ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（6月21日放送）に元航空自衛官・軍事評論家の潮匡人氏が出演。変化しつつある米朝関係とそれによって危惧される日本の立場について解説した。

北朝鮮～週内にもアメリカ兵の遺骨を引き渡しか

複数のアメリカメディアは、北朝鮮が、朝鮮戦争で死亡したアメリカ兵の遺骨引き渡しを早ければ週内にも開始すると報じた。先週12日の米朝首脳会談での合意に基づき、北朝鮮側が実施する初の具体的措置となる可能性があり、迅速な行動でアメリカとの信頼をはかる狙いがあると考えられる。

飯田）「迅速な行動」とありますが、まったくストライクゾーンでない、核とは何も関係ないところから動き出したあたりを、どう思いますか？

潮）だからこそ、北朝鮮にとっても対応しやすいところがあったと思いますし、そもそも首脳会談に先立ち、生きているアメリカ人3名が帰国していることもあったので、今回アメリカとしては一定の実を取っている。それは、いわゆるアメリカファーストの範囲内で、アメリカとしては、首脳会談の意義付けをある程度国内へ説明できる。そうした成果が、まさに遺骨引き渡しも含め、目に見える形で残っていくということだと思います。
ですが、他方、日本はどうなのか考えた場合、そもそも我が国は先の大戦における御遺骨の収集をまだ続けている国でもあるわけですし、言うまでもなく拉致問題を抱えています。我が国において、「この動きは米朝間の問題」と切り離されて進行していくということは、是非とも避けなければいけないと思うし、まさに日米が一体となって、北朝鮮に迫るべきです。アメリカにとって米兵の遺骨というのがとても大事な課題というのはこの件に限らず、国を挙げて、彼らがそうしてこれまで取り組んできた。だからこそ、兵士は「突っ込め」と言われても従える担保の1つになっているわけです。
とはいえ、遺骨よりも、生きている人間を帰国させることの方がより重要で緊急の課題であることは言うまでもないわけですので、実際にアメリカ兵3名が会談に先立ち帰国したことなどをバネに、日本としては拉致問題解決につなげていくべきだと思います。

米軍の韓国撤退から考えられること

飯田）今回の米朝首脳会談は、その後の共同声明だけ読めば、アメリカが譲ってしまい、北朝鮮は何も譲らずにもらうものだけ……「朝鮮半島の安全を保障する」という文言が入ったり。それが体制保証に直結するかは議論があると思いますが、北朝鮮の有利な形になってしまったと思います。どうですか？

潮）私もそう思います。共同声明自体の問題については、今週の夕刊フジで連載させていただいていて、初回（月曜日）でも触れさせていただきました。
同時に、中身を説明されたトランプ大統領が会見で仰ったことや、今日のニュースにもなっている、その後の米韓合同軍事演習を巡る動きとか、そうしたことも、より深刻な課題が、いま生じていると思います。

飯田）もしかするとですが、在韓米軍の撤退まで、韓国の安全保障担当補佐官などはたびたび言及しています。これ、パワーバランスの線が38度線から下がってくると、日本が矢面に立たされます。ここまで考えないといけませんか？

潮）もはや避け難い情勢になってきたのでは、と思います。単に米朝の動きを受けて、というだけではなく、アメリカ軍全体として、以前からグローバルな形での再編が進んでいたし、大統領がトランプ氏になり、同盟国より自国重視する形で急速に動いていますので、これ以上のコストの負担は耐えられないということで、その方向に今後流れていくことは、十分あり得ると思います。

軍事の空白は日本が埋めるしかない

飯田）その環境に変わったとなれば、それに対し日本は新たな備えが必要になるかもしれない？

潮）もちろん、それによってより朝鮮半島紛争の火種が大きくなっていく側面があるわけだし、そうならずとも、ハッキリ言えば38度線が防衛ラインだったものが、南に下がっていくことにもなっていくわけなので、当然、それをどうやって誰が穴埋めするのか、ということになってくると思います。

飯田）今日の読売新聞で、「九州の築城基地の滑走路を延ばす」と小さな記事に載っていましたが、「もしかして、韓国の烏山空軍基地が下がってくるのかも」とか、いろいろ考えてしまいますよね。

潮）実際、私はそこで勤務していたことがありますが、今後考えざるを得ないのは、どこかで誰かが軍事的な空白を埋めていかないといけないので、それは日本だと思います。

飯田浩司のOK! Cozy up！
FM93AM1242ニッポン放送　月-金　6:00-8:00