奥深い『三丁目の夕日』の世界… 西岸良平作品に見る“マンガのジャーナリズム魂”

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2005年の大ヒット映画『ALWAYS ~三丁目の夕日~』。 この作品は、西岸良平さんという、大ベテランの漫画家の先生が原作者なんです。

西岸先生は、70歳の今も、『ビッグコミック・オリジナル』という青年漫画誌で、『夕焼けの詩~三丁目の夕日~』を連載されていますが…今日は、私が敬愛してやまない、この西岸良平先生という存在を通しまして、「マンガとジャーナリズム」というテーマで、ちょっと語らせていただきたいと思います。

三丁目の夕日 夕焼けの詩

三丁目の夕日 夕焼けの詩64(小学館HPより)

絵柄は実に牧歌的、のどかで優しい感じ…キャラクターの絵を少しでも見れば、誰もが「あぁ、あのタッチね!」と、膝を打つと思います。かくもホンワカとした、ホッとするような優しい絵柄。

そして、映画で火が付いた「昭和30年代ブーム」。これらのイメージから、西岸良平といえば、ノスタルジーの作家と思われがちです。でも… ハッキリと断言しましょう。西岸良平は、断じて、単なるノスタルジーの作家じゃないんです。そして、西岸良平のマンガこそは、「マンガにおけるジャーナリスム」を語るとき、けして外すことができない恰好のサンプルなんです。

西岸良平作品の本質とは、奈辺にあるのか。実際に発表された作品を例にとって説明しましょう。『夕焼けの詩 レモンティーのみた夢』単行本第2巻(1975)に、今にも通じるような社会の矛盾を鋭く突いた短編作品が収められています。これが、恐るべき大傑作であり、西岸先生が描きたかった世界を象徴しているんです。

三丁目の夕日 夕焼けの詩 2

第2巻「レモンティーのみた夢」。副題からは想像もつかないような、恐ろしい話が入っている…(三丁目の夕日 夕焼けの詩 2 | 小学館HPより)

この短編作品のさわりを紹介いたしますと…

■主人公は、火星旅行へ宇宙飛行に行ってきたばかりの宇宙飛行士。だが、この火星着陸の衛星生中継シーンは、「テレビのセット」、つまり「ヤラセ」だった…。

■義憤にかられた主人公は、このことを発表しようとするが、政府の秘密機関に追われることに…。

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注目して欲しいのはこの先見性。「月着陸がセットだった」という同様なストーリーのハリウッド映画『カプリコン1(ワン)』(1977年公開)よりもはるかに早く、はるかにキレがいいと思います。

さらに、「仮想現実」「マスコミの怖さ」など、今でも通じるテーマを飛び切りの語り口で見せてくれる…。「ときの権力への疑問」は、さまざまなジャーナリズムに通底するものだということを、この作品に教えてもらったとさえ思っています。このお話には、まさに慄然とするようなラストが待っています。

未読の読者のために、これ以上の説明は避けますが… ぜひ皆さんにも、さまざまな西岸良平作品に触れてほしいと思います。単なるホンワカした作品だと思ったら、みごとな背負い投げを喰らわされますよ。これぞ、「ジャーナリズム」です。

11月22日(水)鈴木哲夫のあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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