コドモに大人気!「孫子の兵法」をオトナも知っておこう
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『キングダム』というタイトルのマンガをご存じでしょうか?
現在も『週刊ヤングジャンプ』で連載中の、このマンガ。なんと現在までに、「累計3,000万部」を売り上げている、当代随一の人気コミックなんです。つい先日、第48巻が発売されたばかり。NHKでアニメ化もされまして、コチラも大評判なのだそうですよ。
この『キングダム』の舞台は、春秋戦国時代(紀元前770年~)の中国大陸。ひとことで言えば、さまざまな豪傑たちが天下取りを目指して群雄割拠する話なのですが…この『キングダム』の大ヒットをきっかけに、子供や若い人たちの間で、ある「ブーム」が巻き起こっているんです。それが… ズバリ!「孫子の兵法」ブーム!
なぜなら…この『キングダム』の中には、「孫子の兵法」をモチーフにしたエピソードが、ふんだんに飛び出してくるからなんです!
この「孫子の兵法」ブームが、児童書の世界にも伝播!「こども孫子の兵法」という本が発売されまして、児童書としては異例のベストセラーになりました。2016年刊行のこの本、早くも10万部を突破しているんです。そんなわけで、マンガでも人気、子供向けの本でも人気!今どきの若いヒトたちは、意外と「孫子」について詳しいらしい…。
こうなってくると、我々オトナも、「孫子の兵法」のサワリくらいは、知っておかないとマズイかも???で、若いヒトたち相手に「ドヤ顔」ができるように、いろいろと、調べてみました!
まず… そもそも、「孫子」とは、なんぞや?というところから。
この「孫子」とは、中国最古の「兵法書」。(※諸説ありますが)紀元前500年ごろの軍事思想家、孫武の作とされています。最大の特徴は、「非常に実戦的」ということ。現在では、「仕事にも人生にも役立つ」なんて言われてますが、もともとは、一にも二にも「兵法書」…つまり、あくまで、「戦(いくさ)に勝つため」の虎の巻なんです。
さて、この「孫子の兵法」で、いちばん有名な言葉といえば…
■彼を知り己を知れば百戦あやうからず
…という教えでしょう。
「敵についてだけではなく味方についても情勢をしっかり把握していれば、たとえ何回戦っても、敗れることはない」という意味です。
でも、これ以上に実戦的な言葉が、「孫子の兵法」には、山のようにあるんです。たとえば…
■智将は務めて敵に食(は)む
これは、「頭がいい大将は、食料を敵地で調達する」という意味。
敵国を攻めた時は食料の輸送に莫大な費用がかかります。でも、敵地で調達すれば、食料費もかかりません。敵の力も減らすことができて、一石二鳥。非常に現実的ですよね。
さらに、戦(いくさ)につかえる実戦的な言葉があります。それは…
■利(り)を見て進まざるは、労(つか)るるなり
この言葉の意味は…「有利なことがわかっているのに敵が兵を進めてこないのは、敵が疲労しきっているのである」…というもので、要するに「攻めどき」を説いている言葉なのですが…この言葉の前後には、他にも、「攻めどき」を教える、いかにも兵法書らしい言葉が並んでいます。現代語に訳して紹介しますと…
「敵兵が杖にすがって歩いているのは、食料不足におちいっているのである」
「水汲みに出てきた敵の兵士本人が、まっさきに水を飲んでいる場合、敵は水不足に陥っているのである」
「敵陣の上に鳥が群がっている場合、敵はすでに軍を引きはらっているのである」
「夜、敵の兵士たちが大声で呼び合っている場合、彼らは、恐怖にかられているのである」
「将軍がぼそぼそと小声で部下に語り掛けているのは、部下の信頼を失っているのである」
戦場において、こういう光景が見られた場合、「孫子」では、迷わず攻めろと言っています。
じゃあ、どういう具合に攻めるのか?「孫子」には、ちょっと艶っぽい言い回しが飛び出てきます。
■はじめは処女のごとく、のちには脱兎のごとし
「はじめは処女のごとく、のちには脱兎のごとし」この言葉の意味は…「戦(いくさ)の最初は、まるで処女のようにふるまって、敵の油断を誘え。そのあと、逃げるウサギのような素早さで攻めたてれば、もう敵は防ぎきれないはずだ」…というもの。(※「孫子の兵法」に「処女」なんて言葉が出てくるの、知ってました?)
さてさて、攻め方に関していうと、「孫子」には、もっと有名な言葉があります。それが…
■疾(はや)きこと風の如く、徐かなるは林の如く、侵掠すること火の如く、動かざることは山の如し
「軍隊が移動するときは風のように速く、陣容は林のように静かに悠然と構え、攻撃する際には火のように勢いに乗じろ。ただし、山のように、陣形を崩さないのが大事である」
どこかで聞いたことありますよね?そう、武田信玄の「風林火山」です。実は、かの信玄公も、孫子の兵法を愛読してまして、この言葉から、「風林火山」の旗が作られたんです!
さて、こうして「孫子の兵法」を忠実に守り、ほぼ、勝機を掴んだ…としましょう。勝ちが見えたとなれば、徹底的に、メッタメタに、全滅させたほうが良いのでしょうか?… いえいえ!実は、こんな言葉があるんです。
■躬寇(きゅうこう)には、迫ることなかれ。
これは、「窮地に追い込んだ敵に、それ以上の攻撃を仕掛けてはならない」という意味です。勝ちが見えたら、きりのいいところで落としどころを見付けるべきだ、というんです。負けた相手をそれ以上追い込むと、それこそ「窮鼠、猫を噛む」勢いで、思わぬ反撃を食いかねません。
さらに孫子は、「敵を包囲したら、必ず逃げ道を開けておいてやらなくてはならない」とも言ってます。要するに、100%の勝ちでなくてもよい、70%、80%で充分だ…と言っているんです。敵にも、いくばくかの温情をかけておかないと、民衆たちの支持を失うぞ…という意味もあるそうです。(※孫子も、意外と優しいところがあるんですね!)
さて、攻めるほうばかりの兵法ばかり紹介してきましたが、守るほうの心得もあります。たとえば…
■塵(ちり)たかくして鋭きは、車の来たるなり
「土埃(つちぼこり)が高くまっすぐに舞い上がるのは、戦車が進攻してくるのである。」という意味。
この前後には、「守りの心得」が並んでいます。現代語に訳しますと、
「土埃が低く一面に舞い上がるのは、歩兵部隊が進攻してくるのである」
「土埃が細いすじのように舞い上がるのは、進攻ではない。敵兵が薪(たきぎ)を燃やしているのである」
「鳥が飛び立つのは、伏兵がいる証拠である」
…どうですか? どれもこれも、なんとなく得心のいくものばかり。ニッポンの有名な時代小説や大河ドラマにも、このあたりの教えをモチーフにしたシーンが、たくさん使われているのだそうですよ。
人生の指南書として、とか、ビジネスに役立てようとして読むのももちろん結構なのですが…普通に読んだとしても、まるで戦国時代の小説のようにワクワクできる!!それが、「孫子の兵法」のいいところなのだそうですよ。深まる秋… 枕元の一冊として、オトナの皆さんにもオススメです!
10月25日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より
高嶋ひでたけのあさラジ!
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