最近、プロレス、ご覧になってますか?
思い起こせば80年代──“燃える闘魂”アントニオ猪木率いる新日本プロレスは、列島を熱狂の渦に叩きこんでおりました。
“スーパーヒーロー”タイガーマスクの四次元殺法、“人間山脈”アンドレ・ザ・ジャイアント、“ブレーキの壊れたダンプカー”スタン・ハンセンといった超大型外国人レスラーたちの肉弾相打つ闘いが人気を呼んで、テレビ視聴率は毎週のように30%を超え、関連グッズは飛ぶように売れました。
当時、営業本部長を務めていた新間寿さんは、声高らかに、こう宣言したものです。
「現在、日本で巻き起こっているのは、プロレスブームではない。新日本プロレスブームなのだ!」
ところが…そんなブームのさなか、莫大な使途不明金の存在が明らかとなり、社内クーデターが勃発。
猪木さんは社長の座を追われ、有力選手たちは大量離脱。
このあたりから、我が世の春を謳歌していた新日本プロレスは、一気に落ち目の三度笠となっていく…「K-1」や「PRIDE」といった総合格闘技ブームにも押されまして、人気はジリ貧になるばかり。
「金曜夜8時」のプロレス中継はゴールデンの枠から外され、テレビ局からの中継料も激減。
2010年の売り上げは全盛期の「4分の1」にまで落ち込みまして、もはや挽回は不可能と言われてた…
ところがところが…
新日本プロレスは、この絶体絶命の窮地から、「奇跡のV字回復」を遂げたんです。
なにしろ現在の新日本プロレス、大都市ではチケットをとることさえ難しくなっているというんです。
たとえば来月8月11日、12日、13日と、両国国技館で「三連戦」の興行が行なわれるのですが…これがなんと、3日間とも、ほぼソールドアウト!高い席から“即完”、若干の当日券しか残っていない!
いま、新日の会場に詰め掛けているのは、最近話題の「プ女子(※プロレス女子)」だけじゃないんです。
80年代、猪木、タイガー、長州に夢中になったオジさんファンも、こぞって会場に帰ってきてるんです!
いったいなぜ、こんな奇跡が起きたのか? 「新日本プロレス」大復活のワケに迫ります!
外国人レスラーも含めた新た場スター選手たちの誕生
現在発売されている『スポーツグラフィック Number』のプロレス特集号。
この本では、すべての現役レスラーを対象に最高のレスラーを選ぶ「プロレス総選挙」なる企画の結果が発表されています。
投票数は、実に「3万5千票以上」。
で、現在の日本マット界の人気レスラー「TOP 100」が紹介されているのですが…
この選挙の上位の顔ぶれを見ると、まさしく、新日本のレスラーばかり!
1位 内藤哲也(ないとう・てつや /新日本プロレス)
2位 棚橋弘至(たなはし・ひろし /新日本プロレス)
3位 オカダ・カズチカ(新日本プロレス)
4位 中村真輔(なかむら・しんすけ /元・新日本プロレス)
5位 ケニー・オメガ(カナダ /新日本プロレスのエース外国人)
このあたり皆、20代~30代中心の若くてイキがいいレスラーばかりでして、しかもイケメン揃い。
棚橋選手のみは40歳ですがとてもそうは見えない若さ… 「プ女子」が夢中になるのも分かります。
でも、彼らに人気が集まっているのは「見かけ」のおかげだけではないんです。
人気のウラには新日本のしたたかな計算があったんです。
大きな転機となったのは、カードゲーム会社のブシロードが2012年から新オーナーになったこと。
ブシロードは、交通広告やインターネットを中心に、かつてないド派手な広告キャンペーンを展開しました。
大会の宣伝CMをテレビ地上波で大量にオンエア!
関東と首都圏のJR各線「全車両」に、計「9000枚」の車内ポスターを展開!
東京メトロほぼ全線に中吊りのポスターを展開!
さらにさらに… 所属選手たちにブログやツイッターを推奨したんです!
(力道山なら「練習しろ!」というところですが、今は「Twitterしろ!」というワケ…)
こういった実に今っぽい戦略がズバリとハマりまして、若手選手たちの知名度が一気にアップ!
人気は右肩上がりどころか「垂直式」に急上昇していったんです!
試合内容の充実
いくら選手がカッコよくても試合内容がツマンないとお客さんは集まってきません。
ところが…この点、いまの新日の試合はすれっからしの昔のファンをも大満足させているそうです。
今年1月4日の東京ドーム大会。
メインイベントは若きエース、IWGPヘビー級チャンピオン、オカダ・カズチカ選手対、外国勢のトップ、ケニー・オメガ選手の黄金カード。
この試合、40分を超える大死闘のあげくオカダが必殺技の「レインメーカー」を決めて防衛に成功したのですが… この試合が動画サイトにアップされたとたん、けして大袈裟でなく全世界のプロレスファンたちを唸らせた!
「ニュージャパンのプロレスはファンタスティックでクールだぜ(カッコいいぜ)!」
じゃあ、現在の新日の試合のどういうところがスゴイのか?
具体的に言うと…
「退屈に映る寝技をあまりつかわない」
「立ち技中心、キックやパンチは当たり前」
「これでもかというくらい、大技を次々と連発させる」
「とにかく展開がスピーディー、観客はまったく目を離せない」
…といったところ。
実は、このような、立ち技中心の激しい試合スタイルは、90年代初頭の「全日本プロレス四天王」、「(故) 三沢光晴選手」「川田利明選手」「小橋建太選手」「田上明選手」の4人によって完成された…とも言われています。
この「四天王プロレス」は、いまでも動画サイトで世界中のファンに愛されていまして、アメリカの有名なプロレス専門メディアは、「四天王プロレスが現代プロレスの世界基準を作った」と報じています。
つまり、新日本は、図らずも、ライバル・全日本の影響を受けていた… という見方もできるわけです。
(ただし、この試合スタイルをこなすには、大変な身体能力が要求されるわけですが…)
WWEを超えろ!新日本プロレス、ついに「世界進出」
最後に、日本のプロレス史上かつてなかった実に夢のある「大戦略」を紹介しておきましょう。それはズバリ…「世界進出」です!
新日本プロレスは、先ごろ、プロレスの本場・アメリカのロサンゼルスで、二日間連続の興行を打ちました。
すでに動画サイトで新日の試合は評判になっていますから、現地のファンがワンサと詰めかけまして「ロス興行」は大成功!
しかも、この「ロス興行」の模様が動画配信されまして、ケーブル局からも引く手あまただというんです!
アメリカには、新日本プロレスの約20倍の売上高を誇る巨大プロレス団体「WWE」が存在します。
ニューヨークを拠点としているこのWWEには、かつて、あのドナルド・トランプも登場しましたが…新日本プロレスはこの超巨大資本、WWEに真っ向から挑戦状を叩きつけたというワケ!
そして…こうした「世界を相手にしたスケール観」が、かつてアントニオ猪木にシビれていた「オジさんファン」たちの琴線に触れまして、彼らもまた会場に足を運び始めた…というわけなんです!
一過性のブームを超え、もはや「ひとつの輸出コンテンツ」に成長しようとしている、新日本プロレス!
今後、どこまでいきますか? あの“闘いのワンダーランド”が、帰って来ました!
7月26日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より