6/1　FM93AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ！④

キーワードは「鉄鋼・アルミ関税」
7：27～教えて! ニュースキーワード：コメンテーター宮家邦彦（外交評論家）

アメリカが鉄鋼・アルミに高い関税～EU・カナダが報復関税

アメリカのトランプ政権は鉄鋼製品などへの異例の輸入制限措置で一時的に対象から外していたEU（ヨーロッパ連合）やカナダ、メキシコに対して今日から新たに高い関税を課すことを決めた。EUは報復関税を課す構えを示すなど、貿易摩擦の広がりが懸念されている。

飯田）EUだけでなくカナダも報復関税を準備しているとのことです。安全保障を名目にということですが、同盟国に対しても容赦ないですよね。

宮家）安全保障なわけがないでしょうが。ふざけたことをするなという話ですよね。昔はWTOでもっと建設的な議論がありました。アメリカとEUとカナダと日本の4極というのがあって、そこでいろいろと議論をした結果方向性を決めて他の国々を説得して、アメリカが中心になって自由貿易を守ろうという話だったわけですよ。それがどこからかおかしくなったわけだけれど、1つは2000年以降中国を入れたことです。中国を入れたことによってコンセンサス、いわゆる全会一致じゃないと物事が決まらないようになっちゃって、中国は反対するから何も決まらなくなった。だから個別のFTAとかそういう議論になっていったわけです。その延長上にある話なのだけど、WTOが機能しなくなってアメリカが国内政治のために、安全保障もへったくれもないわけですよ。無茶苦茶なことをやるようになったら、これまで積み上げてきたものがいかに簡単に崩れるかという典型ですよね。
報復と言ったって同盟国同士ですから大きな喧嘩になるわけじゃないけれど、トランプさんは同盟国と中国みたいな競争国を区別しなかったらこれは持ちませんよ。こういうやり方でカナダがやらざるを得なくなる。WTOは紛争解決手続きがありますから、そこを使っていくという意味ではWTOの活用という点ではいいのかもしれないけれども、全体の方向としては貿易が縮小していって、結局はアメリカの労働者も政府も利益はないとわからせないといかんですよね。非常に困ったことだとは思うけれども、トランプ大統領にとって短期的な選挙の結果、彼らの支持者に対するアピールの方が遥かに重要だということでしょう。

日本に対して自動車への関税を検討

飯田）日本に対しての影響というのは、日本は既に鉄鋼・アルミに関しては関税がかかっていて、先週あたりには自動車についても検討を始めたということがありました。

宮家）これはアルミも大変だったというのはありますが、自動車はその比じゃないですよね。25％なんてそんなことできるわけがないでしょう。それでアメリカの自動車産業が救われるかと言ったら救われないですよ。全体としては自動車の値段が上がり、アメリカの中間層以下の人たちが苦労するだけで何の利益にもならないし、それでアメリカの自動車産業が復活するかといったら復活するわけがないですよ。
全体的に貿易が縮小するわけで、アメリカにとっては不利益だと。こんな簡単なことが何でわからないのかなと思いますが、日本は正論を言うべきです。こんなことをやったらあなたが困るんだよ、ということを言い続けるしかないでしょうね。

飯田）党首討論のなかでは総理もトランプさんには何度も言っているんだと、しかも日本の企業はアメリカに工場を建ててこれも相当やっている。

宮家）アメリカで造っていない日本から出しているものが問題になるのだろうとは思いますが、トランプさんにとってはそんなことはどうでもいい。それで政治的にアピールできればいい、自分にスポットライトが当たることだけを考えている困った人ですよね。

飯田）本来的にはアメリカに輸出をして、貿易赤字を出させている最たる要因は中国ですよね。それをターゲットにしてくれればね。

宮家）それだけじゃなかなか難しいわけです。なかなかアピールできない。全世界でアメリカの産業を守るためにトランプさんが一生懸命頑張っているんだ、そしてありとあらゆる手段を使って我々を守ってくれるんだと。そういう時代ではないですよ。

飯田）表向きそういうのを形作っておきながら、同盟国にはちょっとバックドアをつけてくれるといいのですけどね。

宮家）それはアメリカの製造業が衰退してきたことの裏返しなので、根はもっともっと深いのです。

飯田浩司のOK! Cozy up！
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