米中貿易摩擦から見えてくる知的財産権の重要さ
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5/21 FM93 AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ!③
米中貿易摩擦回避で一致~中国がアメリカ製品輸入を大幅増加
7:17~お早う! ニュースネットワーク その2:コメンテーター須田慎一郎(ジャーナリスト)
米中貿易摩擦の争点は知的財産権
先週末行われたアメリカと中国の貿易協議は、双方が互いに追加関税措置を停止し、貿易戦争を回避することで一致した。中国がアメリカからのエネルギーや農産品輸入を拡大する方針を表明し、歩み寄りを見せたが、ハイテク分野における対立は続き、米中が貿易戦争へ向かうリスクは払拭しきれていない。
飯田)会談は週末金・土に行われたのですが、中身の発表は日曜日にズレました。これを異例の話とする報道も1部でありますね。
須田)最終的な決着にはほど遠い状況にあると考えていいと思います。過去を振り返ると、米朝貿易摩擦は、往々にして、「航空機をこれだけ買います! 年間にこれだけ貿易赤字圧縮しますよ!」と、物やサービスを買うことでどうにか回避する方向で中国は誘導してきた。そのたびに、アメリカは一定の譲歩をしていたのです。そういう経緯が、過去からずっとある。
ただ、今回の貿易摩擦は金額や量がベースの貿易摩擦ではなく、「知的財産権」なのです。中国はアメリカが開発した技術やノウハウに関してタダ乗りし、それを盗み取り、自分たちで生産して貿易をしている。その知的財産権に関して、どうやってセーフティネットを張っていくのか。それが1つの大きなポイントですから。そして、その問題が発生したらどうやって紛争解決していくのかも、大きな問題ですから。
それに関して、これまでのところ「何も決まっていない」が実情です。回避は、まだ現状ではできないと思います。ハイテク分野の制裁緩和を望む中国
飯田)習近平さんがトランプさんに直接申し出た、ZTE(中興通訊)という、スマホなどの開発会社。ここに対して「制裁緩和してくれ」と。まさに知的財産権、ハイテクの問題ですよね。これに関して何も出てきませんでしたね。
須田)逆に言えば、中国としてもそこは死活問題ですから。かつて中国は労働集約型の製品輸出で利益を上げてきましたが、インターネット関連のハイテク分野にシフトしていく方向になってきた。それに対してアメリカと対立していると、中国にとっても将来非常に厳しい状態になる。なので、ようやく具体的な交渉ポイントが出てきたと思います。
飯田)今後長引くというか、解決せずにずっと並行になる感じはありますか?
須田)最終的決着はできないと思います。中国がアメリカの主張を全部受け入れるのも、中国にとってがんじがらめになってしまいますから。
交渉しつつ、摩擦が起きて、何かの形で緩和する。でもゼロに近づかない……加熱したらすぐに冷ますような、そんな形になっていくと思います。今後の日本の貿易問題
飯田)日本企業としては、追加関税とかで大きく網を掛けて、とばっちりを食う、みたいなことになると困りますよね。
須田)日本は例のTPP11があって。そこのポイントが知的財産権問題なのです。そこに、アメリカをどう誘導することができるか。これからの貿易問題というのは、関税率や、関税や量によるセーフティネットではなく、ノウハウというか技術力に大きくフォーカスされていくのではないかな。そこの問題を注目すべきだと思います。
ともすると、日本の場合は、「日米」となると、「米の自由化はどうなる」とか「牛肉はどうなる」とか、古いタイプの貿易問題に注目が集まりがちですが、そんなものは、もうどうでもいい。これからは知的財産に大きな重きが置かれることになると思います。飯田)そういう意味では、いまTPPが審議していますが、日本としてはこれは決めて、アメリカを引っ張り込む、と。
須田)そういう戦略で望むべきだと思います。それが、中国に対してのメッセージにもなる。
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