現在公開中のアニメ映画『ドラえもん のび太の宝島』。星野源さん歌うところのエンディングテーマ「ドラえもん」もヒット中ですが…今日は、変わらぬ人気の「ドラえもん」をはじめとする、マンガのお話です。
毎年、新作が公開されている「ドラえもん」の長編アニメ映画シリーズ。今回で、実に、通算「第38作目」なのだそうです。で、映画の「もと」となる、漫画作品のほうも、ずーっと、発表され続けています。
最近の作品の中では、シリーズ通算第35作『のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)』(2015年公開)が「名」作との誉れ高く、映画の「もと」となった漫画作品のほうもすこぶる評判がいいんです。さてこのようにすっかり「恒例行事」になっているせいか、意外と気づかないことなんですが…よく、考えてみてください。何か、おかしいことに気づきませんか?…そうなんです。「ドラえもん」の生みの親、漫画家の藤子・F・不二雄先生は、今から22年前の1996年、すでに鬼籍に入られているんです! それなのになぜ、新作の「ドラえもん」がいまも発表され続けているのでしょうか?
そう思ってよーく、コミックスの表紙を見てみると…大きくデカデカと「原作 藤子・F・不二雄」と書かれているその横に、小さく「まんが むぎわら しんたろう」と書かれてあることに気が付きます。
そう…この漫画は、亡き藤子・F・不二雄先生と寸分の違いもなくそっくりの絵が描ける「むぎわら しんたろう」さんという方が描いた、完全新作の「ドラえもん」だったんです!
この「むぎわら しんたろう」さんという方は、もともと藤子先生のアシスタントでした。で、藤子先生の絵をマネて描いているうちに、本家と寸分たがわぬドラえもんが描けるようになってしまったんです。
マンガのタッチというものは千差万別でして、ひとつとして同じものはないといわれています。いくらタッチをマネようが見る人が見ると「全然違う」と即座に見極めがつくのだそうですよ。そんな中、この「新作ドラえもん」を描く「むぎわら しんたろう」さんだけは、例外中の例外! これほど本家そっくりの絵を描ける漫画家は二度と出てこないだろう…と言われてきたんです。
さぁ、ところが… 去年あたりからこの常識が変わり、潮目が変わってきました。なんと、いま、「亡き大物漫画家」とソックリの絵を描ける「若い漫画家」が次々と出現し始めているんです!
こうした漫画家のことをファンは、敬愛の念を込めて「イタコ漫画家」と呼ぶそうですが…彼らはマニア向けの同人誌に作品を描いているわけではありません。なんと、亡くなった大物漫画家のご遺族の了解を得たうえで、「超メジャー出版社の雑誌」に、堂々と、「続編」や「新作」を発表しているんです!
たとえば…「キャプテン」、そしてその後日談「プレイボール」という、少年野球漫画の名作があります。これらは70年代、「週刊少年ジャンプ」「月刊少年ジャンプ」(集英社)で発表された漫画でして、作者は「ちばあきお」先生。人気の絶頂にあった1984年、自ら命を絶ちました…。ですから二度と、ちばあきお先生の新作は見ることができなくなってしまったわけです…。
ところが、ところが…去年、集英社の漫画雑誌「グランドジャンプ」が、2ページブチ抜き、驚きの広告を打ちまして、全国の漫画ファンの度肝を抜いたんです!
広告にいわく…
「『キャプテン』『プレイボール』後の、新たな伝説!」
「目指せ、甲子園!!」「奇跡の続編、開幕!」
「新連載!」「プレイボール2(ツー)」!
…そうなんです。実に約40年ぶりに、名作漫画「プレイボール」と絵柄はソックリそのまま…しかも「完全なる新作書下ろしの続編」が、ご遺族の了解を得て、お目見えしたんです!
この「奇跡」を実現させたのは「コージィ城倉(じょうくら)」先生という漫画家さん。これまでも何本ものヒット作を出してきた方なんですが…アマチュア時代からちばあきお先生の大ファンで、ソックリの絵が描けたそうなんです。そこで火中の栗を拾うといいますか、まさに勇を鼓して「プレイボール2」の新連載に踏み切った… というワケなんです!
…シロウト目線ではありますが、あまりの絵のソックリぶりに驚く他はありません。しかも、ストーリーのほうももとの漫画が発表された時代性にキッチリ合わせてあります。「プレイボール2」では、主人公の谷口タカオが「サウスポー」を歌うピンクレディーをテレビで見て「左利きのピッチャーの重要性に気付く…」という場面が出てくるんです!(かつてのファンは、もう、「コレだよ、コレ!」とばかり、ヤンヤの大喝采です。)
こうした「イタコ漫画家」という流れは、とどまるところを知りません。「漫画の神様」手塚治虫先生は、1989年、鬼籍に入りました。手塚ファンは皆「もう、ブラックジャックは、読めないんだな…」と、涙したものです。ところが、あれから約30年。彗星のごとく、手塚先生の「イタコ漫画家」が現れたんです!
その名を「つのがい」さん。年齢が20代というだけで、性別や詳しいプロフィールは非公開です。この方、そもそも手塚先生ソックリのパロディマンガを自分のSNSで発表していました。そうしましたら一昨年、手塚プロダクションの目に止まりまして、ヘッドハンティングされた! で、手塚プロダクションの公式イラストを担当するようになったんです! そして… ブラックジャックのパロディ漫画「#こんなブラックジャックはイヤだ」のコミックスをご遺族公認のもと、発表する運びとなったんです!(※コミックスの帯は手塚先生の娘さん、手塚るみ子さんが担当。「(著作権の)賠償金? そうですね、身体で払ってもらいましょか!」というユーモアあふれる帯となっています。)
漫画を描く技術の進歩。さらにSNSによって、かつては表に出ることがなかった技が人の目に触れるようになった…こうして誰もがおどろく「イタコ漫画家」が次々と現れるようになったんです。かつての名作に新たな息吹をもたらす、この動き。漫画の世界に革命が起こった… とも言われています!
3月14日(水)高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より
高嶋ひでたけのあさラジ!
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