「そこに山があるからだ」の本来の意味は? 誤解されて伝わっている名言・格言

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晩秋、本に親しむ季節。

偉大な先達たちにまつわる本を読むと、時折、ハッと目が覚めるような名言に出くわします。こうした名言・格言は、我々を勇気づけてくれたり、人生の指針となってくれたりします。でも… 中には、その言葉をものした人物の意に反しまして、間違った意味で伝わってしまったというものも、意外と多いのだそうですよ。

偉人たちが遺してくれた、せっかくの名言・格言…。どうせなら、本来の意味をキチンとおさえておきたいものです。今回は、「誤解されて伝わってしまった有名な名言・格言」を、いろいろとご紹介しましょう。

エジソン

トーマス・エジソン - Wikipediaより

■「天才とは、1%のひらめきと、99%の努力である」 “発明王”トーマス・エジソン

かのエジソンの名言中の名言、「天才とは、1%のひらめきと、99%の努力である」(Genius is one percent inspiration, 99 percent perspiration.)

この言葉… 「努力の大切さ」を説くときに、よく使われますよね。「天才というものは、他人が見ていないところで、大変な努力を重ねているのだ!」「降ってわいてくるひらめきなんぞは、チッポケな要素に過ぎない!」「天才を形成する要素の99%は、努力なのだ!」…だいたい、こんな感じで使われることが多いようです。

もちろん、努力ほど大切なことはありません。でも…言いだしっぺのエジソンがこの言葉に込めた本来の意味というのは、まるで違うんです!本来の意味は、ズバリ言うと、こうです。

1%のひらめきがなければ、99%の努力は無駄である。

つまり…「いくら努力しようが、ひらめきがなければ天才になるのはムリでっせ」という、ミもフタもない意味なんです。事実、1929年、エジソンが82歳の時に書いた備忘録には、こんな愚痴が書かれてあるんです。

最初のひらめきが良くなければ、いくら努力してもダメだ。ただ努力しているだけという人は、エネルギーを無駄に消費しているだけなのだが、このことを分かっていない人があまりに多い。

いかがですか? さきの名言と、ピッタリ意味が重なりますよね。

ユウェナリス

Juvenal - Wikipediaより

■「健全なる精神は、健全なる肉体に宿る」 古代ローマの詩人 ユウェナリス

コレも、誤解されたまま使われている名言の代表格です。ひと昔まえの体育会系の先生は、よく、この言葉を使ってました。「ハイ、グラウンドあと10周~! 健全なる精神は、健全なる肉体に宿~る!」な~んて…。こうしたイケイケ先生は、この言葉の意味を、こんなふうに思っていたんですね。

「健全なる精神というものは、健全に鍛えられた肉体にこそ宿るものなのだ!」「若者よ! もっともっと、肉体を鍛えなさ~い!」

でも、ユウェナリスが伝えようとした本来の意味は、まるで違うんです。もっと言えば、この言葉、そもそも、キチンと訳されてさえいないんです。ユウェナリスの言葉を適切に和訳すると、こうなります。

健全なる精神は、健全なる肉体に宿れかし。

…「かし」? 一体なんでしょう、文末の「かし」って??この「かし」は文末で使われる古い言葉でして、強い願望を表す「終助詞(しゅうじょし)」です。つまり、この言葉の「本来の意味」は、こうなります。

「あぁ… 健全なる肉体に、健全な精神が宿ればいいのになぁ!」

ユウェナリスが生きていた頃のローマ帝国では、汚職が蔓延。体ばかりムキムキに鍛えた軍人たちが、市民に威張り散らし、ありとあらゆる悪行三昧を働いていたのだそうです。こうした振る舞いを嘆いたユウェナリスは…

ああ… あんなに素晴らしい肉体を持っているのに、なんて残念なことだろう。肉体は健全なのだから、その中にある魂も、健全であるべきじゃないのか?まったく、そうじゃないやつばかりだなぁ!

