来月7日に開幕する“夏の甲子園”、第99回全国高校野球選手権大会。来年、節目の100回大会を前にいま、高校野球の風景が劇的に変わりつつあるというんです。
今日は「変わりゆく高校野球」の世界を御紹介いたしましょう。
■来年からついに「タイブレーク制」が導入される!?
延長戦に入ると、攻撃側は「1アウト満塁」から始めるといういわゆる「タイブレーク制」。
なにしろいきなり「ワンアウト満塁」ですから点が入る確率は恐ろしく高いというのは自明の理。すでに高校の神宮大会や社会人の都市対抗野球では、この制度が取り入れられているのですが…来年のセンバツ大会、すなわち2018年の“春の甲子園”でついにこの「タイブレーク制」がお目見えすることになりそうなんです!
(※先月13日に行われた高校野球連盟の技術振興会議において導入する方向で意見がまとまり、11月の理事会で「正式決定」する見込み。すでに導入はほぼ確実だと言われています。)
この「タイブレーク制」導入へ向けた動き。大まかにいうと理由はふたつあります。ひとつは、大会運営を円滑に運ぶための時間短縮──すなわち「時短」です。
今年の春のセンバツでは大会7日目の3月26日、前代未聞の「珍事」が勃発しました。第二試合の「福岡大大濠」対「滋賀学園」の試合が、延長十五回引き分け再試合に。さらに、第三試合の「高崎健康福祉大高崎」対「福井工大福井」の試合も、これまた延長十五回で決着つかず、引き分け再試合に。
なんと、1日に延長十五回引き分け再試合が2試合続いてしまいましてその後の予定が二転三転!高野連は日程の再編成や予定表の張り替え作業に追われて大わらわ… という事態となったんです。運営側からしますとあんな事態はコリゴリ!
「タイブレーク制にすれば、延長に入ったとしても、まさか一五回まではいくまい!」
そんな思惑が働いているというワケですね。
そして… タイブレーク制導入のもうひとつの、そしてさらに大きい理由としては、やはり、「投手の肩の酷使」をふせぐためなのだそうです。
昔は、いたいけな高校球児が腕よ折れよとばかりに必死に投げる姿が観る者の胸を打ったもの。1941年(昭和16年)の春の甲子園では、滝川中学の別所昭(あきら/後に毅彦と改名)投手がクロスプレーで左腕を「骨折」。それでも左腕を白い布で吊りまして延長12回まで力投も惜敗。翌日の新聞には、「泣くな別所 センバツの花」という見出しが躍り、語り草の伝説となりました。今なら骨折で出場続行なんて絶対に許されませんが…
1958年(昭和33年)の夏の甲子園では、板東英二(徳島商)と村椿輝雄(魚津)の両エースが一歩も譲らず、延長18回を終えても0-0、大会史上初の引き分けに。坂東さんは翌日の再試合も完投勝利をおさめたのですが、負けて涙した悲運のエース、村椿の姿を見て、実況アナウンサーはこんなジンとくる句を詠みました。
「村椿 花一輪 いま散った」
こういうのが、日本人の琴線に触れるわけですね。
そんなわけで「観るほう」としては力投に継ぐ力投、まだ投げるのか! という悲壮感に胸を熱くさせるわけですが「投げるほう」としてはタイヘンです。
たとえば、現実的に、こんな数字があります。
【夏の甲子園での球数】
1998年「怪物」松坂大輔(横浜高校):767球/6試合
2006年「ハンカチ王子」斎藤佑樹(早稲田実業):948球/7試合
2006年「北海道の鉄腕」田中将大(駒大苫小牧):658球/6試合
三人とも皆、国民的スターになりましたが… この三人にはある共通点があります。それは… 三人ともプロ入りしたあと例外なく肘、肩を故障してしまった…という点です。
現在のスポーツ医学では、高校時代の肩や肘の酷使は確実にあとで響いてくる、とされています。タイブレーク制を導入すると「名勝負がなくなってしまう」などという否定的な声もありますが、彼らの怪我を考慮すると、やはりタイブレーク制導入は時代の要請なのではないか?…そんな気もするわけですね。
■夜間練習や上下関係を見直す動きが活発化!
甲子園を目指す高校球児たるものナイター施設で夜中まで猛練習するのが当たり前。1年生はタマ拾いに専念、声を出さないとケツバット… という「高校野球ならではの光景」。こういう光景もいまではすっかり見られなくなりつつあります。
今年1月、文部科学省は、「休養日を設けていない運動部が一定程度ある」として、全国の教育委員会に対し、部活動で休養日を設けるように求める通知書を出しました。この通知書の効力たるや絶大でして… いまでは、甲子園の常連校でさえも、
「練習は夕方で終わり」
「完全休養日を定期的に設ける」
「先輩は先輩風をふかさない」
という習慣が当たり前になりつつあるというんです。
■女子部員、女子マネージャーが活躍する!?
女子生徒を巡る光景も大きく代わりつつあります。去年夏の甲子園大会。大分県代表「大分高校」の女子マネージャーがユニフォーム姿でチームの練習を手伝った結果、大会関係者に制止されるという一幕がありました。
当時の大会規定では、危険防止のため「グラウンドに立つのは男子のみ」とされていました。ですからこの措置も致し方なかったのですが、これが全国的な議論に発展。「あまりに前時代的じゃないか」「危険性を云々するなら男子も一緒じゃないか」という声が続出!
結果、今年のセンバツから「ヘルメットを着用すること」「外野の人工芝部分に限る」などという制限付きではありますが、「女子部員の甲子園練習参加」が認められることになったんです!でも、いまだに女子部員が「選手」として試合に出ることはできません…
ある意味、「岩盤規制」というやつでしょうか?
■今後、大きく変わると言われているルールとは!?
ごく近い将来、甲子園大会に導入されるのはほぼ確実と言われている「新ルール」があります。それは… ズバリ、「敬遠フォアボールの申告制」です。メジャーリーグではすでに今年から敬遠制が取り入れられておりまして、守備側のチームがバッターとの勝負を避ける場合、監督が審判に「敬遠だ」と伝えればそれで済む!
現在、メジャーリーグでは試合の時短を「喫緊の課題」としているそうです。
例の「コリジョン・ルール」もそうですが、これまで日本の野球は常にメジャーリーグのルール変更をお手本としてきました。プロ野球も、早ければ来シーズンから敬遠フォアボールの申告制を導入すると言われています。となれば、高校野球もこのルール改正に倣うことになるのは必定… というわけです。
ただし、敬遠フォアボールが暴投となり思わぬドラマを生む可能性はなくなります…
いろいろと劇的に変わりつつある高校野球のルール、グラウンドの光景…
アナタは、どう思いますか?
7月19日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より