忖度(そんたく)、忸怩(じくじ)たる思い、政治家が間違える日本語の使い方【ひでたけのやじうま好奇心】

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先週、改造内閣が発足して、支持率低下に歯止めをかけたい安倍総理ですが・・・森友・加計問題などで揺れた国会を、日本語の専門家がチェックしてみると、“先生方は日本語の使い方がなっていない”んだそうです。

国権の最高機関である国会で日本の未来を想って議論をするのであれば、そこで使う日本語のことをもっと大切にしてほしい、と言います。

では具体的に、どの言葉がどうおかしいのか?

国語辞典を30年以上に渡って編纂してきた神永暁(かみながさとる)さんが国会の議事録や閣議の言葉を丹念に読み込んだ結果、言葉がどんな風に間違って使われているのか、または本来とは違ったまま定着してしまったのか、『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)という最新刊に書いています。

さらに悩ましい国語辞典

『さらに悩ましい国語辞典』 (時事通信出版局HPより)

政治にはびこる間違った日本語の使い方。
まずは、「忖度」(そんたく)
今年初めて読み方が定着した言葉といってもいいでしょう。

森友問題で、「総理の口利きがあったのか」との問いに対して学園理事長が「忖度があったのでしょう」と答えました。
つまり、配慮したのでしょう、という意味で言ったのです。

これ以前にも、「政権の意向をマスメディアが忖度する」というように、“配慮する”との解釈で使われていました。

が!「忖度」には本来、『配慮して何かをしてあげる』という意味はありません。

「忖度」は“他人の行動を推し量る”、つまり、心で感じる・思う・考える・という意味だけで、何か行動を起こすという“配慮”は決してない。

それから「じくじ(忸怩)たる思い」

国会会議録検索システムというのがありまして、国民誰でも会議録を閲覧することが出来ます。
2012年から16年までの5年間の会議録から「じくじたる」を検索すると、253件もヒットします。

「じくじたる」がどのように使われているかを調べてみると・・・本来の意味は、『“自分の行い”について、“自分で恥ずかしく”思うさま』を言います。
ところが、政治家の先生たちは「日本は誠実にやってきたのに、あの国が無視したことに対して、じくじたる思いがある」と頻繁に使う。
すなわち、自分の行為を恥じている訳じゃなく、他人の行為に対して「もどかしい」とか「残念」と言った意味で使っている。

この間違った使い方は、「じくじたる」が、「ぐじぐじ」とか「ぐちぐち」と言った態度がどっちつかずの言葉を連想させるから出てきたのかもしれない。

とはいえ、日本語関係者は「国会議員は、他の人が使っているからと言って、意味をあいまいに覚えているままで使わないでほしい!流行語じゃないんだから」、とおかんむり。

安倍総理の日本語力も、かなり“つっこみどころ”があります。

今年、『共謀罪』を巡る議論の中で、安倍総理は「今回は『そもそも』犯罪を犯すことを目的としている集団でなければならない。これが過去の法案と全然違う」と発言。

“そもそも”は「最初から」の意味ですから、「最初から犯罪を犯すつもりの集団」ということになります。

これに対して野党から、“じゃあオウムはそれに当てはまらないことになるのではないか?”(オウムは最初から犯罪集団だったわけではない)と、『そもそも』の意味を問われた。

これに対して安倍総理は・・・「『初めから』という理解しかないと思っているかもしれないが、辞書で念のために調べたら『基本的に』という意味もある」と主張。

しかし、名だたる辞書を調べても、一つも「基本的に」と書いてある辞書はないのです。

1冊だけ「土台」(どだい)と書いてあるのがあるのですが、「どだい無理」との用法ですから「最初から」の意味。
この土台を「基本的に」と解釈したのかどうか定かではありませんが、間違った解釈であることは明白。

ところが安倍さんは、大臣たちと閣議で「“そもそも”には“基本的に”という意味もある」と決定までしてしまった。
もちろん、辞書関係者がそんな政治家たちの誤まった用法に左右されて、次回から辞書を直すわけはありません。

安倍さんは他にも間違った使い方というよりは、読み間違いですが、「云々(うんぬん)」と言うところを「でんでん」と発言してしまった・・・

「うんぬん」の漢字が、伝えるの“にんべん”がないカタチですから、でんでんと読んでしまったのでしょうが・・・

小学館から『ウソ読みで引ける難読語辞典』という、間違った読み方を想定した索引から、目指す言葉の正しい読み方を導くという面白い辞典があるのですが、そこにある「うんぬん」のウソ読みは「いいいい」。
つまり、安倍さんは発想を越えた、高度な読み間違えをしたのかもしれません。

