南北首脳会談が来月開催~北朝鮮の言う“非核化”の意味するところ
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3月30日 FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!②
同じ非核化でも“北朝鮮”と“朝鮮半島”で大きく違う
7:10~やじうまニュースネットワーク:コメンテーター宮家邦彦(外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
昨日南北閣僚級会談が開催~南北首脳会談を来月27日に行うことで合意
昨日南北の閣僚級会談が板門店の北朝鮮側施設で開かれまして、文在寅大統領と金正恩朝鮮労働党委員長による南北首脳会談を4月27日に板門店の韓国側施設で開くことで合意しました。
また昨日の閣僚級会談では金正恩委員長の中国訪問については特段の議論は無かったということです。
文在寅政権としては今回の南北首脳会談について「朝鮮半島の非核化への重要なスタート地点だ」と強調しているのですが、金正恩朝鮮労働党委員長は朝鮮半島の非核化については「段階的措置が必要だ」という主張を鮮明にしています。文在寅大統領の側近は「米朝対話に導いたことで韓国ができる役割はほとんど終わった。あとは米朝首脳会談で議論されることだ」と明言をしています。
そのアメリカですが、トランプ大統領本人は米朝首脳会談の提案受け入れを即決したのですが、政権の中では未だに北朝鮮の真意を測りかねています。ただアメリカのサンダース大統領報道官は28日の記者会見で米朝首脳会談について「世界的に重要なことだ。できるだけ早く行いたい」と述べ、準備を急ぐ考えを強調しています。
日本政府は米朝首脳会談の開催も見込み、北朝鮮の非核化実現に向け日米韓3ヶ国の連携を強める方針です。一方で日本政府は日朝首脳会談への意欲を北朝鮮側に複数のルートで伝えているということですが、ある政府筋は「これも米朝首脳会談の展開次第だ」と話しています。
こうした中「拉致被害者家族会」と支援組織の「救う会」が昨夜緊急集会を開きまして「全ての拉致被害者の一括帰国を求めなければならないとトランプ大統領を説得して欲しい」という決議を採択しております。家族会の飯塚繁雄代表です。
飯塚代表)このチャンスをものにできなかったら、これはもう大変なことになるわけです。いかに帰国させるか、これを直にトランプ大統領に強く言って、北朝鮮に向けてそういった言及をはっきりする。
安倍総理大臣は今日午前に拉致被害者家族らと総理官邸で面会し、4月中旬のトランプ大統領との日米首脳会談に臨むことになります。
朝鮮半島問題は“入り口と出口論”~非核化へ向けた考えの米朝での違い
高嶋)さあいよいよ動き出したと言えば動き出したのかもしれませんが。でも昨日のこの南北の板門店での会議でも核廃棄については全く触れられていない。
宮家)“核廃棄”という言葉は使わないで“非核化”という言葉を使う。しかし“非核化”にもいくつかあって、“朝鮮半島の非核化”なのか“北朝鮮の非核化”なのかで全然違うのですよね。
高嶋)それで今まで何度も時間稼ぎをやられて煮え湯を飲まされて、ふと気が付いたら北朝鮮の核だミサイルだというのが数段進化していて。「何をやっていたんだ」ということで。それで「今度こそは」みたいなことを印象としては思うのですが、宮家さんはどのように分析していますか?
宮家)「三度目の正直」という言葉と「二度あることは三度ある」という言葉があるのだけど、私はどちらかというと「二度あることは三度ある」と思っているのですよ。だってこれ正恩さんはお父さんとおじいちゃんの遺訓でやっているのでしょう。遺訓でやっているということは、今までと変わらないということですよね。ということは二度あることは三度ある可能性の方が高いのではないかと。
もしこれが本当に三度目の正直なのであれば、もう少し態度が変わるはずですよね。しかし私が見ている限り新しい発言もしくは新しい内容のことは一言も無いし、中国はどうかと言うと中国も“朝鮮半島の非核化”としか言っていない。韓国も同じようにしか言っていない。これでどこに突破口があるのかなと気になりますよね。高嶋)いろいろなシナリオが考えられますが、例えば北朝鮮の金正恩委員長とアメリカのトランプ大統領の会談、これはあると思いますか?
宮家)まあ五分五分でしょうね。無くても驚かない。
高嶋)どんな条件ですか?
