ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月16日放送)に元航空自衛官で評論家の潮匡人が出演。北朝鮮が旧日本軍の慰安所を発見し、対価を要求してきた件について、日朝の外交的側面から解説した。
北朝鮮が慰安所の存在を確認と報道し被害対価1,000倍要求~安倍政権へ揺さぶりか
北朝鮮の日本軍性奴隷強制連行被害者問題対策委員会が、日本統治時代の北部(現・羅先市)に旧日本軍の慰安所が存在していたことを伝えた。委員会がまとめた報告書では、「被害への対価を100倍、1,000倍にして受け取る」と多額の補償を要求している。
飯田)昨日韓国では、光復節(終戦の日)。文在寅大統領はソウル市内での記念式典演説のなかで協力のメッセージを呼びかけました。「歴史問題にはあまり言及していない。配慮した」というようなことも伝えられています。
さて、朝鮮半島問題。まずは北朝鮮のお話ですね。
潮)まさに韓国の、今年の演説のスタンスと比較すると、南北の、これまでの日本に対するスタンスが逆転しているような印象を受けますね。「100倍、1,000倍」と言われると、なおさらそんな感じがします。10倍とかならともかく、1,000倍は逆に実感がなくなってしまう感じもあります。
北朝鮮としても、本当に具体的金額として想定して要求しているわけではない。「100倍、1,000倍」という表現を見ても、いわゆるレトリックの延長線上だと思います。問題は、「なぜこの時期にこういうことを言い始めたか?」です。おそらく来月にもあり得る日朝首脳会談を睨んだ1つのカードとして、彼らが牽制しているのだと思います。
拉致問題をめぐる日朝首脳会談の駆け引き材料にしようとしている
潮)我々としては、当然日朝首脳会談となれば、拉致問題にいちばん大きな関心を持たざるを得ない。あえて北朝鮮の立場に立つと、それが見えているからこそ、「慰安所の存在を確認した!」などと言い、「100倍、1,000倍だ!」と言い。そして、例えば「本来1,000倍のところを100倍、百歩譲って10倍に下げる!」だの、いろいろ言う一方で、「(拉致について)そんなものは無かった。ちゃんと調査して」と駆け引きの材料にしようとしているのではないかな。そう強く疑います。我が国としては、動ぜずに粛々と解決に向けて交渉することに尽きると思います。
来月に申し上げているのは、例えばロシアの東方経済フォーラムの場において、昨年も安倍総理が出席した際に、開催国ロシアのプーチン大統領が金正恩委員長に参加を呼びかけたこともあるし、あるいは来月には国連総会も予定されている。そのなかで、文字通り「廊下ですれ違う」ことも起こり得るわけです。その場で何も挨拶も接触もない方が、逆に不自然です。外務省としては、その辺を水面下で、何か交渉をしているのだろうな、と。そして、そのなかで北朝鮮が今回、こうしたことを言ってきているのだな、と。そういう風に見るべきだと思います。
総裁選と前後するため双方に影響を与えかねない
飯田)ある意味、ある程度煮詰まっているからこそ、ボールを投げてきている?
潮)そうです。我々にしてみれば、拉致問題の解決にとっては、いい意味付けをこの流れに見出すこともできます。彼らが日本を意識していることは間違いないわけですから。何か、彼らなりの動きが内部であるからこそ、こういう報道になってきているのだろうと思いますが、9月には自民党総裁選も、もちろん予定されています。日付的にどちらが先かは分かりませんが、今回の報道も含め、より重要である拉致問題にどこまで進展があるのか。あるいは、万が一にでも正反対の動きということになってくると、総裁選にも影響を与えかねないということだと思いますから、政府としてはあまりそうした政治的配慮などから、判断を先送りなどせずに、粛々と歩むべき道を歩んでいただきたいですね。
飯田)9月20日に総裁選が行われる見通しです。ウラジオで、東方経済フォーラムで会うとなると、9月11日くらいでしょうか?
潮)その辺が接触しそうな日付ですね。
飯田)ニアミスデー、みたいな。総裁選前ですね。一方で、国連総会は月末近く。総裁選後になる。思惑で調整せずに、ね。拉致被害者ご家族のみなさんもご高齢ですし。
潮)それこそ1日でも早い解決を望んでいるわけですし、当然我が国としてそうあるべきです。まさに、「安倍政権に対する揺さぶりか?」という報道でしたが、揺さぶられることなく、動ぜず望んでいただきたいですね。
手段は似ているが、今回の出来事は南北連携ではないと考えられる
飯田)8月14日が慰安婦の日と韓国は設定していて。そこでも文在寅大統領が演説をしました。本当は出席しないはずなのを、急遽来て、さらに演説やコメントをしました。「外交問題にはしたくない」みたいなことを言いましたが、「謝罪と賠償を~」みたいなことも言っていました。一連の流れを見ると、「北朝鮮はヒントを貰ってしまったのでは」と思います。
潮)もちろんそういう意味付けもあると思います。ですが、韓国としてもまさかそれが南北連携の元であるとは考えたくもないと思いますし、そこまで良くも悪くも戦略的に考えてのことではないと思います。そうであれば、きちんと我が国の条約を守り、「最終的かつ不可逆な解決」をした問題ですから蒸し返さず、韓国としても粛々と進めていただきたいと思います。しかし、なかなかその期待は裏切られるだろうな、という公算を持ちつつ、動ぜずに。「不可逆的に解決した」というスタンスを我が国が忘れたら話になりませんから。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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