…そんな気持ちから、この言葉を書き記したのだそうですよ。

ガガーリン

ユーリイ・ガガーリン - Wikipediaより

■「地球は、青かった」 世界初の宇宙飛行士 ガガーリン(ソ連)

1961年4月12日、ソ連のユーリイ・ガガーリンが、世界で初めて有人宇宙飛行に成功。物音ひとつしない宇宙空間の静寂の中、ガガーリンは、地上との交信のマイクを手に取った。そして、感に堪えたかのように、こう一言だけ、つぶやいた。「地球は、青かった」──

コレも、正確に言うと、だいぶん違います。そもそもこの言葉は、宇宙からの交信で飛び出た言葉じゃありません。ガガーリンが地球に帰ってきた後になって出てきた言葉なんです。彼が出した手記を紐解きますと、こんな言葉が出てきます。

地球はまるで、青いヴェールをまとった、花嫁のようだった。

これが英語に翻訳される際、「地球は青かった」に変化して広まった…と言われているんです。(あまねく広まっている名言よりも、こちらのほうがステキ…という感じもしますね。)

マロリー

ジョージ・マロリー - Wikipediaより

■「そこに、山があるからだ」 イギリスの登山家 ジョージ・マロリー

「なぜ、山にのぼるのか。そこに、山があるからだ」イギリスの伝説的登山家、ジョージ・マロリーが口にしたという、余りにも有名な言葉です。この言葉、いまでは、非常に哲学的な意味で捉えられています。たとえば、こんな具合です。

「山は、人生に似ている。目先の小さな目的に捉われず、その山の頂上を目指し、ただ一生懸命のぼればいい。それが、充実した人生を過ごす秘訣なのだ」

でも、こうした見方は、間違っています。マロリーが言う「山」とは、観念的な意味ではなく、具体的な「実在する山」だからです。そして…その山とは、ズバリ、「エベレスト」のことなんです。

この言葉が現れるのは、1923年3月18日付のニューヨーク・タイムズの記事です。記事の中で「なぜあなたはエベレストに登りたいのですか?」との質問に、マロリーは、「そこに(エベレストが)あるからさ "Because it's there."」と答えているんです。

つまり… 当時、まだ誰も登ったことがない「第3の極地」エベレストに登りたくなるのは、登山家として当然のことだ… と言っているに過ぎないんです。ましてや、山を人生に例えたりはしていません。哲学的な意味は、まるでないんです。

カエサル

ガイウス・ユリウス・カエサル - Wikipediaより

■「ブルータス、お前もか!」 ローマ皇帝 カエサル(ジュリアス・シーザー)

シーザーが暗殺されたとき、暗殺団の一味の中に、可愛がっていた部下のブルータスがいた…。そこでシーザーは思わず、こう叫んだ!「ブ、ブルータス!お、お、オマエもかァ…!」

…ハイ、実際はコレ、言ってません。スエトニウスというローマ時代の歴史家が書いた『ローマ皇帝伝』(岩波文庫)という本では、暗殺の場面について、こう書かれています。

(カエサルは)こうして二十三箇所を剣で突かれたが、最初の一撃にただ一度、呻いただけで、後は一声も発しなかった。

では、なぜ、「ブルータス、オマエもか!」という言葉が有名になったのでしょうか?これは、シェイクスピアの戯曲『ジュリアス・シーザー』に、「ブルータス、オマエもか!」というセリフが出てくるからなんです。つまり、シェイクスピアの脚色だったんですね。

ゲーテ

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ - Wikipediaより

■「もっと光を!」 ドイツの天才哲学者 ゲーテ

シーザーのケースもそうですが、偉人がいまわの際に発したとされる言葉は、偉大なるがゆえに、往々にして、のちのち「誤解」を招くようです。

たとえば、ドイツを代表する文豪で天才哲学者、ゲーテのケース。彼は、死の直前、両手を中空に広げて、こう叫んだそうです。

もっと… もっと光を!

これ、なんといっても「あの文豪ゲーテ」ですから、非常に哲学的に捉えられているようです。「神よ、もっと光を。 私は、志半ばにして死ぬが…罪深き人間たちに、もっと光を与えたまえ!」…そのような意味にとらえている人が多かったのだそうです。

ところが… キチンと調べてみると、事実はまるで違いました。この言葉は、ゲーテの最期を看取った主治医、フォーゲル医師の証言が基となっているんです。フォーゲル医師は、ゲーテの最後の言葉は、こうだったと語っています。

もっと光を入れたいから、二番目の鎧戸を開けてくれないか。

要するにゲーテは、部屋が暗いから、もっと明るくしてくれ、と頼んだだけなんです。

 

偉人たちの名言や格言が、時に、誤解されて後世に伝わることがあるのは、偉人が偉人であるがゆえ… なのかもしれません。

11月8日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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