宮家)問題はその条件・内容ですよね。
高嶋)トランプ大統領は“不動産屋さん”とよく言われて、いわゆる政治的なネゴシエイターではなくてディールだと。
宮家)でも交渉は上手いと思っているのですよね。
高嶋)そうですね。「お前はこれをやってくれるからうちはこうしよう」みたいなことで。そうするとアメリカ側が何の相談も無しに、要するに大統領の個人の見解で会って何かを決めてしまう、そういう恐れを指摘する人もいますよね。
宮家)朝鮮半島の問題はニューヨークの不動産業とはやはり違うのですよね。要するに入り口と出口論なのですよね。アメリカは入り口の段階でもう北朝鮮は非核化しなさい、つまり核廃棄を始めなさいと言っているわけです。
それに対して朝鮮半島の非核化というのは簡単に言えば、北朝鮮から見れば「そもそもアメリカが朝鮮戦争の後に核兵器を持ち込んだんじゃないか。それで俺たちは作って、未だに核の傘があるじゃないか、米軍は駐留しているじゃないか、これも出て行きなさい。これをもし本当にやるのだったら、段階的だけども最後は考えても良いよ」と言っているだけの話ですから、これは完全に出口論。本来ガチンコでやったら5分くらいで終わってしまう。それで良いのですかという話ですよね。高嶋)どういう条件になったって北朝鮮は今の核とかによって国を動かしてきたわけですからね。それがあるからこそ経済的に逼迫しても、最後の最後はこれで脅せば彼らは金も物資も出してくれるぞと。それで生き残っていこうという。それで体制の保存というのはそれを認めてしまうということでしょう?
宮家)そうですね。だから体制を保存して自主的に本当に核を止めてくれれば良いのだけど、止めないで体制を保存というのは無しでしょうと。
アメリカは米朝対話の準備ができていない
高嶋)さっきの話と繋げますが、トランプさんはああいう調子の方で、北朝鮮の金正恩さんは腹の底ではそういう風に思い続けていて。それで国益では中国は中国の思惑があってみたいな。これで上手くいけば過去地球上でそんな例は無いですよね。
宮家)普通に考えたらこの非核化の為の準備をする、それから当然シナリオを考える、もしくは戦略を考えて交渉をし、煮詰まったところでようやく最後に首脳会談なのですよ。そこの最後の部分は首脳で決めてもらいましょうと。
ところが何も決まっていない、何の準備もできていないのに最初に首脳会談をやって「何を話すの?」と。じゃあ準備は誰がやるのかと。だって国務長官がいないじゃないですか。しかも今度国家安全保障担当の補佐官になったボルドンさんも良いけれども、この人は「北朝鮮をやっちまえ」という人ですからね。こんな人が一体何の話をするのですかと。僕は今やっとホワイトハウスの中で準備が始まったと思いますが、これは新国務長官の議会承認に数週間掛かるから。高嶋)つまりアメリカ側の体制が動くはずが無いと。
宮家)どうやって動かすのかなと思って。お手並み拝見ですよ。
高嶋)それから歴史的に言っても、例えばカダフィ大佐とかすごく考えてしまうのですが「核を離す」と言った途端にろくなことが起きなくて、結局殺されて。だからそういういろいろなケースを北朝鮮はすごく勉強しているのですよね。
宮家)そうですね。まあリビアの場合、本当は核を放棄したことと彼が倒れたことは全く別のことですよ。あとは“アラブの春”の話だから。だけど北朝鮮から見れば「やっぱり核兵器を持っていなきゃやられちゃうんだよね」と思うに決まっているので、そういう意味では結果は同じだと思います。
高嶋)ということは、これはあまり期待できないという話ですか?
宮家)期待したいですよ。でも果たして三度目の正直になるかどうかはまだまだ読むには十分な情報が無いと思います。
高嶋)あの北朝鮮の平壌に籠りきりだった委員長が中国へ行って、それでそういう話を持ち掛けるというか。何か後ろ盾にしたいとかいろいろな分析がありますが。
宮家)そりゃあアメリカが何をするか分からない、しかも変わった人たちが皆入って来てこれは大変だと。「これは北朝鮮だけだととても対応できないかもしれない。やっぱり中国なんかとは話したくないけれども、しょうがないか……」みたいな感じだと私は思いますよ。それで中国からしたら「この時を待っていたんです」と。
高嶋)それで必ず出て来るのが、安倍さんが外されたのではないかという意見ですが、それはどう思われますか?
宮家)まあそれは内政がいろいろ大変だから、いろいろあるかもしれないけれども、今我々がやらなければいけないのはやはり基本に忠実に動じずに、そして圧力を掛けた結果がこれなのですから、この方針を変える必要は無いと思います。
高嶋)最後に日本に金だけ出させると言う人もいますが、それはどうですか?
宮家)金を払うときはちゃんと見返りが無ければ駄目ですよ。
高嶋ひでたけのあさラジ!
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