ブルーライトはカンヌの街の灯りだった『ブルー・ライト・ヨコハマ』

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第13回 『ブルー・ライト・ヨコハマ』

最近、ますます加熱するアナログ盤ブーム。そしてシングル盤が「ドーナツ盤」でリリースされていた時代=昭和の楽曲に注目する平成世代も増えています。
子供の頃から歌謡曲にどっぷり浸かって育ち、部屋がドーナツ盤で溢れている構成作家・チャッピー加藤(昭和42年生)と、昭和の歌謡曲にインスパイアされた活動で注目のアーティスト・相澤瞬(昭和62年生)が、ターンテーブルでドーナツ盤を聴きながら、昭和の歌謡曲の妖しい魅力について語り合います。

ブルーライトはカンヌの街の灯りだった『ブルー・ライト・ヨコハマ』

チャ:「蛍ぅーーー!! 蛍ぅーーー!! ♪ああーあああああー」……いやー、あの空知川の別れのシーン、何度観てもグッとくるわー。こんにちは、チャッピー加藤です。

相澤:あ、そのメロディーは『北の国から』ですね! こんにちは、相澤瞬です。

チャ:そそ、田中邦衛さん演じる、黒板五郎の別れた奥さん・令子が、富良野で暮らす蛍と純に逢いに行く回があってね。令子が東京へ帰るとき、蛍だけ駅へ見送りに来なかったんだけど……

相澤:ええ。

チャ:実は蛍は、空知川の河原にいて、お母さんが乗ってる列車を走って追いかけるのよ。で、令子はそれに気付いて、窓を開けて叫ぶの。「蛍ぅーーー!」。でも蛍は「お母さーん!」って叫ばないんだな。電車が見えなくなるまで、黙って追いかけて、立ちすくむ。
……そこで、テーマ曲カットイン!「♪ああーあああああー」

相澤:あー、情景が目に浮かびますねー。(…しみじみ)

チャ:そのあと、岩城滉一さん演じる草太兄ちゃんが、蛍の肩をポンポン! と優しく叩くのよ。もう37年前か……。

相澤:その令子役を演じてたのが、今回取り上げるいしだあゆみさんなんですね?

チャ:そう。そしてあゆみさんは女優業だけじゃなく、歌手としても素晴らしかった。実は、オレが歌謡曲に目覚めた原点はあゆみさんなのよ。

相澤:へー! 僕の中でも、あゆみさんは重要な歌手ですね。

チャ:じゃきょうも、呑みながらタップリどっぷり語ろう! 今回も引き続き、高円寺「彦六」からお送りしまーす。瞬くん、いくよー!

チャ・相澤:「♪ああーあああああー ああーあああああー」

ブルーライトはカンヌの街の灯りだった『ブルー・ライト・ヨコハマ』


■おばあちゃんの愛唱歌

チャ:さて、今回取り上げる「わが歌謡曲の原点」はこちら!
1968年12月25日発売、いしだあゆみ・コロムビア移籍第3弾、『ブルー・ライト・ヨコハマ』。作詞・作曲は、橋本淳&筒美京平コンビ。

ブルーライトはカンヌの街の灯りだった『ブルー・ライト・ヨコハマ』

チャ:あゆみさんにとっても、京平さんにとっても初のオリコン1位曲で、ミリオン突破。いろんな意味で歌謡曲のパラダイムを変えた曲だよね。改めて聴いてみよう。(♪ターンテーブルに乗せ、演奏)

相澤:いやー、何度聴いても名曲ですね!

チャ:ホント、何万回も聴いてるけど、まったく飽きない。これってなんなんだろう?

相澤:これ、チャッピーさんはいくつのときに聴いたんですか?

チャ:この曲が流行ったのは、オレが2歳のときなんだけど、当時TVであゆみさんが歌ってる姿をはっきり覚えてるからね。つまりリアルタイムですよ。

相澤:えー! スゴい! よく覚えてますねー!

チャ:これ、けっこう長くヒットしたからなー。だって、オリコン9週連続1位だよ。

相澤:マジですか? そんなに長くチャート1位をキープするって、今じゃ考えられないですね!

チャ:たぶん、当時はそこかしこで流れてたんだと思う。自分が「生まれて初めて聴いた歌謡曲」だし、まさにこれが原点なんだけど、瞬くんはこの曲、いつ聴いたの?

