10月10日は、数字で書くと1010(千・とう)ということで、『銭湯の日』。それを記念して、10日10日は都内の多くの銭湯で、「ラベンダー湯」を開催したり、「タオルを無料配布」したりと、様々な方法で盛り上げています。
また年間通して、23区の多くの銭湯では、区によってシステムが違いますが、65歳以上、もしくは70歳以上が、「無料」とか「100円」で入ることが出来る、高齢者優遇制度があります。いま、銭湯は460円ですから、これは嬉しい制度。
・・・そんな銭湯がどんどん消えているのはご存知の通り。都内にある銭湯は、およそ570軒。2004年には1,077軒の銭湯がありましたから、13年間で4割以上減少したことになります。
10日に1軒、銭湯がなくなっているという現実。その一方で、生き残って、生き生きとしている銭湯があります。
先ほど都内に570軒あると言いましたが、その9割以上が23区内。全国の銭湯が4,000軒しかないことを思えば、東京23区は銭湯が多い地域であることがわかります。そこでけさは、23区内で様々な取り組みで切磋琢磨している、『銭湯の生き残り策』について紹介していこうと思います。
まずは、なぜ銭湯が減っているのか?という原因についてみますと・・・多くの人が「経営不振」「後継者不足」だと考えるかもしれませんが、一番の理由は「建物の老朽化」です。
銭湯を新規開業する人は少なく、古くある建物で営業を続けている所がほとんど。建物や施設にガタが来たとき、数千万から億のおカネがかかるわけですが、そこまでかけて直すかどうか?躊躇して営業を辞める決断をするのも、やむを得ないかなと思います。
その一方で、おカネをかけてでも、改築して、モダンな銭湯に生まれ変わる。ただ改築しただけではなくて、美的センスに溢れて美しい、「デザイナーズ銭湯」が2000年頃から、次々と誕生しています。
たとえば・・・練馬区桜台の「久松湯」、池尻大橋の「文化浴泉」、文京区千駄木の「ふくの湯」、新宿区大久保の「万年湯」など、枚挙に暇がありません。
デザイナーズ銭湯は、入り口からして、どこかの旅館かとみまがう。中に入れば、木をふんだんに使ったり、美しいタイルを芸術的に配置したりした、『和モダン』。こういうのを、私の口から言うのもどうかと思いますが、“スタイリッシュ”だと言うんだそうですよ。
しかも公衆浴場=銭湯ですから、460円で入れることには変わらない。デザイナーズ銭湯は、地元の人たちの誇りになると同時に、遠くから、特に若い人たちを「銭湯という存在に気が付かせる」場所になったというのです。
しかしこうしたハードの改革は、なかなか出来ないという銭湯も多い。そこで一部の銭湯で始まったのが、「デイサービスへの空間貸し」です。つまり、夕方からは銭湯の営業をするのですが・・・銭湯を開けるまでの朝と昼間の時間帯、銭湯の脱衣場やお風呂をデイサービスの会社に貸すのです。
男湯と女湯の敷居は可動式で、それを取り払えば、結構広い空間になります。また、すぐお風呂もあるから、むしろ便利。空間がなかなかみつからないデイサービス会社にとっても助かるし、銭湯経営者にとっても収入にもなる「銭湯の空間貸し」はすでに定着して、現在20軒ほどでおこなわれているそうです。
そして、意外な新しい方法でファンを増やしているんだなと思ったのが・・・「クラウドファンディングの利用」。おカネを必要とする人が呼びかけ、賛同する人たちが寄付をするネットの仕組みのことです。
銭湯によくあるペンキ絵、ご存知ですよね。銭湯の壁に、富士山や海などをペンキで描く絵師は、もう3人しかいないそうです。お風呂と言う湿気の中にあるペンキ絵ははがれやすく、半年から1年に1回のペースで描き替えますが、普段それは非公開。
ならば、その絵師たちがペンキ絵を描く様子を銭湯でライブで見てもらおうと、銭湯の主人がクラウンドファンディングで呼びかけます。「寄付を下さったら、ペンキ絵ライブペインティングを見られて、ついでにお風呂も入れますよ~」とイベントを告知。これを面白そうだと思う老若男女がワッと集まり、集客もファンも増えて行くのです。
実は「ペンキ絵」というのが、新たな広告媒体としてちょっと注目されています。ペンキ絵の中に、企業が絵を描いてもらって宣伝する、という方法です。たとえば、最近行われたものでは映画「シン・ゴジラ」の公開に合わせて、銭湯のペンキ絵に「シン・ゴジラ」の1シーンが描かれ、ファンがどっと押し寄せると同時に、映画のいい宣伝になりました。
それでは銭湯のソフト面の改革はどうか?!これには、ほとんどの銭湯が加盟しているという「東京都公衆浴場生活衛生同業組合」がファンを増やす取り組みが功を奏しています。
2007年から始まった「銭湯お遍路」。銭湯に行くたびにスタンプをもらうスタンプラリーで、都内で88カ所をめぐると、認定証や記念バッチがもらえるというものです。そんな暇な人はあまりいないのかな~と思っていたら、すでに5,000人が達成。10回以上88カ所巡りをしているツワモノが何人も現れています。
このスタンプラリー効果を肌で感じた各区の銭湯が、今度は区単位で、たとえば北区、江戸川区、足立区、新宿区などで独自に区内の銭湯を巡るように、毎年スタンプラリーを開催するという広がりを見せています。
また、組合のHPを見てみればわかりますが、HPが見やすく、キレイ。記事を書いているのは、一般から公募した東京都浴場組合公認の「銭湯ライター」。銭湯の記事を書きたいというファンは年々増えていて、選考を重ねて、今回14名の記者が決まったそうです。
そして、銭湯と言えば、自分で「タオルと石鹸を持って行く」のが基本だったわけですが、銭湯組合が音頭を取って、ボディソープとシャンプーを設置するところを増やしている。全部ではありませんが、多くの銭湯が置くようになっています。また、タオルを数十円から数百円で、売ったり貸したりしている。
ですから、思い立ったら、銭湯を見つけたら、すぐに手ぶらで行けるような工夫が整ってきている。地道ですが、これも客を増やす努力と言えます。こうして、銭湯利用者は底を打って、いま上昇に転じているのです。
生き残っている銭湯は、個々の銭湯独自の取り組みもあります。
最近よくあるのは、「ランナーズ銭湯」。ランニングコースが近い銭湯が、着替えのロッカーを積極的に貸すという方法です。スーツからランニングウェアに着替えてもらい、荷物を銭湯が預かり、走り終わったらひとっぷろ浴びてもらう、というシステム。これはランナーに喜ばれ、客が増えます。
それから特に外国人のYouTuberに、オープン前に撮影を許可する、という方法。普通、銭湯はその性質上撮影は好まれませんが、オープン前に特別に許可することで、全世界に発信がしてもらえます。
生き残っている銭湯は、意外に新しい取り組みを積極的に行っているということがお判りいただけたでしょうか。何の業界もそうでしょうが、こうした姿勢が大切なのかなと思います。
10月10日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より
高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00