フィットネスは興奮状態、これが病みつき
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これからどんどん涼しくなって、食べ過ぎた体を絞るのにイイ季節。なんとなくカラダを動かしたくなる方も多いのではないでしょうか。そこでフィットネス業界がどうなっているのかを調べてみたところ、新しい面白い動きが出ているので報告していこうと思います。
フィットネス業界と言うのは、いわゆるフィットネスクラブやスポーツクラブ、スポーツジムの総称。通っているリスナーの方も多いのではないでしょうか。
フィットネス業界の売上高と会員数は、堅調に右肩上がりで推移しています。2016年はおよそ年間4,500億円の市場規模で、過去最高。外食産業なら「ラーメン市場」や「ベーカリーショップ=パン屋さん」の市場規模と同じくらいです。
このフィットネス業界を支えてきたのが、中高年層。たとえば、大手のルネサンスで、50代以上の会員の割合は、4年前が43%、2017年今年はついに50%。健康意識の高い中高年がフィットネスを継続している、と言えます。
ところが、一般的に70歳を超えると運動頻度が少なくなると言われていて、メインの顧客であるシニア層がこの先ごっそりと抜け落ちる可能性が考えられます。運動しなくなるという気持ち、私にもよくわかります。ですから、フィットネス会社は好調な今のうちに、若年層を取り込む新たな一手を打っておく必要があるのです。
そこで始まっているのが、若者のニーズや生活スタイルに合わせた仕掛け。
たとえば、業界1位の『コナミスポーツクラブ』では・・・若者が1度はやってみたいと口をそろえて言う、東京オリンピックの正式種目の「スポーツクライミング」、いわゆる「ボルダリング」を、一部の店舗で導入しています。私なんかは、あのボコボコの壁は登れませんけどね。
また、大手フィットネスクラブだと9時オープンが多いところ、『東急スポーツオアシス』は、24時間オープンの店舗を増やしています。狙い通り、“仕事が忙しくて夜しか時間がない”、“夜間のランニングの途中に寄ってトレーニングしたい”若い人たちが飛びついているようです。
さて、フィットネスと言えば、どんな形態のものを想像するでしょうか?
「営業時間が9時から22時、一般的なマシンジムにスタジオといった、何でもできる総合的なスポーツ施設」、ではないでしょうか。しかし、こうした総合ジムは次第に淘汰されるのではないか、とフィットネス業界では考えられています。
つまり、いろんなマシンがあってプールもあって、エアロビやダンスも出来て・・・という”何でも出来る総合ジム“は、若者には”何にも特徴がない“と解釈されるからです。
事実、2016年に新規オープンしたフィットネスは、プール付きの施設はわずか9件だったのに対し、プールなしの中小規模のフィットネスが300軒と圧倒的。その300軒の内訳を見ますと、「24時間オープンの低価格型」か、「マシンの種類がごくごく少ないテーマを持ったフィットネス」がほとんど。特に後者の「テーマを持った型のフィットネス」に、大手が喉から手が出るほど欲しい“若者たち”が引き寄せられて通い始めている、という現象が起こっています。
では、若者が通う、テーマがあるフィットネスとはどういったものなのか?!