相澤:実は、僕のおばあちゃんがカラオケでよく歌ってたんです。
僕はこの曲、あゆみさんより先に、おばあちゃんの歌で聴いたんですよ(笑)。

チャ:へー! おばあちゃんのカラオケ持ち歌かぁ。それがリアルタイムって、オレは長老か?(笑)

相澤:とにかく、おばあちゃんの歌がすごく印象に残ってて、自分のステージでもカヴァーするようになったんです。実は僕、ボランティアで老人ホームさん訪問もやってるんですけど、この曲を弾き語りすると、すごく喜んでいただけて。

チャ:そうか、発売がちょうど50年前だから、70・80代の人にとっては、20・30代の頃のヒット曲になるわけだ。そりゃ喜ぶわなー。

相澤:でも、聴けば聴くけど、心に沁みこんできますよね、この曲。好きな人と横浜の街を歩いてる、ただそのひとときを描いてるだけなのに。

チャ:オレね、橋本淳・筒美京平コンビが大好きなんだけど、ベースはこの曲にあって、すごく伝染力のある曲だと思う。でなきゃ、2歳児が覚えてないよ(笑)。

相澤:僕も、歌謡曲が好きになったのって、別に誰からの影響も受けてないんですけど、よく考えたら、ルーツはおばあちゃんが歌ったこの歌なんですよね。

チャ:じゃあ、まったく一緒だ(笑)。幼い頃の刷り込みだよね。この曲ってどうして、こんなに心にグッとくるんだろう?

相澤:音のことで言うと、僕、この頃の音圧が変わる曲って結構好きなんですよね。

チャ:音圧?……具体的に言うと、どういうこと?

相澤:おそらく当時って、音圧の微妙な調整は、実際に手動でフェーダーを上げ下げしてたと思うんです。で、この曲って典型なんですけど、歌が始まると、演奏の音圧が下がるんですよ。

チャ:どれどれ……(針戻して)あ! ホントだねー。はっきり演奏が下がってる。

相澤:これ、今だったら事故レベルです(笑)。たぶん当時は、技術的な問題で、歌と演奏、両方を活かすことができなかったんじゃないですかね。

チャ:オレは、この曲はこういうもんだと思って聴いてきたから、そこはスルーしてたけど、確かにそうだなー。でもわかりやすいよね。「ハイ、歌入ったら音下げて!」って(笑)。

相澤:でもそういうアナログな感じが、僕はたまらなく好きなんです(笑)。あと、歌い出しのメロディが、間奏のメロディと微妙に違うんですよね。あゆみさんが違うふうに歌っちゃったのか、アレンジでそうしたのかはわからないんですけど。

チャ:あ、それね、本来は間奏のほうのメロディだったのよ。でも歌入れのときに、あゆみさんが違う旋律で歌っちゃって、それがOKテイクになっちゃったんだって。

相澤:そうなんですか。でもあゆみさんのほうを採用して正解ですね。そっちのほうが、自然に耳に入って来ますもん。

チャ:それで言うと、歌い回しも独特だよね。「♪あっるいって、むぉーン」とか、あゆみさんみたいな歌い方する人って、他にいないじゃん?

相澤:そう! 昭和の歌手の方って、厳しいトレーニングの成果もあってか、歌い方がわりと共通していると思うんですけど、こんなふうに歌う人ってあゆみさんしかいないし、声も独特ですよね。そこが最高に格好いいです!

チャ:だから耳に残って離れないし、飽きないんだよなー。これ、橋本淳さんが自ら、あゆみさんに歌唱指導したそうなんだけど、小唄ってあるでしょ? あんな感じで「こぶしを効かせて、情緒を醸し出して!」って言ったんだって。

相澤:あー、なるほど! どことなく和風な感じがするのは、そのせいかも。

チャ:でもさ、イントロは「♪パパパパー パパパパー」って、いきなりトランペットが鳴るわ、チェンバロ使ってるわ、すごく洋風じゃない。その不思議なミックス感が、横浜という街の和洋折衷な雰囲気とつながって、それも耳に残る理由じゃないかなー。


■「ブルーライト」はカンヌの灯り

ブルーライトはカンヌの街の灯りだった『ブルー・ライト・ヨコハマ』

チャ:で、詞についてだけど、さっき瞬くんが言ったように、この歌って、デートのひとときを歌ってるだけなんだよね。好きな人と一緒に歩いて、しあわせヨーンっていう(笑)。でも幼心にもグッとくる……これってなんなんだろう?

相澤:これ、二人が歩いてるのは、横浜のどのへんなんですかね? ブルーライトだから、港を見てるのかなって思うんですけど……。

チャ:前に橋本淳さんが仰ってたのは、港が見える丘公園から、横浜の夜景を見たときに、フッと着想が浮かんだんだって。

相澤:あ、やっぱりそうなんですか。

チャ:でも当時は、横浜の夜景は真っ暗で寂しかったらしいのよ。せいぜい川崎の工業地帯に、ポツンと灯りがともってる程度で歌にならないから、イメージを足したのね。ある外国の街の。

相澤:え、それ、どこですか?

