢が気になるところ。商店街に協力的な中国人店主もいれば、そうではない人もいる。その点はまだ課題なのですが、空き店舗が減って、にぎわっていることは間違いない状況です。
ニュー中華街は、池袋だけではありません。ここ数年で中華街が誕生しているのは、JR京浜東北線沿い、埼玉県の西川口。なぜ西川口に? 以前は、西川口駅周辺がどうだったか、知っている人なら知っているのですが・・・違法の風俗店が跋扈(ばっこ)していた。ところが2000年代後半、警察から軒並み摘発された。そして空き店舗ばかりになった。そこへ入ったのが・・・都内よりも家賃が安くて、都心へのアクセスもいいこのエリアに住んでいた、川口市の人口の3%を占める中国人だったのです。
今では、西川口の駅一帯に中国料理店が30店舗。かつての風俗の名残り「めちゃイケ学園」などという看板が裏返ったところに、中国料理がズラリ。看板には、中国の漢字=簡体字が並んで、読めない文字や意味がてんでわからないメニューが並びます。中には、料理の値段が元で書かれていることもあります。
料理の内容も、中国人相手ということで、日本人向けのアレンジ一切なし。それが旨い、と日本人でも本物の中国料理を好む人を惹きつけている一面もあります。例えば、中国では多く食べられている「ラムの肉団子」。四川料理の「揚げカイコ」。(昆虫の蚕)もち米が入った「上海流シュウマイ」。さらには、中国国内で400店舗を展開する「アヒルの首の肉」を売る店の日本第一号店が西川口に出店。連日中国人で大にぎわい。
料理店だけではなくて、不動産屋さん、カラオケ、ネットカフェもあります。池袋よりは規模が小さいですが、まさにニュー中華街であることは間違いありません。駅前が寂しい限りだったところ、中国料理店がいろいろと入ったおかげでにぎわいが戻ってきたと地元も好意的。古くからある日本人の文具店でも、中国人向けのハンコ「李」とか「謝」などが売れると喜んでいるそうです。
他にも、「川崎」「木更津」など、中華料理店を始めとした中国系の店が増える傾向にある街がいくつかあります。川崎の場合は、空き店舗に、居抜き(いぬき=前の店舗を改造して使う)で激安中華店が入るというパターンがあちこちに見られます。木更津は、羽田と成田の中間点ということで、中国人旅行者からのニーズがあるという背景。最後に、中国人の新華僑と契約を斡旋している日本人の不動産屋さんがこんなことを言っていました。
「日本人の大家さんは、中国人を嫌う傾向にある。しかし、中国人店主と数々契約してきて思うのは、商売にガッツがある、意気込みが日本人より強いのは中国人。もともと貧しい生まれで、日本に来てからも差別の対象にあって負けずに生き抜いている人には頭が下がる。賃料の支払いも滅多に滞ることがない。まったく問題が起きないわけではないが、大家さんにもその点を考えてもらいたい」。
ガッツにほれ込んで中国人に店を貸す日本人オーナーも増えているからこそ、ニュー中華街が出来上がっている、ということのようです。
1月30日(火)高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より
高嶋ひでたけのあさラジ!
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