ウソ読みで引ける難読語辞典

『ウソ読みで引ける難読語辞典』(Web日本語HPより)

それから、キムタクがドラマで使って一気に広まった「ぶっちゃけ」

「ぶっちゃけた話」とか「ぶっちゃけて言う」のカタチが多かったのが、後ろを全部省いて「ぶっちゃけ」と乱暴に使う。(2003年ドラマ「GOOD LUCK!!」で木村拓哉演じる主人公が多用)

俗語ですから、さすがに政治家は使わないだろうと思っていたら、議事録を調べるとそうでもない。
2007年、ある議員が「福井総裁に日銀の金融政策、ぶっちゃけ、金利の引上げ、この基本的なスタンスについてお伺いします」と、“ぶっちゃけ”と“お伺いします”が、なんともちぐはぐな言葉遣いで質問を投げかけています。

福井総裁は、ぶっちゃけ、どう感じたんでしょうか?!

 

さて、政治家ばかりの話もナンですから、我々もよく使う言葉についても。

三省堂が毎年暮れに発表している「今年の新語」で、去年大賞に決まったのが「ほぼほぼ」

うちの番組会議でも「古舘伊知郎さんの出演が、ほぼほぼ決まりました!」などと、日常的に使われています。

この言葉の成り立ち方を解剖すると・・・「ほぼ」をさらに強調して「ほぼほぼ」。
日本語にはこんな風に強調のために2回繰り返して言って、やがてそれが定着することがよくあります。

たとえば「そもそも」も、昔は「そも」だけだったのが、重ねられた結果で「そもそも」と定着。

その点で言えば、「ほぼほぼ」は、好き嫌いは別にして、日本語関係者も“やがて辞書に載る言葉だろう”と思っているそうです。

 

しかし、私が納得できないのは、「ヒンシュク」

若者が気に入らないことに対して「ヒンシュク~」と叫んだりしているのを聞くと、「ひんしゅくを買う、だろ!」と指摘したくなります。

「さらに悩ましい国語辞典」の神永さんに聞いたところ・・・『「ひんしゅくを買う」「ひんしゅくもの」、さらには、「ひんしゅくする」という動詞が基本的な用法だと思います。」とのこと。

ただし、若い人たちの「ヒンシュク~」は、単独で感動詞のように使った言い方で、こうした用法自体は他にもあります。
心にグッとくるような場面を見たり話を聞いたりして、「カンドー(感動)」と声を上げるのもそうですし、ちょっと古いですが、「秀樹、カンゲキー(感激)」だってそうです。

結論。
言葉の使い方として間違っていない。
しかし、それをどのような場面でも使っていいかというと、そういうことにはならない。
「ヒンシュク~」は多く若者の間で使われる流行語的なものなので、改まった場面で使うと、顰蹙を買うのではないでしょうか。とのことでした。

今年の流行語に「忖度」がノミネートされることは間違いないでしょうが、多くが間違った使い方をしている、という事実、覚えておいた方がいいのではないでしょうか。

【「さらに悩ましい国語辞典」にはさらにこんな言葉も・・・】

★鏡開き・・・本来は「もちを割る」のみ。酒樽のフタを割る意味は新しい。90年代から辞書に載るように。ただしNHKは「樽をあける」と言い換えている。

★かねて・・・「かねて」と「から」は同じ意味なので、「かねてから」は重複する言葉。新聞は「かねてから」を使わないが、辞書では定着してきているので、使い方を載せている。

★ぎこちない・・・一般的に「ぎこちない」と言う人が多いが、もともとの「ぎごちない」が最近まで優勢で、十数年で入れ替わった。

★きゅうり・・・第二次世界大戦前までは「キウリ」。黄色のウリ、木のウリ、から来た言葉なので。

★ゴーヤー・・・沖縄本島は「ゴーヤー」、石垣・竹富などの離島は「ゴーヤ」。

★五十音図・・・この言葉が最近、理解できない学生が増えている。電子辞書が普及した弊害。高校、大学で五十音図テストができない学生が増え、外国人留学生の方が正解率が高い。

★里帰り・・・婚礼直後の女性が、一時的に実家に帰ること、が元の意味。最近では海外に流出した美術品が日本に戻ってくることを「里帰り」と言われるが、買い戻され、その後恒久的に日本に返還されるのならば、それは”一時的に帰る“ことにならないので、「里帰り」ではない。

★初老・・・古くは(菅原道真の時代)40歳の異称。現在は、50歳から60歳前後を指すと辞書にある。

★なので・・・一般的な辞書の中に10万ほど収録語があるが、接続詞はわずか97しかない。「なので」は改まった文章の時には向かないが、一般的に使われているので、98番目の接続詞になる可能性がある。

8月8日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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