まずアメリカで2010年頃からヒットして、日本ではここ2,3年本格的に入ってきたカタチで、「ブティック系 フィットネス」と呼ばれています。建物の中は、まるで洋服を買うブティックのように、内装にシャンデリアが使われていたり、おしゃれな壁紙が貼られていたりする。いろんなマシンがあるわけではなく、何か一つの種類のスポーツしか出来ない。すなわち・・・
「フィールサイクル」というフィットネスは、真っ暗闇の中でひたすらバイク=自転車をこぐ。
「ジャンプワン」は、ひたすらトランポリンをジャンプする。
「b-Monster(ビーモンスター)」というボクシングフィットネスは、真っ暗闇の中でひたすらサンドバックを打つ。昔からボクササイズなんてのがありますが、このフィットネスはスタジオに100ものサンドバックがぶら下がっていて、圧巻。
そのほか、“ひたすらサーフボードに乗っている”サーフフィットネス、バレエのレッスンで使う“バーを使ったエクササイズ”のバーフィットネスなど、何か1種類のエクササイズしかないフィットネスが次々と出来て、軒並み、ヒットしています。
なぜ、こうした一つの運動に特化したフィットネスに人は惹きつけられるのか?様々な秘密がありました。
まず、これまでのフィットネスのように、空いた時間に行って自由に運動する、というのとは全く違います。「自転車こぎ」も「ボクシング」も、他のどれもこれも、定員が決まっているので、必ずネットで予約をしなければなりません。
スタジオはまるでクラブのように暗い。そしてレッスンが始まると・・・ド派手な照明がピカピカビカビカ光り、大音量の音楽が45分、ノンストップ。正面には、マイク付きのヘッドセットを付けた、若くて鍛えられてナイスバディのインストラクターが、大音量の音楽に全く負けないものすごい声量で、立て続けに指示。そして巧みな言葉攻め。
バイクフィットネスは、「That's right!(そう!)」「One more time!(あと一回!)」。
ボクシングは「ワンツーワンツー」「ジャブジャブフックアッパー」「その調子!」と、しゃべり通し。
カリスマインストラクターに付くファンも大勢出てきます。
どのフィットネスも運動量がものすごくて、バイクだと400から800kcal、
ボクシングに至っては800から1,000kcal!
このハードさと消費カロリーも、若い人には大変な魅力です。
また、バイク(自転車)フィットネスは音楽も重要な要素で、BGMを選ぶことが出来ます。「ヒップホップ」クラスや「2000年代ポップス」クラスという若目の選択肢もあれば、「マイケル・ジャクソン」「ビートルズ」もある。
こうしたエンターテインメント色が強くて、非日常の空間で、大音量の音楽や照明の中で行う運動は、ものすごい「興奮状態」に陥らせ、これが病みつきとなるのです。
どのスタジオも、朝7時という早朝からオープンしていますが、出勤前にひと汗流すOLたちでごった返しているのです。
そんなわけで、このタイプを知ってしまった若い人たちは、ただマシンが並んでいるだけで、自分ひとりでひたすら運動しなくちゃいけないタイプのフィットネスにはなかなか足が向かない。月の会費も、大手の総合型フィットネスより3割から5割ほど高いのですが、それでも通う人が多く、スタジオの数は増える一方です。
さて、今後どんなフィットネスがくるのか?!
業界で注目されるのが、「Orangethory Fitness(オレンジセオリー・フィットネス)」。
『高強度インターバルトレーニング』と言って、エネルギッシュな音楽がかかる中、トレーナーがハイテンションに「ランニング」「筋トレ」「体幹トレーニング」を指導して繰り返す、というもの。
強度が強いというだけあって、1回のレッスンで消費カロリーは脅威の500~1,000キロカロリー!
手首に一人ひとりが心拍数を測る機械を巻いて、目の前の大画面に自分がどのくらいの心拍数で消費カロリーなのか、リアルタイムで可視化。“オレンジゾーン”と呼ばれる脂肪燃焼ゾーンに何分入ったかがエクササイズの成果として分かるようになっています。
また注目されるキーワードは「アフターバーン効果」。
運動後にもカロリー消費される、という効果で、最長36時間、短時間で成果が出るプログラムとして注目されています。
「オレンジセオリー・フィットネス」は12月に麻布十番に2店舗目がオープンする予定で、今後も増えそうだということです。
まとめますと・・・若者向けの一つのスポーツにこだわったフィットネスは、「朝早く、カリスマ的なインストラクターに、ガンガンの音楽の中、非日常の空間、ものすごいカロリー消費 でクセになる」。
今後、「VRフィットネス」や、「ボート漕ぎフィットネス」など、新たなジャンルの進出も控えていて、さらに若い人を惹きつけそうです。
一方の大手総合型フィットネスは、中高年のニーズも実現しながら、どう若い世代まで顧客を広げていくか?50%を占める大手フィットネスはうかうかしていられない状況となっています。
9月12日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より
高嶋ひでたけのあさラジ!
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