いま、甲子園でも熱戦が繰り広げられていますが、よくよく考えてみれば、試合に出場できる高校球児というのは、ものすごく限られた人数なんですよね。
全国の野球部員は約17万人。そのうち予選にも参加できない選手は約10万人。
10万人の高校球児は試合にも出ないで終わるというのが現実なんですね。
これ、ちょっと“もったいない”と感じませんか?
運動神経の優れた選手たち。野球では成功しなかったけれど、もしかしたら、他のスポーツの才能があるかもしれないですよね?
“足が速くて、球技よりも陸上の方が向いていた”とか、“スピードはないけど、身体が大きくて相撲の方が向いていた”…とか。
大相撲の横綱・稀勢の里だって、小中学生のころは野球少年。エースで4番。
その後、高校には進まず、角界入りして横綱にまで上り詰めましたが、もしも野球の道に進んだら、レギュラーになれなかったかもしれませんよね。
そんな視点から、スポーツ庁や自治体が力を入れているのが『タレント発掘事業』。
将来、五輪でメダルを獲得できる若くて有望な選手を発掘しようという取組です。
例えば、東京都が実施しているのは、「トップアスリート発掘・育成事業」。
都内から中学生を対象に運動能力の優れた人材を発掘して英才教育。
オリンピックを始め、世界で活躍できる選手を育てようという取組です。
特に力を入れているのが、俗にマイナー競技と呼ばれるスポーツ。
東京都が対象としている競技は、「ボート」「レスリング」「ウエイトリフティング」
「自転車」「ボクシング」「アーチェリー」「カヌー」の7種目。
確かに7種目とも、子供の頃に触れる機会が多いとは言えない競技ですよね。
野球やサッカーのような人気競技の場合、競技人口が多すぎて、努力をしても才能があっても なかなか世に出れない可能性が高いです。
また子供の時代には マイナーな競技に触れる機会自体が少なく、もしかしたら、トップになれる才能があるかもしれないのに、埋もれてしまう可能性もあります。
そういう子供たちに、様々な競技を体験する機会を与えているんですね。
東京都では、毎年都内全中学校に募集をかけ、参加者の体力テストや実技審査を実施。
最終的に約30人を選び、スポーツ全般に共通する基礎を学びながら、自分が取り組みたい競技を選択。その道のプロから英才教育を受けます。
すでに活躍をしている選手も多くて、国際大会や国内大会で結果を残しています。
このようなスポーツにおける「タレント発掘事業」は、現在20以上の自治体で実施されています。
中でも原点になったとされるのが福岡県のタレント発掘事業。
福岡県の場合は、東京都と同じく体力テストなどで運動能力の高い子供を選抜。
小学5年生から中学3年生までの5年間、オリンピックに採用されている30近い競技をたくさん経験しながら、自分に適した競技を選択していく方式。
もともとバスケをしていた選手が、体のバランスや空間把握能力、集中力などを評価されて、ライフル射撃に転向。
わずか2年で国際大会・銅メダルを獲得したり、陸上競技やバドミントンをしていた選手が高校生からフェンシングに転向して、日本一になったり、福岡からはトップアスリートが続々と誕生しています。
ほかの競技で培われた能力が、別の競技で花開くという話、よく聞きますよね。
ドジャースの前田健太選手は、小学生の頃に 背泳ぎで西日本1位になった経験があり、その時に培われた肩の柔らかさが、投球にも活かされていると言われます。
マエケン体操を見ると、その柔らかさがわかりますよね。
先代の貴ノ花も水泳が得意で、そのときの経験が相撲に活きていたそうです。
これまで、子供たちが取り組む競技は人気スポーツに偏りがちでした。
特にマイナー競技と言われるものに触れる機会は少なかったと言えます。
せっかく運動能力が高いのに、それはもったいない!
いろんなスポーツを経験することで、自分に合ったスポーツを探す。
そんなタレント発掘事業で、将来、世界へ羽ばたく選手が出てきそうですね。
8月10日(木) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より
高嶋ひでたけのあさラジ!
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