日米共同声明~6項目目にある中国への強いメッセージ
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月27日放送)国際政治学者の高橋和夫が出演。ニューヨークで行われた日米首脳会談の共同声明について解説した。
関税含む日米交渉の開始で合意~交渉中は関税引き上げせず
ニューヨークで行われた日米首脳会談。安倍総理とトランプ大統領はTAG(日米物品貿易協定)締結に向けて、農産品などの関税を含む2国間交渉を開始することで合意した。交渉継続中は、アメリカが検討する自動車などの関税引き上げ措置は発動しないことで一致した。
飯田)茂木経済再生担当大臣が、記者団に対してこの話をしたようです。首脳会談が終わりまして、記者会見が間もなく行われる予定となっています。
日米での2国間交渉は、日本はあまり乗り気ではなかったのですが、やることになりましたね。
日本は中間選挙まで交渉を引き延ばして動かず
高橋)ここはトランプさんに譲っても仕方なかったかな、という感じです。トランプさんも、「日本は話に乗ってきたのだから」と言える。ただ内容的にはまだ何も約束していません。とりあえず「自動車に対する関税は交渉中はかけない」というところでの合意なので、名を捨てて実をとったのが日本側の立場だと思います。
日本の作戦としては、「とりあえず中間選挙まで引き延ばして、何も動かさない」です。何かしているフリをして、トランプさんに花を持たせるということだと思います。
だから、双方とるものはとって、外交らしい玉虫色の雰囲気が出てきたな、という気がします。
飯田)日本としては、引き延ばしがいちばんの国益ですか?
高橋)そうですね。トランプさんに協力する“フリ”をするというのが重要です。トランプさんが勝ったようにしてあげるのが、サービスですよね。
飯田)これを出すと、トランプさんとしては、選挙のネタになるわけですね。
高橋)そうです。国連でのスピーチでも、「私が大統領になって、400万人の雇用が増えた」という、選挙キャンペーンのような、場違いな感じのスピーチをしていましたが、トランプさんにとっては非常に合理的に、「みんなが見ているのだから、やる」なのです。
飯田)「いちばん注目される場所だからアピールをする」ですね。
日米共同声明の「第3国」は中国に向けての牽制球
飯田)手元に日米共同声明のドラフト(草稿)があります。日米についての話をずっとつらつらと書いているなかで、6項目目だけ、「第3国の非市場志向型の政策や慣行から、両国の企業と労働者をよりよく守るための協力を強化する」とあります。これは、当然ですが中国を念頭に置いているのですか?
高橋)中国と書いてもいいけれど、外交文書だから書けないのです。でも、読めば中国人も含めてみんな分かることですよね。安倍政権の言い方は常に「日本とアメリカとヨーロッパは自由やルールを守っている」です。言外に「中国は違います」と常に言い続けてきました。それがちゃんと(草稿に)入っている気がします。「日米欧3極の協力を」と強く仰っていますよね。
飯田)トランプさんは「保護主義」と言われていて、批判もいろいろありますが、「根本的価値観としては日米で違いはない」というのを確認した形ですか?
高橋)そうですね。特に、トランプさんが中国に対して頭に来ているのは、サイバー的に入ってきてアメリカの企業機密などを盗むことが大規模に行われていて、それをオバマ政権はしっかり止めてこなかったことです。それが裏にあるのです。だから、こういう文書で、「日本も入れたい、アメリカも入れたい。だから、中国に一言メッセージを牽制球として投げておこう」という雰囲気がありありと出ています。それが6項目目ですね。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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