映画『失楽園』で必ず水の入ったコップが置いてある理由
公開: 更新:
黒木瞳がパーソナリティーを務める「あさナビ」に写真家の安珠が出演。影響を受けた岡本太郎の作品から、二人に共通する「宇宙観」について語った。
黒木)今週のゲストは、写真家の安珠さんです。キヤノンで写真展をやるとか?
安珠)『ビューティフル トゥモロウ~少年少女の世界~』というタイトルです。
黒木)この写真は、いくつの子ですか?
安珠)10歳の子ですね。この写真は岡本太郎さんへのオマージュです。昔、岡本太郎さんが大きな赤いリボンを付けて、顔を伏して、痛々しい腕を伏せている、『痛ましき腕』という大きな、検索するとすぐ出てくるような、有名な作品。私はそれをパリで見ました。そのときに「スゴイ!」と衝撃を受けました。リボンというのが、女の子はみんな好きですよね。リボンはよく見ると∞(無限)の形をしていて、「女の子の特権で無限を持っている」と気づいたときから、リボンをテーマに何か撮りたいと思っていました。今回、その新作のなかで、リボンを付けた女の子で、岡本太郎さんの絵のリスペクトをして作った作品があります。
黒木)ただリボンを撮りたいのではなく、リボンには「無限」の意味があって、女性の特権でもある。オマージュもここに含まれている。何だか、宇宙ですね。世界観というより、宇宙観です。
安珠)そう言ってくれて嬉しいです。今回の『ビューティフル トゥモロウ』は、ずっと作品を作っている間、NASAの宇宙の映像とか、ずっと見ていました。私たちはもちろん地球に足を付けて生きているけれど、頭上では宇宙が展開しているのですよ。少年少女の時代は、想像力が果てしないから、無限に未来がある。宇宙的想像力みたいな。そういうのが、スゴく大事だと思っています。
黒木)地球にいるけれど、新しい写真展の写真を撮るときに、宇宙を見ていた。何だろう、失礼だけど、気持ち悪いくらいに似ていますね(笑)。
私、ずっと子供の頃は、マッチ箱のなかに宇宙が入っていると思っていました。
安珠)一緒! 私はお水をコップに入れて、そのなかを覗いたときに「ここに宇宙がある!」と思ってた。だから、いまでも子供の頃みたいに、お水をコップや茶碗に入れて覗いたときに「宇宙がある!」って思ってしまう。すべてに宇宙があると思っていたの。そのマッチ箱の感覚と同じ!
黒木)それで思い出しましたけど、『失楽園』のときの森田芳光監督が、必ず水を置いていたの、覚えていらっしゃいますか?
安珠)そうだった!
黒木)キッチンにもコップに水が置いてあって。その「水を置く」というのが、あのときのこだわりだった。理由は聞かなかったけれど、いまお話を聞いたら、もしかしたら監督のなかに、宇宙みたいな、水に対しての思いがあったのかな、と。
安珠)あとは、潤いじゃないかな。すごくセクシーな作品だったから、そこにウエットというか、しっとりした感覚を。人は植物のようなものだから、やはり水というものをいただき、まるで魚のように泳ぐとか。何かいろいろな意味があったのかもしれません。聞いてみたかったですね。
安珠/写真家
東京生まれ。学生のときにデザイナー・ジバンシーが来日し、専属モデルとしてスカウトされ渡仏。パリを拠点に世界各国の「ヴォーグ」や「エル」、パリコレに出演し、国際的なモデルとして活躍。
帰国後、1990年に写真家に転身し『サーカスの少年』を出版。その後、『少女の行方』『星をめぐる少年』『小さな太陽』など、文章を織り交ぜた物語のある独自の写真世界を表現。
また写真家として活躍する中、広告、雑誌連載、文筆、講演、審査やTV出演、ビジュアルプランから映像監督まで幅広く活躍。
2014年、東北を中心に「こどもたちの夢」をテーマにした写真集『Dream Linking☆つなぐ夢、千年忘れない』を出版。全国とパリで写真展を開催。
2017年発表の京都ライカギャラリーで、平安京に焦点を当てた『Invisible Kyoto-目に見えない平安京-』と並行して、中国の世界自然遺産である張家界の作品『仙人の千年、蜻蛉の一時』も長期に渡り撮影。オリジナルの写真世界を作り出す写真家として活躍している。
7月11日からは、安珠写真展『ビューティフル トゥモロウ~少年少女の世界』を開催。
『ビューティフル トゥモロウ~少年少女の世界』
2018年7月11日~8月28日まで。入場無料。
場所:キャノンギャラリーS(東京都港区)
これまで取り組んできた「少年少女の写真世界」をテーマにした作品展。
デビュー以来、写真展でオリジナル曲を提供してきた細野晴臣による楽曲が流れ、安珠さんの世界観をより一層演出。
ENEOSプレゼンツ あさナビ
FM93AM1242 ニッポン放送 月-金 6:43-6:49
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