リオオリンピックが終わってもう1年。
(※2016年8月5日から8月21日まで17日間開催)
そこで今日は「リオを始めたとした過去のオリンピックの会場が今、どうなっているのか?」を調べて、3年後に迫る東京2020オリンピック・パラリンピックの行方を占っていこうと思います。
国際オリンピック委員会は、五輪の“レガシー”=“遺産”を残すことを憲章に定めていますから、後世に受け継がれる会場という遺産であるべきなのですが・・・果たしてどのような結果となったのか?
まずは、リオデジャネイロオリンピックの会場は・・・まだたったの1年しか経っていないというのに、大変な荒れっぷりとなっていました。
1950年と2014年のサッカーワールドカップの決勝戦が行われたサッカーファンの聖地であり、リオオリンピック開会式と閉会式の舞台となったあの、マラカナン・スタジアム。
オリンピック閉会半年で、緑の芝生は虫の被害に遭って茶色く枯れ、窓は割れ、扉は打ち壊され、7万8,000の座席の1割も盗まれた、という惨状が、今年初め、世界に向けたニュースとして配信されました。
その理由は・・・スタジアムの管理をめぐって、オリンピック開催中に電気代や会場の運営費として1億1,400万円かかりましたが、支払いを巡って輪組織委員会とリオデジャネイロ州、スタジアム運営管理の民間企業のマラカナン社の3者が対立、未払いのまま。
荒れ果てたスタジアムが世界に配信されたことで、これはまずいと4月にやっと修理が行われましたが、運営や管理の負債は62億円。現在も誰が管理を行うか白紙のままとなっています。
リオの惨状はスタジアムだけではありません。
期間中、何度もテレビで映っていた五輪公園。現在、巨額の資金を投じて整備された五輪公園には人の気配はなし。歩道はところどころ陥没して穴が開いています。
水泳会場では・・・屋外の練習用プールは泥と雨水、昆虫の死骸が混ざって茶色い水がたまっている。屋内にある、試合が行われたプールも水は空っぽ。全く使われておらず、朽ち果てるのを待つのみ。
22億8,000万円をかけて作られたゴルフ場も閉鎖されて、カピバラとワニのすみかとなっています。オリンピックの後は、地元の利用者を見込んでいたはずが、リオ市民でゴルフを行う人はあまりいなかったようです。
ならば、3大会前の北京オリンピックならどうか?
中国はお金持ちになっていますから、さぞかしうまくやってくれているでしょう。まず、北京オリンピックのメインスタジアムだった「鳥の巣」。ブラジルのように朽ち果ててはいませんでした。
というのは・・・建築費337億円で、この費用を30年かかって払わなければならない。さらに、9万1,000席ある鳥の巣の昨年の年間維持費は11億円。施設を用いて収入を得なければ借金が返せないわけで、観光客から1,000円取って中を見学させていますが、それだけでは到底まかなえない。
馬術、少年野球、スノーボードなどの大会を数回開催、あとはライブ会場となっていますが、頻繁に利用されているとは程遠い状況だということです。というわけで、施設は荒れてはいないけれども、採算の点では疑問符がともります。
「鳥の巣」がまだうまくいっている方で、北京でも朽ち果てている会場があちこちに。「ビーチバレー会場」「カヤック・カヌースラローム会場」などは、あれだけ国民がいても、競技人口が少ないのか、廃墟となっています。
また、星野監督、田淵幸一、山本浩二の首脳陣をもってしても、アメリカに負けて4位に終わり、頭を下げて謝っても国民が「許すまじ」と怒った北京オリンピックの野球会場に関しては・・・
かつてのグラウンドは草ボーボー、そこに野球場があったことすらわからず、野犬が住み着いている、という有様。
もしも、「レガシー廃墟オリンピック」なるものがあったとしたら、ダントツの優勝となるのが、2004年アテネオリンピック。
100メートル平泳ぎで初めて金メダルを獲得して「超気持ちいい」と北島康介が絶叫したあのプールは、水をたたえるどころか、カラカラに乾いて、全く使われていません。
国旗掲揚広場、野球会場、カヌー会場と、殆どの場所が廃墟に。オリンピック発祥の地が泣いています。
さて、ここ最近のオリンピックで、跡地利用に成功して、レガシー維持に最も成功しているのが、前々回、2012年のロンドンオリンピック。
ロンドンでも最も貧しい地域に設けられたメイン会場のオリンピック・パークは、425億円かけて改修をすすめて、サイクリングやジョギングが出来る専用道路が整備されて、市民の憩いの場となっています。
また、オリンピックスタジアムは15年に、ラグビーワールドカップの競技場として使われたことでも、記憶に新しいところ。そのあとは、サッカープレミアリーグのウエストハムが本拠地として移転。また、今年、世界陸上が開催される予定と、フル回転です。
ロンドンの場合、隣接していた選手村もマンションとして再活用が成功。3,000戸のうち、95%に購入されたり、賃貸アパートして利用されています。それだけでは足りないと、さらに空き地に新しいマンションが建設されるなど、開発が続いているのです。
1964年は、東海道新幹線や首都高速道路の整備、体育の日の制定などがなされたことが、レガシーとなった東京オリンピック。3年後の東京大会のレガシーは何が残るのか?
リオ、北京、アテネの先輩オリンピックのレガシー失敗の轍を踏まないよう、しっかりとお願いしたいところです。
7月25日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より