チャ:これがね……フランスのカンヌなのよ。当時、橋本さんがヨーロッパへ行ったときに、飛行機の窓越しに見たカンヌの夜景がすごくキレイだっんだって。

相澤:へー! じゃ、この「ブルーライト」って、ベースになってるのは、カンヌの街の灯りなんだ!

チャ:当時って、まだおいそれと海外行ける時代じゃなかったと思うんだけど、旅ってのは行っとくもんだねー(笑)。

相澤:あー、でも、あゆみさんってフランスっぽい気もする。イメージ、合ってますよね!

チャ:実際、カトリーヌ・ドヌーヴに憧れてたそうだし、あゆみさん自身の中にもヨーロッパ風な感じがあったから、あの独特の声と歌い回しとも絶妙にマッチして、なぜか耳に残る名曲が誕生したんじゃないかな。

相澤:なるほどー。奇跡のマッチングですね!

チャ:スゴいのは、橋本さんがこの曲の歌詞を思い付いたのは、なんとレコーディング前日なんだよね。京平さんに電話で一番の歌詞を伝えて、それから京平さん、徹夜で曲書いて、アレンジも済ませて、譜面も書いたのよ。

相澤:そんな突貫作業だったんですか!

チャ:で、京平さんが仮眠してる間に、橋本さんは二番の歌詞を書いたんだって(笑)。でもそうやって綱渡りで作った曲が、こういう大ヒット曲になったりするから、歌謡曲って面白いよなー。

相澤:いやー、自分がなぜ歌謡曲が好きなのか、改めて分かったような気がします!

チャ:で、あゆみさんというと、ぜひもう一曲取り上げたい曲があるんだけど、もう1回いいかな? 瞬くんの大好きなアーティストに影響を与えた曲でもあるんだけど……

相澤:なんだろう? 楽しみにしてます!


……次回も、いしだあゆみの曲を聴きながら、二人が熱く語ります。お楽しみに!

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今回お邪魔したお店:「大陸バー 彦六」
東京都杉並区高円寺北2-22-11-2F
JR中央線・総武線高円寺駅北口より徒歩4分
営業時間:金・土 18:00~26:00 日・月・水・木 18:00~24:00
火曜定休 地図・ライブ予定などはホームページにて
http://www.ukuleleafternoon.com/hiko6/

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▼相澤瞬 おすすめライブ情報はこちら!▼

7月22日(日)吉祥寺シルバーエレファント
◆プラグラムハッチ レコ発&改名10周年記念企画
「TOKYOトレンディナイト」
open 17:30 / start 18:00
前売券 ¥2,500(1D別)/当日券 ¥2,800(1D別)
■前売券のメール予約はプラグラムハッチ official HPにて
http://plugramhatchi.com
■シルバーエレファント店頭でも販売しております。
【出演】
プラグラムハッチ、姫乃たま、弱虫倶楽部、かなまる、オワリズム弁慶、テジナ

8月12日(日)吉祥寺シルバーエレファント(ニュー昭和万博)
◆ニュー昭和万博 レコ発ディナーショウ
「新人類の進歩と調和 2018」……詳細近日発表!!

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【チャッピー加藤/Chappy Kato】
ブルーライトはカンヌの街の灯りだった『ブルー・ライト・ヨコハマ』
昭和42年(1967)生まれ。名古屋市出身。歌謡曲をこよなく愛する構成作家。好きな曲を発売当時のドーナツ盤で聴こうとコツコツ買い集めているうちに、いつの間にか部屋が中古レコード店状態に。みんなにも聴いてもらおうと、本業のかたわら、ターンテーブル片手に出張。歌謡DJ活動にも勤しむ。
好きなものは、ドラゴンズ、バカ映画、プリン、つけ麺、キジトラ猫。

【相澤瞬/Shun Aizawa】
ブルーライトはカンヌの街の灯りだった『ブルー・ライト・ヨコハマ』
昭和62年(1987)生まれ。千葉県出身。懐かしさと新しさを兼ね備えた中毒性のある楽曲を、類い稀なる唄声で届けるシンガーソングライター。どこまでもポップなソロ活動、ニューウェーヴな歌謡曲を奏でる「プラグラムハッチ」、 昭和歌謡曲のカバーバンド「ニュー昭和万博」など幅広く活動。
好きなものは、昭和歌謡、特撮、温泉、うどん、ポメラニアン。

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